猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

私のいるNPOの課題:通過型か居場所か、教育か居場所か

2020-10-11 23:22:39 | 愛すべき子どもたち
 
私のいるNPOは、「発達障害児」などの社会への適応に問題を抱えている子どもたちの「教育」と「居場所」を提供している。このNPOは、子どもを抱えて途方にくれている親たちと、元小学校教師とその教え子によって始められたボランティア活動である。従って、ここでの基本が教育である。
 
が、かつて教育に携わっていなかった私は「教育」よりも「居場所」という要素を重視している。「居場所」というと、東畑開人の『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)を私は思い出す。
 
「居場所」にも、一時的避難所なのかそれともずっと居られるところなのか、の違いがある。学校は「通過型」で卒業できなければ敗残者である。しかし、子どもが抱えている心的もろさや知的よわさが克服されるとは限らない。本当はずっと居られるところが必要である。
 
現在、公的支援制度としては「放課後デイサービス」があるが、高校卒業までが対象である。
 
私は、いま、それなりの事情で、NPOを通過できないでいる5人の子どもたちを相手にしている。4人の男の子と1人の女の子である。高校または高等部を卒業しており、「放課後デイサービス」を利用できない。彼らは、NPOに月額3000円の会費と、15分1100円の教育費を納めることになる。自助である。私は、これに心痛めており、契約より長く滞在することを黙認している。
 
NPOに長くいる子は、社会にその子を受け入れる場所がないからである。
知的に優秀な子には、自立して社会に羽ばたいてもらいたいと思っている。親が自営業であれば、親の保護下で十分働ける。残念ながら、自営業の親は少ない。
 
昨年、二十歳になった子は、中2で「うつ」になり、薬を飲んでいる。いまも精神科に通院している。薬でほとんどのことが制御できているが、朝、キチンと起きられない。朝起きられないと、通学も通勤も難しくなる。だいぶ心が強くなり、起きられる日も増えたが、まだ、安定しない。
 
不定期にくる女の子は、母親との関係に緊張を抱えている。私からみれば、母が娘の障害を必要以上に強く評価し、その子の能力を否定していることに問題がある。特別支援学校の高等部に入れ、卒業後に特例子会社に務め、来る日も来る日も単調な仕事をしている。
 
その子は手先が不器用だが、知的分析力や文章能力にたけ、パソコンもでき、イラストやデザインワークができる。会社では何も評価されず、逆らうようなそぶりがあれば罰せられる。母は娘より会社の指導員謙所長を信用している。したがって、心的不安定を引き起こす地雷をいつも抱えているのだ。彼女は家を出ることを考えている。うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。まだまだ、サポートが必要だろう。
 
特別支援学校の高等部を卒業後して特例子会社に務めてうまくいったケースもある。特例子会社に務めてからも、1年間、週に1回、仕事を終えてから私のもとに通った。私は職場や趣味の話を聞いたり、作文を書いてもらったり、将棋をふたりで指したりした。私から見ると、仕事の内容は雑用で、彼の能力を評価していない。最低賃金をわずかにうわまわる給料しかもらえていない。いまは自分の給料がもらえることで満足しているが、将来、結婚して子供をもとうと思ったとき、身動きがとれない自分をみいだすのではと心配する。
 
これはどこの特例子会社でも抱えている問題だ。親は、特例子会社だと最低賃金制度を守ってくれ、失業保険や健康保険や年金などの制度も備わっていると喜ぶのだが、いつまでも最低賃金では普通の人生を送れない。特例子会社だと、障害者ばかりの部署になり、能力にあった仕事に移れないという問題を秘めている。
 
いっぽう、ずっと居られるので良いと思っているケースもある。作業所に入った子は、まわりが知的障害者ばかりで、おとなしくぼっとしている子は、ごろごろしているだけになる。作業所は、働く場所でなく居場所だが、教育との観点はなくなる。発語がむずかしい子は、養護学校にいるときよりも、言葉や行動の点で退行する可能性がある。私は、言葉を使うことを忘れないように、言葉のキャッチボールをしている。また、聞き取ったことを書いて親に渡し、親子のコミュニケーションのきっかけになるようにしている。
 
35歳の子は、ひとりでNPOに来られるから軽い知的障害だが、意志疎通に問題を抱える。語彙数も先の子よりも多いが、自分からは話せない。言葉のキャッチボールで会話のある世界を作ってやる必要がある。
 
私のいるNPOは、一対一の対面型なので、言葉のキャッチボールができる。居場所は利用者の避難所であるとともに、個々の利用者のニーズに答えられる場所であるべきだろう。


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