日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





シリーズ「08憲章」【9】へ


 ブログで書く以上「私見」なのは当たり前なのですが、一応雑感として「08憲章」について書きとめておきます。

 その前に、すでに発表されている「08憲章」署名者の第八次名簿、第九次名簿について。右側が累計署名者数です。

(1) 303   303
(2) 440   743
(3) 526  1269
(4)1231  2500
(5)1014  3514
(6)1412  4926
(7) 637  5563
(8) 628  6191
(9) 616  6807

 この2回の名簿で目立ったのは、まずは「維権人士」という肩書の多さです。これは、

「自分の権利が侵害されている、あるいは侵害されそうな事態に反発・抵抗している人」

 ということで、陳情・デモ・スト・暴動などの中核にいる人々といっていいでしょう。今2回においては特に山東省の「維権人士」による大量署名が出現。すでに組織化されているのではないでしょうか。

 一方、第九次名簿では「經租房業主」が多数名を列ねています。賃貸住宅の家主さんということで、つまり分譲マンションの大家さんなのでしょうが、以前には余り見かけなかった肩書です。地域に偏りがありますから、ある程度組織化されている可能性があります。

 というより、この名簿における「經租房業主」は恐らく「維権人士」ではないかと。都市再開発か何かで賃貸用に所有していた物件が「官」の横暴によって奪われたか、奪われそうになっているか、あるいは住環境に対する「維権」で、例えばごく近所に高圧鉄塔を建てられるとか,工場を建設するとか。……などのいずれかではないでしょうか。

 ――――

 さて、発起人にごく近い筋へのインタビューなどもやってしまい、つい因縁深くなってしまった「08憲章」について私がいま言えることは、下記の通りです。



 (1)内容は素晴らしいけど非現実的。

 中国の民度では到底消化できない内容。そもそも知識人と同じレベルで「08憲章」を消化できる民度が庶民にあるなら、中国はこんなひどい国にはなっていない。

 当局は民度向上どころか、逆に愚民化政策をやっている。仮に民度向上を目指しても、一定の水準に達する前に国が潰れている可能性の方が大。

 ――――

 (2)署名する庶民と発起人レベルの知識人たちの間には意識のズレ。

 「08憲章」に署名する庶民はたぶん独裁批判や共産党批判(「08憲章」のポップな部分)に拍手しているけど、その先に三権分立とか普通選挙制とか多党制とかを見据えてはいない。いまの社会状況でそんな悠長なことを考える余裕なんてないから。いまはもう民主化なんて理想より、今日のパンを確保せんとする状況。

 デモ・スト・陳情・暴動といった「官」への抗議活動が全国各地で、しかも庶民レベルで頻発している現状は、『08憲章』がうたう「民主化への平和的な変革」の実現する可能性が極めて低いことを示唆している。

 ……要するに「08憲章」は庶民レベルでの支持が広がることによって、独り歩きする可能性がある。

 ――――

 (3)「08憲章」が独り歩きすれば発起人たちにとって不本意な結末。

 社会状況が改善することなくこのまま進めば、待っているのは流血の官民衝突や軍隊による武力弾圧、ひいては大国解体。

 いずれにしても、「大国としての存在感を保ったまま平和的に民主化」という、ムシの良すぎる未来図を描く発起人たちの望まない形に事態は展開する。

 ――――

 中国の現状に照らして言うなら、「08憲章」なんて高邁な寝言が現実世界で社会的役割を果たすとすれば、せいぜい蹶起の背中を押す檄文とか、抗議行動を展開している庶民の地域を超えた連携の端緒とか、そういう「庶民レベルでの反政府気運の盛り上がりに貢献」といった皮肉な役回りになるしかない。



 ……てなところではないかと。

 「08憲章」は中国社会の危機的状況に瀕して知識人がその責任を果たした見事な作品、ということはできますが、

「中国共産党による統治は強大で多種多様であるだけでなく、その手段も極めて巧みで手が込んでいる上に,より緻密なものになりつつある。これが『08憲章』の前に立ちはだかる現実なのだ」

 と、私がインタビューした金鐘氏(香港『開放』誌編集長)が語ってくれたように、その前途は極めて厳しいことが予想されます。

 同時に、「08憲章」が発起人たちにとっては不本意な形で民衆に受け入れられ、「大国としての存在感を保ったまま平和的に民主化」とは全く異なる、発起人たちが望んでいない展開を呼び込みかねません。

 具体的には上述したように、「流血の官民衝突や軍隊による武力弾圧、ひいては大国解体」という地獄絵図。

 ただもし大国解体となって中国がいくつかのピースに分かれるとすれば、そのうち2つか3つくらいが民主化への具体的なロードマップを描けるかも知れません。もちろん、それも実質的に国際社会の管理下に置かれつつ、ということになるでしょう。中国には核がありますから。

 ――――

 当局はどう対応するでしょうか。とりあえず、政府も「08憲章」署名者の顔ぶれの意外な広がりに困惑していると思われます。

 しかも経済危機という混乱した状況下にありますから、この機を捉えて「胡錦涛サイドvs既得権益層」のバトルが激化する可能性はあるでしょう。

 ただそれも、混乱が一定段階に達するまでの「遊び」です。

 先日紹介した胡錦涛演説が明確に示唆していたように、社会を揺るがす大規模な暴動などになれば人民解放軍を投入してでも、天安門事件のような武力弾圧を選択することは必定かと。

 この時点になると、すでに一線を越えたとの判断から、既得権益層のような政敵も胡錦涛と団結して弾圧側に回ることになります。中共一党独裁体制があるからいまの自分たちがある、という特権階級「中共人」としての自覚はあるからです。

 それでも、未だ前途不透明な社会・経済的状況の成り行きによっては、「中共人」の間で予想外の仲間割れが生じたり、安定を望む国際社会による介入があろうとも、バラけるときはバラけることになるでしょう。

 ――――

 ここにおいて、日本がやるべきことは明白です。予想される様々な「万一」に対処できるような備えと、それが必要なとき即時十分に機能し得るような法整備を急ぐことです。

 また、国際社会の対中協調行動という「万一」でも出遅れたり逆方向に走ったりすることがないような備えも不可欠。

 何はともあれ、役者は揃いつつあります。巨大な隣国での歴史劇がいよいよ本格化しそうな事態であることを、私たちはまず認識すべきかと思います。





コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 台湾のこと。 みなさん、よ... »
 
コメント
 
 
 
眠い目をこすりながら…… (おむら)
2008-12-31 02:32:48
ベトナムで仲良くなった商売人との会話をちと思い出しました。
彼は現在30歳のベトナム人。共産党幹部の息子です。
長男じゃないから、商売人(もちろん強力バックアップつき)になったという流れです。

外に何度か出てるので自国の問題を感じてるものの、変に何かすると自分の飯の種がやばくなるので、何かしたいとも思わない。それを異常だとも思わない。そんな感じです。

その子が以前私に「民主主義って、どうやるの?」と聞いてきたことがあります。そのときに、政治体制の違いというのは、簡単に覆るものではないのだなぁ~、と。明治初期の日本て、その辺どうやって展開したんでしょうね? 男子普通選挙の実現は大正までかかったわけですから、そう簡単にはいかないのでしょうけど。

私も御家人さん同様、08憲章とやらは画餅かと思います。
でも、絵でいいから描かんことには、本物の餅がどういうものかを知らない人が多すぎる。それが社会主義・共産主義国家というものなのかもしれません。

それなのに、商売は基本的に自由っていう不可思議な体制が未だに私は理解できていませんが。無理してやってるから、改革開放も、ドイモイも行き詰まったんでしょうけど。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2008-12-31 06:04:26
中共政府が多党制を導入する可能性はないでしょうか?(ガス抜き目的で)

今の中国は共産党が末端まで強大な組織を作ってますから(辺境は?ですが)多党制にしても実質的に変化ないかと。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。