指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『昭和天皇・ご進講メモ』

2023年08月10日 | 政治

宮内庁御用掛だった松田道一の、ご進講メモが発見されたことが放送された。

その一部は、先日も放送されたが、今回は全体の分析とセミ・ドラマ化だった。

ドラマとしてみれば、一番に面白かったのは、1945年6月14日、松田が天皇に、連合軍のドイツ占領支配の方針を説明した箇所で、天皇は嘔吐してしまう。

それだけ、日本人は、ドイツの強さを信じていたのだと思う。

確かにドイツの科学や産業の技術が進んでいたことは事実である。

以前に日本映画学会で聞いたが、戦前の日本のニュース映画の音声の中では、ドイツのニュース映画の爆撃や銃声の音声をコピーして、日本のニュース映画に使用したものがあるというのだ。

実際に、ニュース映画会社で録音を担当された方へのインタビューで明らかにされた。

ドイツの音声の方が鋭くて迫力があったからというのだ。

         

米国への真珠湾攻撃の決定も、ドイツがフランスを破り、ソ連もすぐに負け、イギリスのみ孤立している状況で、松田に言わせれば、「いずれイギリスは、カナダに逃げて国の威信を失うだろう」と思っていた。

恐ろしく認識が浅くて、間違っていたのだ。

あと1か月、真珠湾攻撃が遅れていたら、独ソ戦のドイツの敗北が決定的となり、米国への宣戦布告もなかっただろうと思えるのだ。

それに1945年春の、米国との和平交渉を求めての、ソ連の仲介による交渉案、まったくひどいというしかない。

すでに、1945年2月の「ヤルタ会談の密約」で、ドイツ降伏後3か月で、ソ連の日本への宣戦布告が決まっていたのに、信じがたいことである。

一部、中立国の日本大使館から、密約の情報があったのだが、外務省も陸軍も、無視し、ソ連仲介に行ったのだが、ソ連が相手にするはずもなかった。

結局、ドイツが欧州全土で勝利するという他力本願だったことが、対米戦争の間違いの元だったと言えるだろう。

 


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