日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 言わずと知れた番禺太石村(広東省広州市番禺区魚窩鎮太石村)の「農民による民主化運動」です。終息したと思ったら後日談までありました。

 ここまでの動きについては下記を御参照下さい。ゲッこれ全部読まなきゃダメ?……と思った方は一番下の2本(「これぞ温家宝の唱える……」上下)だけ読んで頂ければ大体の経緯は御理解頂けるかと思います。

 「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・上(2005/09/15)
 「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・下(2005/09/15)
 番禺太石村事件3――愚民量産を邪魔されると中共は御陀仏。(2005/09/16)
 これぞ温家宝の唱える「中国型民主」(笑)・上(2005/09/23)
 これぞ温家宝の唱える「中国型民主」(笑)・下(2005/09/23)

 ――――

 太石村の村長(村民委員会主任)に土地売却をめぐる汚職疑惑が浮上し、抗議してもラチがあかないと悟った村民たちは人権活動家などの助けを得て法知識を学び、ついに合法的な手続きで村長罷免動議を成立させるという中共政権史上恐らく前代未聞と思われる快挙を成し遂げました。

 動議成立ということで、まず罷免の是非を審議する村民委員会7名の選出が必要となりました。村民に時間的余裕を与えない当局の汚い手口にも負けず、村民は独自候補7名を擁立。選挙戦で当局が押し立てた「官製候補」7名を全て退けて圧勝、正に民意に基づいた村民委員会が成立しました。これまた歴史的快挙です。

 ところが村民たちの不幸は、自分達の村が政府や法律の上に中国共産党が一党独裁で胡座をかいているという異常な政治制度の国にあったことです。異常な国情には異常な「民主」がやっぱりお似合い。民意の存在を糸屑ほどにも感じさせない「中国型民主」です。

 ――――

 温家宝首相は9月6日、海外を含むマスコミの前で大見得を切り、その民主化構想(中国型民主)について大いに語ってみせたのですが、太石村で起きた一連の出来事は、その「中国型民主」の実態がどういうものかを、また温家宝の熱弁が如何に虚偽のカタマリであったかを期せずして鮮やかに浮き彫りにしました。

 とは、選挙が終わるとともに、村民委員会に当選した7名の「民選候補」に匿名電話などによる脅迫が開始されたのです。その執拗で凄みのある脅し上げに耐えられなくなった当選者たちは一人また一人と村民委員職を離れていき、とうとう9月23日までに7人全員が辞職に追い込まれてしまいました。

 ぽっかりと空いた村民委員のポストには、落選した当局の「官製候補」7名がそのまま繰り上げ当選。時代劇の脚本でもこれほどの筋は「ベタすぎ」と一蹴されそうなお芝居が、現実に行われたのです。

 ――――

 一方では村民やその支持者たちに対して露骨なまでの弾圧が加えられています。

 まずは9月12日以来消息不明となっていた村民たちの法律顧問・郭飛雄氏が警察に逮捕されたことが正式に確認されました。

 一昨日(9月26日)には村民を支援してきた大学教授や人権活動家が取材陣と共に太石村を訪れたところ水を浴びせられ、さらに暴徒に袋叩きにされるなどして負傷する事件が起きています。他にも取材のため村にやってきた記者が汚水をかけられるなどして追い払われています。

 村は事実上、村外との接触を禁じられた封鎖状態といってもいいでしょう。「なんちゃって戒厳令」といったところです。常時60~70名の警官が村内を常時巡察し、数人がかたまって話をしているのを見ると一喝してやめさせたりもするそうです。これではまるで3人以上が集まることを禁じられた植民地時代のマレーシアだかインドネシア(記憶モード)のようなものではないですか。

 ――――

 そして、脅迫の鉾先はいま一般の村民にも向けられています。罷免動議の成立によって10月7日に開かれることになった村長罷免大会(村民の直接投票で罷免の是非を決めるもの?詳細は不明)を流産させてしまおう、というのが当局の肚。「当局」といっても様々なランクがありますが、番禺区政府までは直接関与しているようです。

 こちらの脅迫も念が入っています。具体的には罷免取消動議のための署名集めなのですが、まずは戸別訪問して脅しあげる。その一方で当局関係者が村民を飲茶に招いたりと硬軟両面から追い込んでいくという戦術です。

 また、12日のの警官隊による急襲や当初の抗議活動(ハンストなど)で警察に拘留されている者の家族に対しては、「署名に応じれば釈放する」という迫り方。

「村民21名の署名が集まるごとに一人ずつ釈放してやる」

 という条件が番禺区当局から示されているという噂も流れているようです。

 ――――

 これまで事件を追い続け、ネット上で村民を支持してきた掲示板「燕南社区BBS」に対しては、21日に国務院新聞弁公室からサイト運営者に直々の電話があり、太石村事件に関する文章を全て削除するよう求めてきたといいます。

 国務院とはすなわち中央政府。これが事実なら、事件に関与しているのが番禺区や広州市といった地元レベルだけでないことがわかります。地元当局による事件処理のやり方についても御墨付きが出ているのでしょう。汚いですねえ。温家宝の構想通りにやってみた結果がこれですから。

 さすがは「中国型民主」とでも言いますか、その執拗さと徹底ぶりはこのように並ではありません。まさに完膚なきまでに、相手を撃殺するまで手を休めない、といった執念を感じます。1989年の天安門事件もそうでしたし、文化大革命や反右派運動もそうでした。あるいは歴代王朝における「官」と「民」の関係もそうだったのかも知れません。地金が出ちゃったというかお里が知れるというか。

 何やら捨鉢な感想ばかりが湧いてきます。「官」の汚さは当然のことながら、本来なら先頭に立つべき存在である大学生や知識人が都市生活を謳歌し、成年男女の3割までが親に養われているのです(事実上のニート)。

 その一方で農民が法律を用いて自分の権利を行使するやり方を自ら懸命に学び、それを成就させつつも最後には当局に潰されていく。どうにも救われないじゃないですか。この件に関しては結語が浮かびません。浮かばないまま打ち切りにしておきます。

 ――――

 こういう話題ですからついでにふれておきます。親中紙『香港文匯報』(2005/09/27)によると、北京の天安門広場近くで26日午前、ごく小規模の爆発があったそうです。事故なのか事件なのか、逮捕者が出たのかなどについては目下のところ不明です。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0509270022&cat=002CH

 それからとある裁判のニュース。湖北省・黄石市で発生した政府庁舎襲撃事件について首謀者ら10名に第一審の判決が言い渡されました。……て、そんな事件が起きていたんですねえ。

 「新華網」(2005/09/27)及び香港紙『蘋果日報』(2005/09/28)の報道によると、首謀者らは8月5日午前1時ごろ、当局の認可を得ない非合法デモ(大洽市から黄石市まで)を計画しインターネットを通じて大洽市民に参加を呼びかけたとのこと。

 デモの動機は「政府に対する抗議」。現在大洽市の管轄下にある複数の「区」を黄石市に吸収合併させる統廃合計画が進んでおり、それによって順調な経済成長を遂げてきた大洽市の今後の発展に影響が出るとの懸念から、大洽市民の多くはこの統廃合計画に不満を募らせていたようです。

 そして8月6日午前、首謀者らは集合地点に屯集した群衆を率いて予定通り黄石市までデモ行進し、黄石市に到着したところで暴徒化。政府庁舎に赴いて玄関の自動ドアや植え込み、柵などを壊して回る一方、庁舎内にも乱入して数々の破壊行為を働き、さらに近くを走る高速道路の料金所付近をデモ行進して大渋滞を引き起こしたとか。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-09/27/content_3548680.htm

 ――――

 前回紹介した「造反官僚」の件もそうですが、何だか中国社会のタガが緩み始めているような気がしないでもありません。

 中央の求心力低下は分権化と競争原理の導入を骨子とする改革開放政策の帰結ともいえますが、本来なら別の調節手段で中央がマクロコントロールを効かせる計画だったのが、それがまだ十分に機能しないうちに社会状況が先に悪化してしまいました。具体的には貧富の差や地域間格差の拡大、それに失業者の増大や党幹部による汚職の蔓延などといったところでしょうか。

 そうした危機を「強権政治&準戦時態勢」のもと荒療治を施して乗り切ろうとした(と私はみています)胡錦涛総書記の計算も随分狂ってしまったようですし。……ただ強力な野党のような対抗勢力がない分、中共は倒れるにしてもゆっくりと腐りつつ朽ちていくように思います。「造反官僚」は目下のところ「中央vs地方」という対立軸のみで「地方vs地方」の気配はありませんから、まだ分裂を云々できる段階ではありませんし。

 何だか最後は主題と関係ない話になってしまいました。すみません。


 ――――


 【参考記事】

  ●反中共系ラジオ局「RFA」(2005/09/26)
  http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/09/26/china_rights_taishi/

  ●反中共系ラジオ局「RFA」(2005/09/27)
  http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/09/27/china_rights_taishi/

  ●香港紙『太陽報』(2005/09/26)
  http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050926/20050926020611_0001.html

  ●香港紙『明報』(2005/09/27)
  http://full.mingpaonews.com/20050927/cac1.htm



コメント ( 20 ) | Trackback ( 0 )



« 続・炭鉱の官... 胡錦涛が軍主... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (足軽)
2005-09-28 09:53:08
御家人さん絶好調!
 
 
 
Unknown (一読者)
2005-09-28 10:06:32
全くとんでもない国ですね。

マスコミはこういうことを決して報じませんので、御家人様、これからも宜しくお願い申し上げます。
 
 
 
本当の革命の必要な国 (近江源氏)
2005-09-28 10:15:09
地球上で今一番、本当の革命の必要な国がまさに中共です。マルクスさん、エンゲルスさん、孫文さん、みんなそう思うのじゃないでしょうか。思わないのは中国ニセ共産党幹部と朝日新聞と岩波書店と不破哲三と土井タカ子くらい?

いやまだいた。中国利権の薄汚い自民党造反派の野中広務・古賀誠・・・。御家人さん、今後も中共の実態を暴き続けて下さい。いつか日本人も眼が覚めるときが来る、夜明けは近い、と思っておりますので。
 
 
 
Unknown (大丈夫?)
2005-09-28 10:47:40
これ、誰か紹介していましたっけ?



ナショナリズム扇動、統治正当化する中国 在米大使館・北野公使が米紙に論文

http://www.sankei.co.jp/news/050925/morning/25pol002.htm



北野公使の論文(英文)

http://www.washingtontimes.com/op-ed/20050922-094104-6430r.htm
 
 
 
Unknown (月光)
2005-09-28 11:01:00
市場経済の導入された改革・解放後の中国型の社会主義?を、「中国の特色ある社会主義」というそうですが、これはさしずめ「中国の特色ある民主主義」ってことですかね。「中国の特色ある」をつければ、何でも許されるってわけじゃないでしょうに。
 
 
 
生きる教科書 (まかぼろ)
2005-09-28 11:37:24
封建時代と基本的に変わらないですね。というか封建時代もこのような工作をしていたのだと思います。



「生きる教科書」と言ったところでしょうか。



P.S.

コメントでいただいた件につきましてメール差し上げました。ご返事をお待ちいたしております。
 
 
 
先に中央をやれ! (暇人)
2005-09-28 12:07:24
>「造反官僚」は目下のところ「中央vs地方」という対立軸のみで「地方vs地方」の気配はありませんから、まだ分裂を云々できる段階ではありませんし。

分裂より先に「中央を先にやってしまおう」と考えるという可能性はないでしょうか? とりあえず自分たちに都合の良い中央を無理矢理つくってで、それがこけて分裂内乱と。

 どっちにしろ、既に権威としての党は死滅しているので各地方の閥にとって中央は既に存在自体がウザイ段階という可能性はあるのではないでしょうか? で、どちらにとっても法治は最大の障害だから一致して弾圧。

 食わせられない政府は逆に食われるしかないから弾圧して自分たちが金持って逃げ切れるまでもたせるというのでなければいいのですが。
 
 
 
ニート (在中国2)
2005-09-28 15:34:41
> 本来なら先頭に立つべき存在である大学生や知識人が都市生活を謳歌し、成年男女の3割までが親に養われているのです(事実上のニート)。



そうなんですか、3割ですか。僕の成都の友達のほとんどがニートなので、多いな、とは感じてましたが。ちゃんと数字がでてるのですね。
 
 
 
Unknown (えーと)
2005-09-28 16:17:06
日本共産党は中国共産党と交流再開してずいぶん経つハズですが、このような反民主主義的&非共産主義的事件に対して、どんな見解をもっているのでせうかw

公式見解は(無いけど)およそ想像できますね。曰く「内政不干渉」・・・どこぞの新聞社でもいいから非公式見解を取ってこないかな。えっ、無意味だと?そうですかw
 
 
 
既出かもしれませんが (ろむ)
2005-09-28 17:56:45
>政府がストライキを規制する情報がネットで広がった後、現地民衆が当局に大変な不満を示し、ネットで「共産党は売国」などの反政府の発言が飛び込み、政府の行為を「売国」とし、大連市長の免職を求めた。>当局が高調に記念する9月18日抗日戦争60周年の活動により、高まった民衆の反日ムードは、一変して反共の方向に転向している傾向が見えた。



遼寧省大連:日系企業ストライキに現地政府が介入

http://www.epochtimes.jp/jp/2005/09/html/d84256.html

農村を食い物にして発展させているはずの、その都市部も何か燻っている模様で。

 
 
 
Unknown (天葬師)
2005-09-28 18:37:19
例の掲示板にスレが立ってましたが、温家宝は「親日派」だそうです。ブラックジョ-クのつもりでしょうかw

それにしても暗黒大陸は変わりそうにありませんね。
 
 
 
Unknown (大丈夫?)
2005-09-28 19:55:26
米軍:ウズベキスタンの基地から撤退へ 両国の関係悪化で

http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20050928k0000e030008000c.html



中露連合にアメリカが負けるとは思っていませんでしたよ。
 
 
 
Unknown (月光)
2005-09-28 23:38:32
>>Unknownさん



軍を置かせてもらってると、ウズベキスタンのむちゃくちゃな国民弾圧に口をはさめなくなるからじゃないでしょうか、アメリカ。そう信じたいです。

代わりに中央アジアの中では独自路線をいく、トルクメニスタンが引き受けるといいんですけどね。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-09-29 00:34:29
こういう中、靖国参拝が行われるとなると

いったいどういう状態になるのやら、楽し

みのような、怖いような:P。
 
 
 
複数政党制か (cat)
2005-09-29 04:43:05
複数政党制を検討 ベトナム共産党、政策転換

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050926-00000139-kyodo-int



だそうです。



 
 
 
小心者 (きんぎんすなご)
2005-09-29 08:37:06
中国軍、24か国の担当者招き軍事演習…日本招かれず

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20050927id25.htm



仲間はずれにでもしたつもりなんでしょうかねェ

それともお粗末な装備を見せるのも恥ずかしかったとか
 
 
 
Unknown (一通行人)
2005-09-29 12:58:41
>仲間はずれにでもしたつもりなんでしょうかねェ

「戦争を行う可能性がある相手だから招かないんだよーん」

というジェスチャー(脅し)かもしれませんねぇ。



あと名目上、一応日本は武器の輸出はしてないから

「招いても武器は売ってくれないし」

とか?

(貧弱装備を見せて他国の同情を買おうとしてる?)
 
 
 
Unknown (H)
2005-09-29 16:45:13
>ベトナム共産党が、「複数政党制」の導入を検討

>制度を調べるため日本にも調査団を派遣した

BSの海外ニュースを見ると、ベトナムのテレビ報道の自由度に驚かされます。

地方組織どころか中央政府の政策も批判する事がある。

日本からの投資・援助に対する報道が、NHKのセレクションを考慮しても、かなり重きを置かれている。

中国との関係も重視しているが、どこか冷ややかである。例えば技術援助を紹介した時は「金額的にはごく僅か」とわざわざ注釈を入れていた。(歴史を見れば当然ですが)



頭から信用する訳にはいきませんが、中国的社会主義とは一線を画す事で、日米の投資を呼び込むつもりではないでしょうか。米・仏・中・そして日を追い払った国はしたたかです。
 
 
 
インドシナ戦争と元日本兵 (きんぎんすなご)
2005-09-29 22:56:15
最近はこれも公にされましたし…



元日本兵の貢献、ベトナムで認知の動き 「封印の歴史」報道

http://www.sankei.co.jp/news/050920/kok059.htm



一方、八路軍での元日本兵の貢献は公では秘密なのかな?
 
 
 
Unknown (大丈夫?)
2005-09-30 07:46:51
ベトナム・ビルマ・インドネシア独立運動に参加した元日本兵、中共軍に参加した日本八路軍では参軍の動機や果たした役割全く違うと思われ。

戦後の活動は言うに及ばず。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。