ここ数日、香港・台湾メディアは「台海問題」で大賑わいです。ええ、例の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米の「共通戦略目標」に台湾海峡問題が盛り込まれたという一件。賑わうに値する大ネタではあります。
ただ香港と台湾はそれぞれ伝統的なスタイルを反映して騒ぎ方が異なっています。香港は中国同様に反日基調、台湾は歓迎ムード中心、といったところでしょうか。
中国はまだ脊髄反射の段階で、例えば孔泉・外交部報道局長のコメントや日米に反発する新華社電などを国内各メディアが使い回しています。
使い回すといってもあくまでも脊髄反射の記事ですから、この問題についてどういう姿勢で臨むか、その点で党上層部の腰が定まったという印象はまだありません。このニュース、チナヲチの観点からはもうちょっと時間を置いて眺めてみたいところです。
という訳で、今回は時節に背を向けて一見悠長な、しかしやはり見逃すことのできない話題です。
――――
標題の「格差」とは貧富の差のことで、当ブログでも取り上げたことのある問題です(※1)。貧富の差といえば、まずは都市と農村との格差。一方で、都市の中でも収入に格差があり、それが基本的に拡大する傾向にあることは周知の通りです。
で、その「貧富の差」が最近は大学にも持ち込まれているという話題……すでに旧聞に属するネタですが、『中国青年報』が取り上げています。
●貧富の差が直撃、揺れる「象牙の塔」
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2004-09/06/content_943964.htm
これによると、
■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。
■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。
■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。
……とのこと。
――――
それ以前の問題として触れておかなければならないのは、学費の一部が個人負担となったことで、貧困家庭にとって大学入学はいよいよ狭き門となっていることです。
前にも書きましたが、秀才であっても経済的な理由で進学を諦めるケースが相当あるようです。ニュースとして記事になったものでいえば、進学させるために親が営利誘拐に走ったり、保険金を子供の学費に当てようと自殺を図ったり、村の俊才を何とか進学させようと村人たちがカンパ活動をやったり。
……ところが、幸いにして入学できたとしても、キャンパスでまたまた貧富の差に由来する壁が貧乏学生の前に立ちはだかるという訳です。
――――
■学生同士の付き合いは経済条件で決まる。
要するに貧乏学生は貧乏学生同士、金持ち学生は金持ち同士で友達付き合いをするということです。上記の記事によると貧乏学生の毎月の生活費は100-150元。これに対し金持ち学生は毎月1000元以上の生活費を親から与えられます。
携帯電話、PC、デジタルカメラといった金持ち学生の必須アイテムは、もちろん貧乏学生には全く無縁のものです。「可処分所得」がこれほど違えば、ライフスタイルに差が出ない方がむしろおかしいですね。女子大生ならば化粧品やファッションでも別世界ということになるでしょう。この壁を突き破って付き合ってみても、「購買力」の違いもさることながら、まず話が合わないのではないでしょうか。
――――
■貧乏学生はクラブ活動になかなか参加できない。
「クラブ活動」の原文は「学生組織」、最近の大学を知らないのでこの訳語が適切かどうか自信がありませんが、同好会やサークルのようなものかと思います。
貧乏学生がその種の活動に参加出来ないのもおカネの問題です。どんな内容の同好会ないしサークルであれ、付き合い上、お茶代ぐらいは必要になるでしょう。そういう最小限の必要経費すら捻出できないので、指をくわえて見ているしかないということになります。
記事によると、いわゆる貧乏学生は内陸地区及び農村、または都市の低所得層の出身だそうです。金持ち学生はといえば、政府や金融機関の官僚や私営企業主を親に持つ学生が多いということです。
――――
■貧乏学生は自分を卑下するなど心理的な影響が出ている。
同じ学生同士でこれほど差がついてしまうと、そうなるのも無理のないことでしょう。貧乏学生といっても実感としてのイメージが湧かないかも知れませんが、実例を挙げますと、
●交通費がないため旧正月に帰省できない大学生、7000人に
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-02/05/content_2549375.htm
このほか、貧乏なためアルバイトで水商売をするしかない女子大生、生活費捻出のためアルバイトでシシカバブ(羊肉の串焼き)の屋台を出して奮闘する学生、そして食費を浮かすために残飯漁りをする女子大生のニュースもありました。
一方で金持ち学生は自分のクレジットカードまで持っている優雅さで、むしろカード地獄が懸念されているくらいです。相部屋の学生寮を嫌って校外に部屋を借りて住んだり、そこで恋人と同棲したりというケースまであります。
この差は一体何なのでしょう?
――――
何だか学内で階級闘争が勃発しても不思議ではないように思います。
今回はちょっと雑になってしまい申し訳ありません。このテーマはもう少し資料を揃えて、本腰を入れて取り組むつもりです。
――――
【※1】貧富の差拡大を裏付け――浙江・北京レポート(2005/01/11)
広東省では中流意識が台頭(2005-01-12)
今年は失業問題が熱い!?(上)(2005-01-13)
今年は失業問題が熱い!?(下)(2005-01-14)
| Trackback ( 0 )
|
シンガポールの早報に社会科学院の易宪容氏の中国应该走出掠夺经济(レポート)が掲載されておりました。大紀元に概略が載っていたので、ソースに行ってみたら3部構成の略奪経済についての報告でした。
http://www.zaobao.com/yl/yl506_210205.html
格差についての勉強の一助になりました。
“旺旺”广告渉嫌迷信 工商部門緊急“叫停”
http://society.people.com.cn/GB/1062/3192809.html
旺旺って子供用の煎餅みたいなお菓子ですな。
馬鹿馬鹿しい。
強暴24名女生班主任被公訴
http://legal.people.com.cn/GB/42733/3193114.html
>対班里所有女生実施暴力性侵害
「所有」って・・・・。
私も経験ありますが、収入が違いすぎると
やはり住んでいる世界が違いすぎます。
情報量も違いすぎますし、未来も違います。
共有しているものが少なすぎるので、
友達になるのは難しいですね。日本の学生生活とはホント違うと思います。
こういう記事を掲載する青年報は何が言いたいのでしょうか。けしからんということを言いたいのでしょうか。ではどうするのかというと、そこがいつも尻切れトンボ。ここ数ヶ月の中国は議論を投げかけるのはいいけど、本質を突き詰めるとえらい事になるということに気づいてとたんにその後押し黙るというムードがぷんぷんします。
NHKで中国農村出身の先生が都会で働いて故郷に帰ってきたときの話を放送しておりましたが、村の子供が大学に受かっても、入学金が無いので、村を担保に借金してその人を大学に送ったという話を紹介してました。あの広大な中国では、まだテレビで紹介できる話(ましな話)なのかもしれません。先生が故郷に帰り、都会とのあまりの経済格差に涙が出たというくだりは今でもよく覚えています。
学生間の格差もひどいが、大学まで行ければ幸運で、小学校に行くのもおぼつかない、これで発展をして行こうというのは無理がありすぎます。
ちなみに、その映画のロケ地は北京から車で3時間程度のところだそうですが、とても首都の近郊にあるとは思えない荒れた学校でした。
> NHKで中国農村出身の先生が都会で働いて故郷に帰ってきたときの話を放送
確か、黄河流域の寒村で教育熱心な親の娘がせっかく農大入試で合格したのは良いが
大学入学に8万円必要で、親が労働力の家畜を売っても2万にしかならず
途方にくれていた話でしたよね?
アレを見て、一応社会主義国家を標榜しているのに入学金取るんかい
と思ったのですが…
その一方で、沿海部では富裕層の子弟向けの私学が盛況っていう話もあるしねぇ
1読者さん、情報提供有難うございます。
こういう問題はつきつめると一党独裁に行き着くと思います。
私はこういう文章を読むたび、民主諸党派(政協)の機能強化、そして多党制すら思い描いていた趙紫陽氏を想起するのです。
大丈夫?さん、この記事面白いですね。
仰る通り、まず馬鹿馬鹿しいです。それから今回は広電総局(放送管轄部門)ではなく、工商部門の広告管理部署が声を上げたことが興味深いです。子を持つ親からのクレームとありますが、本当でしょうか?旺旺があまりに売れるのをやっかんだライバルメーカーが結託して一策を講じていたりして(笑)。
バカボンさん、コメント有難うございます。
親からの仕送りに10倍前後の開きがあれば当然別世界ですよね。私が留学していたころ(15年ぐらい前)には目立たなかった現象です。
あのころはカネの使い道もそんなになかったし、貧富の差もそれほど深刻ではありませんでした。農村出身の学生も結構いました。同郷とか北方人・南方人で付き合いが分かれたり喧嘩したりというのはありましたけど……。
収入で付き合いが分かれるというのは恐ろしい世界です。最近も大学生になった妹のために兄がノートパソコンを盗もうとして捕まった事件がありました。
さすがは大丈夫?さん、見逃しませんね。私はこのニュース、sohuで拾いました。
毎日事件記事にあたっている者として言いますと、感覚が麻痺してしまいまして「信じられん」という感想は出ません。24人は確かに衝撃的です。ただ「教師が生徒を」とか「父親が実の娘を」というのは週に何本も出てくる記事なので珍しくないのです。1読者さん、眩暈がしなくて申し訳ありません。中国には鬼畜が多すぎるのです。
記事のストック、いろいろあります。あまり気が進みませんけど、こういう事件の特集でもやりましょうか?
1読者さん、私が思うに、一党独裁制下の記者にも良心や問題意識のある人はたくさんいるでしょう。そういう人が許される範囲で書いたのがこういう記事ではないでしょうか。四川省漢源県の農民暴動のときも、それに呼応して「失地農民」の問題をとりあげた記事がありました。これが第一。
第二に、この記事が胡錦涛の広報紙たる『中国青年報』から出ていることに注目です。「大学生の思想教育強化」とは胡錦涛が常々唱えているところです。「愛国主義強化」と言われることもあります。ただ前に何度か書きましたが、これらは「反日」主体ではなく、むしろ以前の「反ブルジョア自由化」「反精神汚染」キャンペーンに近い実質を持つのではないかと私は考えています。要するに風紀粛正です。ですからこういう記事を出して、金持ち学生の贅沢三昧が目に余る、という印象を強めようとしているのかも知れません。風紀粛正の先触れのようなものではないかと。
90さん、コメント有難うございます。「あの子をさがして」はなかなか面白い映画でした。確か子供を探しに行く先生も、当初は良心からではなく欲得ずくなんですよね。だから一生懸命探しに行く。……そういう設定に社会の現状を絡めた描き方が絶妙だったように思います。
統計によれば、大学生に占める農村出身者の比率が低下傾向にあり、また初等教育の面でも学校数が都市部に片寄り、農村ではむしろ減少しているとのこと。これは中国経済の構造転換(グレードアップ)を阻む最大の要因のひとつになると思います。
七七四三さん、初めまして。コメント有難うございます。
全くネオ共産党が出てきてもおかしくない状況です。改革開放を20年ばかりやったら、みんなが豊かになるどころか収入で分けると歪んだ階層構造が形成されてしまっていて、しかも階層間の流動性に乏しい。記念堂で充電中の毛沢東がそろそろ動き出すころかも知れません(笑)。あるいは二・二六事件のような青年将校の決起なんていうのが起きても不思議ではないでしょう。
七七四三さん……もしかして、「さん」付けは重複になるので余計でしたか?
きんぎんすなごさん、コメント有難うございすます。
>一応社会主義国家を標榜しているのに入学金取るんかい
それなんです。私が留学していたころは原則的に無料だったのに、一部を個人負担するようになったんですね。チナヲチをしていない間にそういう政策転換があったらしいので私もよくわかりませんが……。
1人当たり年間GDPが平均でも1000ドルちょっとですから、内陸部の寒村で8万円を準備するのは無理ですよねえ。
以前張芸謀の別の中国映画を中国に駐在した人に貸したら(結構中国語が話せる人)、字幕なしでは分からないとのことでしたので。
私は香港で売られているものを入手しました。もちろん正規品ですよ(笑)。
香港版だと北京語で字幕が出るので、どうしても目で追っかけてしまい、耳の方はお留守になります。……いやいや、中国映画を字幕なしで聴くなんて、私には無理な注文です。
最近北京語で話す機会すら少ないので、話す力もかなり落ちていると思います。1カ月くらい台湾(大陸は嫌)に放り込んでもらえると回復してきます。語学はスポーツですからね。
発音は香港で広東語が混ざった時点で崩れました(涙)。こればかりは治しようがありません。
結構真面目に中国語を学習した者として、「お前は香港人か」と言われることほどの恥辱はありません。
香港へ行った時に、ドラマに字幕が出るので、言葉が分からなくても内容が推察できました。台湾でも字幕が出ますね。
しかし、御家人さんも字幕なしで映画を見るのは大変となると、本当に語学は奥深いですね。
>発音は香港で広東語が混ざった時点で崩れました
うーん。想像が付かないですね(笑)。日本人の話す北京語に広東語の訛りが入った発音…。もしかして、日本人は広東語の発音がしやすい…って事はありませんよね。
毎週出るという鬼畜による凶行の記事を読む勇気はありません。
特に子供が犠牲者である場合、父である自分は耐え難く、精神的にきついです。
そんな記事が毎週新聞に出るのであれば、社会は救いようが無いほどの病的な状態としかいえません。このような事実が一番中国に対して嫌悪を感じます。すべての人が常軌を逸しているとは言いませんが。
中国が一番安定していたのは50年代の最初の数年間だったと知人は言っておりました。反右派闘争ですっかり変わったと。そしてそれ以降その繰り返しだと。
http://legal.people.com.cn/GB/42733/3193114.html
このニュースの一番信じられない所は、1クラス24人「全員」を強姦した所でしょう。
こんなエロゲームや小説があっても、「荒唐無稽」「中学生の妄想」と批判されて終わりでしょう。
>うーん。想像が付かないですね(笑)。
>日本人の話す北京語に広東語の訛りが入った発音…。
私も自分で把握できていないんです。ただ自分の発音が昔と違ってしまっているのはわかります(涙)。
「発音は最初の1年が勝負。あとは固まってしまって治しようがない」と初学者時代に先生に言われたので一生懸命努力したのに……。
こういう事件、私は当初「ロリコン変態」の仕業かと思っていました。だって被害者が中学生、11歳、9歳とかですから……社会環境の激変で、そういう連中が湧いて出たのかと考えていたのです。
で、事件記事を読むと確かにそういう輩もいます。いるのですが、どうも主流は違うようなのです。「女性なら誰でもいい」「とりあえず身近なところで手当たり次第」、そんな感じです。被害者の年齢を思いあわせると、これは空恐ろしくなります。
変態とか鬼畜とか、そういうレベル以前の話ではないかと思うのです。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。