日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 2008年の大晦日です。今年もまた「ゆく年くる年」と組み打ちしなければなりません。

 今年はまことに「多事之秋」(多事多難な一年)となりました。

 いやもちろん中国の話です。年初の物価高、毒餃子事件、雪害に続いて3月にチベット問題が勃発し聖火リレーからフリーチベットが日本をも席巻。台湾の政権交代、胡錦涛の来日、そして夏の終わりのフフン♪の退陣、皆さん覚えていますか?(笑)。

 フリチベが盛り上がった直後に四川大震災が発生し、それを追いかけるうちに北京五輪です。この五輪開催で御祝儀相場になると思われた続落一方の株価はとうとう回復することなく、不動産とともについにバブル崩壊。

 それに伴うあれこれが群発していたかと思えば、あにはからんや世界同時不況。輸出中毒だった中国経済はこれで心電図ピー状態となりました。

 広東省あたりではアパレル、玩具など労働集約型の工場がバタバタと潰れ、不動産関係も風前の灯。とりあえず失業者がわらわら、です。

 こうなると雇用対策や緊急予算の配分で「中央vs地方」「地方vs地方」の対立激化は必至、と私が考えていたその矢先に、当局や党幹部の汚職や横暴で生じた数知れぬ不公正に対する庶民の蹶起が相次ぐようになりました。陳情、デモ、スト、暴動が全国各地で頻発。

 それも、毎日何らかの官民衝突的事件が複数飛び込んで来る盛況ぶりです。特に路頭に迷う人々だけでなく、タクシー運転手や教師など、定職を持つ一般庶民までもが「もうやってらんねー」と立ち上がり始めたのは特筆すべきことです。

 そして最後にトドメの如く、「08憲章」がドカンと降臨。

 出来事の多さに翻弄されるばかりでしたが、振り返れば前座の演目が出尽くした一年ということができるかも知れません。

 胡錦涛政権の発足(2004年9月)直前にスタートした当ブログにとってみれば、中国は、とうとう来るところまで来てしまった、という感想が浮かぶのみです。

 調和のとれた社会という意味の「和諧社会」という胡錦涛政権の掲げた大看板ともいえる言葉が公文書から姿を消したことで,党中央は超格差社会の改善を事実上放棄したといっていいでしょう。どんなに頑張っても現状維持で精一杯、という宣言です。

 きたる2009年の中国社会については、いま現在より良くなるという材料に乏しいことは言わずもがな。最高指導者の胡錦涛自身が中国の競争力低下に言及し、一方で金融危機のあおりで社会に混乱が生じれば人民解放軍を容赦なく鎮圧に用いる、と示唆する演説までしています。3月にチベットでやったことを事あらば漢族にも断行する、との決意表明のようなものでしょうか。



 今年の中国は、胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共青団人脈)が政界において勢力を伸長させたものの、盤石とはいえない頼りなさを残した一方、胡錦涛からみれば「地方の暴走」、つまり全国各地の「諸侯」による「割拠」がかなり進行したという印象です。胡錦涛政権は「割拠」を批判しつつも、十分に手が出せないまま不完全燃焼で新年を迎えることになりました。



 と、楽観視できない状況であることを昨年の「ゆく年くる年」で書きましたが、事態がここまで進むとは思いもよりませんでした。

 ところが一方で私はそのエントリーにおいて、



 ちなみに、有毒商品の蔓延や環境汚染の進行も考えれば、そこに暮らす者の生活はもちろん生存自体が脅かされているといっていい現在の中国にあって、「民主化」などという浮世離れしたことを口にする閑人はビョーキ扱いされることでしょう。もはや状況は「理想よりパン」であり、「官逼民反」(「官」の横暴に追い詰められた民衆が成否を問わず蹶起する)なのです。

 しかも、本来「民主化」を先唱すべき大学生は江沢民型愛国主義教育&物欲まみれで社会への問題意識が欠落しており、知識人はアルバイトと論文盗作に血道を上げています。そして国民の民度と中国共産党の独裁制度への執着を考えれば、「中国の民主化」がいかに非現実的な発想であるかは容易に想像できることでしょう。



 ……なんてことを書いています。しかしながら「08憲章」が出現したのですから、少なくとも知識人に対する怠惰批判について、私は誤りを認めなければなりません。

 もちろん、例えば私の兄貴分であるカリスマ教授などのように、署名していない知識人の方が比較にならないほど多いのが実情ではありますし、現実に則した政策提言を行うこともまた、知識人の務めといえるでしょう。

 とは申せ、です。一党独裁の人治国家において実名を晒して当局批判と独裁終結を求めた勇気の尊さに、私はただただ平伏するほかありません。

 心ある知識人たちは、中国の危機に際し成熟した民主化綱領を打ち出して進むべき道を示し、その責任を見事に果たした、といえるでしょう。……浮世離れした、また非現実的なムシの良さを随所に散りばめた高邁なる寝言、ではありますが。

 この「08憲章」がすでに7000名近い署名を集め、しかも農民を含む庶民が多数派を占めつつあるという状況は、中国社会の深刻な現状を示して余りあります。

 ただし前回ふれたように、署名者に占める庶民率が高くなるほど、「08憲章」は発起人たちの望まぬ方向へと独り歩きしていくことになると思います。

 民度が低いため「08憲章」を十分消化することができず、知識人たちと認識を共有することができないからです。また、中国社会にも「民主化」という悠長なプロセスを着実にこなしていくだけの余力が残されていません。

 それゆえ「08憲章」は庶民層に浸透するほど「独り歩き」が進むことになります。そして進めば進むほど、

「大国としての存在感を維持しつつ、民主化への平和的変革を実現する」

 という、発起人たちが望むカタチからはどんどん遠のいていくことでしょう。その結果もたらされる状況が如何なるものであれ、中国人にとって幸福なものでないことだけは確かであるように、思えてなりません。

 ――――

 これだけ働く機会がありながら、私自身は体調を崩すことが多く、不本意な一年となりました。

 大量の情報を取捨選択しつつ、素人なりに何事かをデタラメに跡づけたり分析したりする、という当ブログ本来のスタイルを、特に夏以降は肝心の記事集めにドクターストップがかかったため、十分に貫くことができませんでした。来年は何とかしたいところです。

 やはり健康問題からコソーリ活動も十分に展開できず、こちらも及第点を与えることはできません。

 それでもビギナーズラックはあるもので、「08憲章」に関して発起人とごく親しい香港の著名なチャイナウォッチャーにインタビューすることができたのは、確かな手応えとして自分の中に残りました。素人のブログにも、たまにはこういう風が吹くものなんですね。味をしめた私は癖になってしまいそうです(笑)。

 これが私の年末の予期せぬボーナスとなりましたが、ひょっとするとお年玉も頂けるかも知れないとのことで、いまは期待半分でドキドキしながらお正月を待っています。

 不本意とはいいつつも、意義ある出来事に恵まれなかった訳ではありません。その最たる例のインタビューもそうでしたが、今年はブログの延長線上で現実世界に出て活動する機会がたくさんありました。その過程では色々な人と出会い、また懐かしい人たちと再会することもできました。

 その御蔭で不肖御家人の懐が少しだけ広くなり、また中国観察という娯楽に興じる上で、新しい視座を獲得することができたような気がします。そして弱小・色物系であることを厭わず駄文にお付き合い下さった読者の方々も含めて、皆さんに心から御礼申し上げる次第です。

 来年は「おやこれは奇遇ですねそれでは海軍コーヒーでもOFF」が増えるといいなあ、と私は傍迷惑なことを考えています。すみません。

 きたる2009年においては、何よりもまずコンディションを維持できるよう努めます。やっぱり身体が資本ですから(笑)。日本も景気後退で大変なことになってきましたが、皆さんもまずは御堅固に。

 来シーズンはいよいよ正念場の第一幕。馬鹿は馬鹿なりに気合いを入れ直して新しい一年に臨むつもりです。

 それでは皆さん、どうか良いお年をお迎え下さい!





コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )



« 「08憲章」... 初詣。 »
 
コメント
 
 
 
よいお年を。 (otsu-dosu)
2008-12-31 07:09:07
今年は色々とお世話になりました。

来年以降の動きで気になるのは、やはり「08憲章」ですかね。
浮世離れした内容なので憲章に書かれた内容が実現するとは到底思えませんけれど、胡錦濤サイドがチベット暴動の時のように腕力を含めた強硬姿勢で潰してしまうのか、多少なりとも発起人や署名者の意を汲んで、少しずつ「政治改革」に着手して行くのか、とても気になるところです。

話は変わって「飢えをしのぐ方法」の付け足しになりますが、パンの耳や肉の切れ端は、まとめて格安で、或いは運がよければタダでもらう事ができますよ。
少し前までは「賞味期限切れ」問題がホットでしたが、現在は「味や品質に大して違いは無いのだから、賞味期限切れ商品を格安で売りさばこう。」という動きも出てきてます。
全ての飲食店がそうではありませんが、「お持ち帰り」も一部でブームになっており、再利用可能な「お持ち帰りバック」を売り出す企業や、それらを積極的に取り入れる企業も出てきています。
実際、極寒の上野公園で絶食状態で野宿するよりも、売れ残り商品などを分けてもらう方がはるかに「健康的」ですよ。
もちろん、「自己責任」ではありますが。
現在のこうした状況を考えると、TBSに捏造報道までされて半殺しにされた不二家は何だったのか?と少し複雑な気持ちにならないでもありません。

来年は景気も回復し、明るい一年になりますように。
よいお年を。
 
 
 
来年もよろしくお願いします (que)
2008-12-31 09:35:21
また契約更新してしまいましたので、この厄介なクニともしばらく付き合わないといけません。

来年もよろしくお願いします。
 
 
 
Unknown (ぽんた)
2008-12-31 11:20:39
今年は色々とタイヘンな年でした。

来年もタイヘンな年になりそうですね。
御家人さんもお体を大切に、
良いお年をお迎えください。

来年もよろしくお願いいたします。
 
 
 
今年はリアルネタが多く、、、 (dongze)
2008-12-31 13:33:06
御家人さん、
今年はエントリもリアルネタが多く、とても体調不良に思えなかったような気がw
ともあれ、1年間お疲れ様でした、と同時に(恐らく今後も荒れそうな)チナヲチを来年もお願いいたします。
こちらは今年カゼ知らずだったのですが、某近所の国際展示場を夏冬2回狂気の沙汰に追い込む某イベント関係者と酒を付き合ったら、見事にカゼをorz 
初詣までに改善すべく努力中。。。
 
 
 
Unknown (民す党)
2008-12-31 14:09:14
楽しく読ませていただき、ありがとうございます。
あせらず、無理せず、今後とも、中国人が文明化される方向で真心を込めてご活躍下さい。
 
 
 
Unknown (90)
2008-12-31 14:17:36
今年も力の籠もったブログをありがとうございました。私はシナ関係の仕事を離れてしまったので内容のある事は何も書けませんが…。
お仕事では旧正月に掛けての追い込み真っ只中とは思いますが、体が資本ですので無理せずお願いします。
 
 
 
御家人さん、良いお年を。 (めるくまーる)
2008-12-31 17:28:31
御健勝をお祈りしております。
来年も、エントリー心待ちにさせていただきます。
 
 
 
今年一年、有難う御座いました (arcadia)
2008-12-31 20:16:33
本当に今年は色々ありましたねぇ>中国関係
ありとあらゆる流れが一気に加速(暴走?)してゆく、そんな一年であった様な気がします。
御家人さん、体調不良を押してまでのチナヲチ、
本当にお疲れ様でした。

どうぞ良い御年を御迎え下さい。
 
 
 
祝生活愉快 (sepatakurou)
2008-12-31 23:22:35
御家人さん、今年一年お疲れ様でした。

香港の新聞「明報」は中国の新聞「國際先驅導報」から記事を引用して報道しています。
それによると、中国のネットユーザーは今年を表す漢字として「殤」を選んだそうです。
下の記事を読むと今年の中国は躁鬱状態が激しかったようです。
躁は北京五輪、欝は諸々の問題です。
「殤」と言えば、88年の「河殤」を思い浮かべますが、「河殤」や「08憲章」を重視したい空気が中国社会が渦巻いているのではと思ったりします。

新年も更なるご健筆をお祈り申し上げます。
祝生活愉快。

網民票選今年代表字「殤」
http://www.mpinews.com/htm/inews/20081225/ca41301a.htm

根據北京「國際先驅導報」的調查,超過1/4的網民認為「殤」可代表今年的中國。

2008對中國來說充滿淚與笑。年初開始,南方發生50年一遇的冰雪災害,隨後發生引起國際震撼的西藏拉薩騷亂及造成數萬人遇難的汶川大地震。

8月登場的北京奧運會雖帶給中國人民無限驕傲與喜,但奧運剛落幕就爆發禍延小嬰兒的毒奶粉事件,與此同時,神舟7號太空船升空又讓世人了解到中國的科技進步。

9月間金融海嘯開始掃全球,影響所及,大陸多年來持續攀升的經濟開始下滑,失業率更讓人憂慮。

歷經如此的歡喜憂愁,究竟哪一個中文字可概括2008年的中國?

據北京「國際先驅導報」的調查,超過1/4的網民認為「殤」可代表今年的中國大陸。

國際先驅導報說,「這是一個令人欲哭無淚的字眼,卻也隱隱透露著深情的懷念,以及一個國家和民族經歷陣痛後浴火重生般的堅強。笑中帶淚,抑或是大悲大喜,傳達的都是這一年的不同尋常。」

今年適逢中國施行改革開放政策30年。國際先驅導報說,2008的坎坷波折塑造中國與眾不同的改革紀念時間點。在這個特殊時刻,中國人更加團結、理智、清醒地開啟一個全新的30年。

(中央社)
 
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