さあさあ面白い記事が出て参りましたよ。某巨大掲示板風に言えば、糞青の激昂は疑いなしの上質燃料が投下されたのです。対糞青用の燃料投下といえば、胡錦涛の広報紙、『中国青年報』しかないでしょう。
「行き過ぎた愛国主義や民族主義はよくない」
という2003年末の楊振亜・元駐日大使の談話掲載に始まり、昨年8月のアジアカップにおける中国サポーターの非礼な振る舞いには、
「政治とスポーツを一緒くたにするな」
「こんな『愛国』には誰も拍手しない」
との署名記事を掲載。いずれも糞青からタコ殴りにされたのは、内容がマトモだった証拠でしょう(笑)。
その『中国青年報』がまたやってくれました。ハッカー組織「中国紅客聯盟」(紅客)の解散に伴い、その「事蹟」を評価するような記事がいくつか出たのですが(当ブログ「サイバーテロ支援国家。」2005/02/20)、それに真っ向から斬撃を加えんとする勇ましい記事です。
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●紅客の「愛国の情」を私は理解しない
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/24/content_1036943.htm
簡潔にまとまったタイトルからして糞青に向けて中指を立てているかのようで、極めて戦闘的です(笑)。ええ、私の中で久しぶりに、じゃーんと銅鑼が鳴りました。その勢いのまま翻訳いきます。
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●紅客の「愛国の情」を私は理解しない(『中国青年報』2005/02/24)
ハッカーとその組織について、本来なら何も言うことはあるまい。その是非ははっきりしており、法規でも十分明確にされていることである。わが国の「コンピュータ情報ネットワークインターネット管理暫定規定」「コンピュータ情報システム安全保護条例」そして「全人代常務委員会のインターネット安全保護に関する決定」によれば、ハッカーのやっていることは、インターネットの安全を破壊する違法行為なのだ。
だがハッカー組織――中国紅客聯盟の解散にことよせて、ハッカーの功績を讃える者が出てきた。「紅客の愛国の情は受け入れられるべきだ」「(紅客の行為には)一般国民の心の中にある最も素朴で最も原始的な愛国主義の情が含まれている」「彼らの技術と精神は永遠に賞賛されるべきものだ」などと、高らかに謳い上げている(2月22日本紙)。ハッカーの行為に対してこのように賞賛し拍手を送るとは、全く呆れて物が言えない。
ハッカーが「愛国」を自称するのは、彼らが米国や日本、台湾のウェブサイトを攻撃したからだ。彼らはそれによって米軍による在ユーゴ中国大使館誤爆事件や南シナ海における接触事故(米偵察機と中国戦闘機の接触)、また李登輝の「二国論」などに対する中国人民の抗議の意を表現したとし、その行為に民間には「よくやった」との声があふれた。だが私はかねてから思うのだが、ハッカーは所詮はハッカーであり、いかに「愛国」の上着を羽織ろうと、ハッカーなのだ。法律も法律にすぎないが、「愛国」のために法を犯せばやはり違法であり、何の例外もない。もし国を愛するのなら、国の法律を遵守して然るべきではないか。
ハッカーとは、不法手段を用いてネットワーク世界の秩序を破壊する者を指している。「黒客」(ハッカーの中国語)と呼ばれる所以は、連中が闇に紛れてひそかに(秩序を)撹乱し、もとよりその行為を恥とも何とも思わないでいるからだ。ネットワークは20世紀の人類による偉大な発明である。それは世界を地球村へと変え、時空の隔たりは短縮され、人類の生活に革命的な変化をもたらし、生産力の発展を推進した。それゆえ、ネットワークの安全を維持し保護することは人類に共通したニーズであり、個々の責任感を有する者と国家が必ず守らなければならないルールなのだ。
現在、多くの人の考え方が誤った方角に向いてしまっている。高尚で偉大な事業でさえあれば、手段の善し悪しを問う必要はないと考えている(誰も口にはしないが)。ハッカーに対する態度がまさしくその好例であろう。だからこそメディアは無辜のイラク市民や外国人記者を殺害するテロリストに「反米武装勢力」という呼び名を与える。多くの人がパレスチナの「人間爆弾」に対し曖昧で同情的な見方をするのも、彼らの目的が「愛国」だから、手段などは構わないということだろう。私はどんな状況であろうと、高尚で正確な目的は正当かつ合法的な道を経て実現されなければならない、という考え方を揺るがせにはしない。
歩む道が正しいものでなければ、目標にたどり着けないばかりか、その道が地獄への掛け橋になってしまうかも知れない。その種のことは枚挙に暇がない。司法部門が容疑者に自白を強要するのは、早急に事件を解決し、法治を維持するため。コーチが非人道的な方法で選手を鍛えるのは、国に名誉をもたらすため。学生の負担を重くするのは、大学入試に合格させるため。農民の負担を増やしその金銭を剥ぎ取るのは、民を豊かにするプロジェクトを進めるため……どれもこれも体のいい旗印に守られつつ、数々の卑怯な振る舞いをやってのけるものだ。長年にわたりずっとこのザマなのだから、別に目新しいことでもないが。
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-02/24/content_1036943.htm
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これはまさしく燃料、それもとびきり上等な燃料です。……ただじっくり読み直してみると、どうも自称愛国者の反日教信者たる糞青だけに向けられたメッセージではなさそうです。最後の段落、その一気呵成の筆致が読む者を魅き込みます。それでいて最後にはポーンと突き放したような終わり方。嫌でも余韻が残ります。糞青の十字砲火を浴びた過去の説教くさい文章とは、明らかに一線を画したものです。
この文章が「胡錦涛の新聞」に出たということを考えなければなりません。当ブログ「サイバーテロ支援国家。」が取り上げた文章、「紅客」賛美ともとれる記事(下記)は、もともとこの『中国青年報』に掲載されたのが、「新華網」などあちこちに転載されたものです。
●国内最大規模を称するハッカー組織「中国紅客聯盟」が解散を宣言
http://news.xinhuanet.com/it/2005-02/18/content_2589594.htm
今回の文章によれば、2月22日付の『中国青年報』にはより明確な「紅客」賛美記事が出たことになります。それなのに一転してこの文章。しかもその鉾先はどうやらハッカーとその賛美者たちだけに向けられたものではない様子です。これをどう考えればいいのでしょう。
という訳で、素人の邪推と相成ります。
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『中国青年報』は胡錦涛の新聞です。全ての記事が胡錦涛の意を汲んでいるかどうかは別として、胡錦涛の意に沿わない記事はまず掲載されないと考えていいでしょう。「サイバーテロ支援国家。」のコメント欄でも触れましたが、たとえ胡錦涛の思惑とは逆のような、反対派に迎合するような記事が紙面を飾ったとしても、それは胡錦涛の意向によって掲載されたものなのです。
邪推の結論からいえば、このところ足元が揺らいでちょっとフラフラしていた胡錦涛が、ここにきて巻き返してきたのかな、というところです。
思えば中国はやられっ放しなのです(自業自得なのですが)。昨年末に李登輝氏の訪日があり、ODAも廃止の方向が打ち出され、4月にはダライ・ラマ14世も来日する。加えて一年のうち最もおめでたい旧正月の元日(2月9日)に、日本政府が尖閣諸島の灯台国有化を発表し、同じ日に国会は愛知万博期間中の台湾人ノービザ法案を可決。続いて「2+2」(日米安全保障協議委員会)が「共通戦略目標」に台湾海峡問題を盛り込む。……もうずっと一方的に、顔に泥を塗られっ放しなのです。
領土問題の「尖閣」に続いて台湾統一に直接絡んでくる「2+2」と来れば、胡錦涛外交への疑問の声が党内から出ても決して不思議ではないでしょう。それを政争の具にせんとする輩もいたでしょう。尖閣領有も台湾統一も、中共であれば誰も反対することのできない錦の御旗ですから。前回紹介したように、「尖閣」と「2+2」に関して中国国内メディアがあれやこれやと騒いだのも、あるいはそういう政争めいた、少なくとも不統一なままでいる党内の雰囲気を反映したものかも知れません。
とはいえ、たとえ政争めいた動きがあったとしても、江沢民とて院政すら敷けない甲斐性なしですから、他は推して知るべしです。長老グループは愚痴や嫌味は言ったかも知れませんが、趙紫陽問題のときのようなパワフルな動きには出ていない模様です。動けば気取られるものですが、内外の報道にその気配が全く出ていません。
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騒ぐだけ騒げば、疲れてしまうものです。前回書いた通りです。同時に、全人代(全国人民代表大会)及び政協(全国政治協商会議)、この「両会」と呼ばれる春恒例の大型政治イベントにおける「反分裂法」審議が目の前に迫っています。重要会議の開催を控え、北京市内ではすでに警備態勢が強化されているそうです。
そういう空気とタイミングを巧みに捉え、胡錦涛は「尖閣&2+2」から「反分裂法」へと焦点をすり替えることに成功したか、すり替えるべく動き始めたのではないか、と思うのです。その過程で党内の意思統一も取りあえず達成、あるいは達成されつつあるという印象です。200名以上の死者を出した炭坑事故も利用したでしょう。事故現場である遼寧省の副省長のクビが飛ばされましたね。党内の空気を肅然とさせる上では効果があったと思います。
「尖閣&2+2」にしても、胡錦涛を叩く一方で、党内には緊張が走ったでしょう。そこは「中共人」ですから、脊髄反射とそれに名を借りた権謀術数の時期が過ぎれば、「中共の危機」ということで団結する方向に向かうでしょう。そろそろそういう時期に入ったのではないか、流れが変わったのではないか。……あるいは胡錦涛が流れを変えるべく動き出したのではないか、ということを今回の文章は感じさせます。
糞青だけが相手でない様子の記事だけに、なおさらその印象が強いです。何たって一昨日(23日)に、「民間保釣聯合会」(尖閣奪回運動組織)のサイトが日本のハッカーに攻撃された云々、と真っ先に報じていたのが他ならぬ『中国青年報』なのです。この2日ばかりの間に、中共上層部で何らかの動きがあったのでしょう。そして、上述したような方向に党が取りあえずまとまりつつあるか、あるいは胡錦涛がそれを目指して動き始めているのではないか、と思うのです。
それが確かな流れとなっているのかどうか。その目安のひとつは、この記事が他の中国国内メディアでどう扱われるかということになるでしょう。
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【内緒】実は他にも密かに注目している記事が1本あるのですが、これはあと半日か1日ばかり寝かせておいて様子をみたいと思います。
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>【内緒】
楽しみです(笑)。
翻訳お疲れ様でした。御家人さんの訳をとても楽しみにしていたので、中共の続報、じっと待っておりました。
引き続きの「内緒」のお話、楽しみにしております。
そんなことしたらチベット・東トルキスタン・モンゴルを弾圧出来なくなるじゃないか。
>wowowさん
反日の賞味期限とは言い得て妙ですね。実はもう切れているのではないかと思うのです。あとは反日を賞味すればするほど、期限切れで変質した毒(もとは旨味)が体内に回っていくという……。
>1読者さん
【内緒】は期待外れでちょっとガッカリしているのです。でも見逃せない内容なのでいずれ取り上げます。
>Unknownさん
私も気になります。政策論争ならともかく、こんな腹の足しにもならないことに時日とパワーを費やしていて大丈夫なんでしょうか?
>ヨゴロウザさん
そうですか、百度の抗日は大人しくなったんですか。あれほど無防備な論壇はないのに、何と意気地のない(笑)。奴らにとっての愛国・抗日とは、自分の属する社会への問題意識を麻痺させる阿片でしょうね。もともとが反日体質なのに、加えて十年も阿片を吸ったらもうどうしようもありません。しかも阿片の供給者が自国の政府であるという馬鹿馬鹿しさ。偉大なる実験ではありますが(笑)。
>大丈夫?さん
そういえば満州族なんかは血脈として残ってはいても、本来使っていた言語は消滅してしまったんでしょうね……。
大和の民族は地球の上から消えてなくなる!ハッハッハ....
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