猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

私の愛すべき子がアインシュタインの天才に歓喜する

2022-02-06 22:26:37 | 愛すべき子どもたち

私の愛すべき子に、低気圧が近づくと急に体の調子が悪くなって、NPOの放デイ教室にやってこれない男の子がいた。彼の家は教室から歩いて、たった5分のところの市立集合住宅であるのに。そのことだけを除いて、母子家庭ということを感じさせなかった。いつも、自分は自分の道を歩むのだという、人に頼ろうとしない子であった。

自意識が強いのか、いまだにスタッフにうまく挨拶ができなく、スタッフによっては、変な子と思っているようだ。

母親に工業高校に行けば、好きなことだけを勉強すれば良いのだから、と言われて公立の工業高校電気科に進学した。受かるかどうか私は心配したが受かった。入学して、ロボット部と柔道部にはいった。私は体がもつかどうかを心配した。

その子は低気圧が近づいても休まないようになった。学校でトップをとりたいと思うようになった。しかし、何か疲れているようにも見えた。

工業高校は色々なことを教える。色々な資格を取らせる。たとえば関数電卓を買わせてその操作のテストまで受験させる。工学上の色々な公式の計算をその関数電卓でできるかを試験するのだ。彼は気まじめにそれらに取り込む。

私はますます彼の健康を心配した。

昨年の秋、彼の病気の原因が見つかった。コロナ禍でなかなか執刀医が見つからなかった。12月にはいって、腹腔手術の日取りが決まり、無事、手術が終わった。1週間ほどで退院でき、暮れには、彼とのリモート学習が始まった。

病み上がりの彼が、微積分を使って力学を理解したいというので、慌てて教材を作った。彼は微分を習い始めたばかりで、彼の使っている教科書も見ていないので、どこまで話していいのかが、わからない。時間をかけて教材を作り始めると、大学1年のレベルの力学を理解してもらうのに、ずいぶん微積分の知識がいるのに気づいた。そんなこともあって、私のリモート講義にわかったという顔をしてもらえず、気まずい思いをした。

先週は、微積分と力学の講義を続けるのをやめて、アインシュタインの話をした。アインシュタインは一般相対論で数式をいじり回したが、もともとの彼は、数学に頼らず直観的に自然を理解することで、論文も簡明だ、と話しをした。特許庁に務めて、そこで最新の論文を読み、一人で研究した。子どものときは語学や歴史が嫌いで成績が良くなく、彼のお手伝いさんは「知恵遅れ」と思っていたと話した。

私の愛すべき彼は、突然、「アインシュタインは天才だ」と叫び始めて、ぱっと顔が明るくなった。「アインシュタインは8歳まで言葉が話せなかった」と言い出した。

ひさしぶりに顔が輝いた彼をみて、私は うれしかったが、せっかく作った教材『高校生のための微積分と力学』が反古(ほご)になったのは、なんとなく惜しく思う。



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