猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

福島第1原発汚染水の海洋放出に反対なのは漁業者だけでない

2023-06-11 22:16:09 | 原発を考える

けさの朝日新聞に『処理水の海洋放出 漁業者の不信なお 経産相に「反対」伝える』の短い記事が載った。

「福島第1原発の処理水の海洋放出計画をめぐり、西村康稔は6月10日、宮城、福島、茨城の各県を訪れ、業関係者と意見交換をして理解を求めた。」「漁業関係者の反対は根強い。」

見出しの「漁業者の不審なお」は、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」の海洋放出に反対しているのは、宮城県、福島県、茨城県の漁業関係者だけのように読めるが、そうではない。

NHKの今年2月10日の世論調査では、「処理水を国の基準を下回る濃度に薄めたうえで海に放出する方針」について、全国の人は、27%が「賛成」、24%が「反対」、41%が「どちらともいえない」と答えた。賛否はほぼ同数で、判断ができないと答えた人がもっとも多かった。この結果は、「政府が放出方針を決定した直後の2年前に聞いたときとほぼ同じ」であるとNHKの記者は言う。

漁業関係者でなくても、多くの人は海洋放出計画の政府の説明に納得できないものを感じているのだ。政府の同調圧力に屈する必要はない。

中国政府、韓国政府は日本の海洋放出に反対を表明している。ヨーロッパの主要国の政府も、広島G7 で日本政府の海洋放出計画を支持できないとした。

海洋は人類みんなの財産である。そこに、「海水で薄めた」といえ、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」を放出していいはずはない。海水で薄めたといえど、放出するトリチウムなどの放射性物質の総量は変わらない。

日本政府は「1年間に放出する処理水の量は22兆ベクレルを下回る水準」にする計画だというが、この基準では、現在の福島第1原発の敷地のタンクの処理水を放出するだけで30年以上かかる。しかも、毎日新たに汚染水が発生しつづけているので、いつまで放出が続くのか不透明である。

他の手段があるのに、大量の放射性物質を公共の海洋に放出することは避けるべきである。

さらに、日本政府の排水規制値の40分の1に海水で薄めるというが、国連飲料水規制値の7分の1、EUの飲料水規制値の8分の3である。日本の排水規制が緩いことを利用して、「とっても薄い」かのように印象操作をしている。日本の規制値は、人間がその汚染水の外にたっても健康障害がないという基準である。国際規制値やEU規制値にしても、体内からすぐ排泄されると想定しての基準値である。汚染水に一生どっぷりと浸って暮らす海洋生物のことを考えての話ではない。

日本政府もこの批判を知っていて、ヒラメとアワビを「原発周辺の海水を入れた水槽と、海水で1リットルあたり1500ベクレル未満まで薄めた処理水の水槽にわけ、比較している」という。しかし、なぜ「原発周辺の海水」と「薄めた処理水」とを比較するのか。また、処理水で育てヒラメを「通常の海水に戻すとトリチウムは検出できない値まで下がった」と報告するが、市場に出す前に「毒抜き」が必要だとのことで、海洋生物に影響がないとの証拠ではない。

海洋放出以外に地層注入処分の手段がある。

使用済み燃料や放射性物質で汚染された処分には、日本政府は、地層埋設処分を提案している。経産省は300メートルの深さに、大きな穴をほって放射性廃棄物を積み上げることを計画している。これらの処分対象は固形物であり、重機で運ばなければいけない。

いっぽう、汚染水は液体である。圧力をかけて、汚染水を蓄えられる地層に押し込むことになる。したがって、1000メートルの深さでもかまわない。経産省はどうして、地層注入処分を選ばなかったのか、私には、とても不思議である。

<関連ブログ>



最新の画像もっと見る

コメントを投稿