ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

障害者は見た目に障害がないとダメなの?

2019年05月07日 15時09分20秒 | 障害者の自立

 

~ある発達障害者の体験から~

 障害を持っているから障害者手帳を使っただけなのに、後ろに並んでいた老人の心無い言葉に傷ついた……。こんな話がツイッターで拡散されました。

【さらに詳しい元の記事はこちら】

 「バスで料金払うときに手帳見せて障害者の料金で払ったんだけど、後ろの老人の一言でかなり落ち込みました。 自分は発達障害だから見た目は何もないんです。『最近の若者は見た目丈夫なのに嘘ついて手帳貰ってるのか。』その先は頭真っ白になって聞こ取れなかったけど悲しいですね」

 こうツイッターにつぶやいたのは、ADHDと自閉症スペクトラムを抱えている、こーたろさん。こーたろさんは、成人してから発達障害の診断を受けた、大人の発達障害当事者のひとり。子どものころから、会話の際に場の空気を読めずに突然違う話をし出したり、相手の気持ちをなかなか上手くくむことが難しかったりなど、自閉症スペクトラム特有の特性があったために、周囲から浮いてしまったり、いじめを受けてしまったりということもしばしばあったそうです。

■ 大人になって知った、自分が「発達障害」だということ

 こーたろさんが子どもだった当時は、今ほど発達障害の概念が確立されておらず、情報も少なかった時代。自閉症の概念といえば、著しく勉強ができずに自分の世界に閉じこもってしまいコミュニケーションが非常に難しい、という様なイメージだった時代。こーたろさんは、子ども時代からあった自閉症スペクトラムについて、親からも理解されず、暴言や暴行を受けて育った背景があります。

 そんなこーたろさんが発達障害の診断を受けたのは、22歳の時。はじめて入社した会社で上手く行かず2社目に転職しましたが、仕事が覚えられない、ミスが続くなどの失敗が相次いだせいもあってか、上司からの執拗なパワハラを受けうつ状態に。自殺未遂やうつ状態から、2018年5月に精神科を受診。その場で休職の診断書が出され、後日、検査した結果、ADHDと自閉症スペクトラムとの診断がおりたということです。現在も休職していますが、パワハラで受けた傷はそう簡単には癒えないようです。

■ 障害者手帳は簡単に交付されるものではない

 自閉症スペクトラムなどのいわゆる発達障害は、医師の診断書を保健所に持って手続きをとれば、精神疾患のひとつとして“精神障害者保健福祉手帳”が交付されます。一見すると簡単な手続きに見えるかもしれませんが、そもそも診断書が出るまでには、何回もの診察などが必要なため、障害者手帳の不正取得を前提にして医師を欺くのは困難。さらに診断書を出す以上は医師にも責任がともないます。医師側も患者によりそいつつ、その点は冷静な診断を行います。つまり、医師の診断書が必要という時点で、単に噓をついて交付を受けるということは困難なのです。

 障害者手帳を持つということは、自分が健常ではないということを示すこと。健常者と違って、脳の機能が違っているが故の特性であり、それは日常生活や社会生活を脅かす特性でもあり得ます。生活するにあたって障害と感じることが多くあるが故の、障害者手帳なのです。

 こーたろさんが社会的に困難を感じたことのひとつに、指示されたことが一度で覚えられずに何度も聞き返すなどした結果、相手を怒らせてしまったり、ミスが多発したりすること、一つの事に集中している時に他の要件が入ってくるとパニックになって複数のタスクを完了させることが出来なくなる、などがあります。結果、提出物をため込んで期限内に提出できないといった、仕事上での問題を多く抱えるまでに至ってしまいました。

 こうした、仕事ができない、対人関係でつまずく、などをきっかけとして抑うつ状態から発達障害に診断がつながることが最近増えてきています。これは、発達障害の特性故にまわりとの協働やコミュニケーションに困難と感じることが、二次障害的に適応障害や抑うつという状態(気分障害)を引き起こすことが多くあるためです。複数の学術文献からも、ADHDや自閉症スペクトラムと気分障害は併存すると指摘しています。

 世の中には様々なハンディキャップを抱えながら生活している人が多くいます。四肢、内臓、視聴覚、脳神経など……多くの人が、目に見えたり見えなかったりする何かを抱えて生きています。しかし、目に見えないというだけで理解されなかったり、差別的・侮蔑的な扱いを受ける人も多い現状。先述のこーたろさんのツイートには、「心の病とか見た目で判断出来ない病とかいっぱいあります。高齢の方ほど理解不足ですね」「内面の障害者は、わかりづらいですよね。私も障害者なのでよくわかります」「わからない人はわかりませんね。ASDとADHDのグレーゾーンの私も二次障害二つ、三つありますが、優先座席、ヘルプマーク、手帳、何でも使って自分の人生を歩みます」など、理解を示す声があふれています。

 また、「むしろ見た目で分からないけど辛いから手帳見せるんですけどね……」「自分も見た目では分からないけど精神2級の手帳を所持しており、バスでは見せています」「内臓疾患など見た目にはわからない人のために見せましょうよ。見た目でわかる私はタクシー乗る時につい手帳見せるの遠慮しちゃってたのですが、発達障害で手帳持ちの娘にそう言われてはっとしました」といった、認知を広めるためにも積極的に手帳を使っていくという人々の声も。こーたろさんは、自身の特性に対し、スケジュール帳、家のカレンダー、携帯のカレンダー機能を活用し、遅刻対策として、タイマーを出発時間の5時間前から一時間刻みでセットして、最後は出発時間15分前に鳴らすようにしているそうです。また「心がけてる事は、自分が間違ったことをした場合は素直に謝るようにしてます」と、自身の特性故に周囲とぶつかりやすいことを意識して行動している様子。

■ 障害者手帳は生きるための助け

 福祉は高齢者や障害が見た目でわかる人だけのものではありません。筆者の娘も、発達障害で手帳持ち。筆者が住む自治体では、市が運営している交通機関を福祉乗車券を利用すると無料で乗ることができるため、手帳を申請したときに福祉乗車券も発行してもらいました。おかげで、いじめや不登校など、“見えない心の傷”を負っていても、自発的に外出することができるようになりました。また、手帳を持っているおかげで、公共施設の利用料の減免などが受けられるので、積極的に見聞を広めに足を運べるようにもなりました。にぎやかなところに自主的に出ることで、発達障害者にありがちな聴覚過敏も少しずつ自分の限度を分かるようになってきました。

 こうした、各種障害者手帳は、当事者の日常生活の助けになるほか、その人がその人らしく生きるための助けにもなります。障害者手帳というものは、見える・見えないにかかわらず、何かしらのハンディキャップを背負っているから持つ事ができる、特別なものです。目が悪い人のための眼鏡や、耳が遠い人の補聴器などと同じ、その人自身をささえるためのもの。眼鏡や補聴器、杖などと同じ感覚で使えるくらい、理解が広まって欲しいと、筆者は強く思います。

<参考> 気分障害と発達障害, および米国における成人発達障害の取り組み (合同シンポジウム: 成人期の発達障害と心身医療, 2009 年, 第 1 回日本心身医学 5 学会合同集会 (東京))(PDF) 障害者施策 - 内閣府 他

<記事化協力> こーたろさん(@xXiKmo6unbH0rr8)


障害者らを独自に受け入れ 熊本地震、大学の奮闘45日

2019年05月07日 14時52分27秒 | 障害者の自立

 熊本地震で被災した障害者や高齢者らを受け入れた避難所の記録を紹介する企画展が東京都港区芝2丁目の都人権プラザで開かれている。熊本学園大学(熊本市)が、障害者ら約60人を含む被災者750人を受け入れた45日間の取り組みだ。当時の避難所の様子が分かる写真パネルや、資料など43点を展示している。

 2016年4月の熊本地震では震度7を2回記録。同大は指定避難所ではなかったが、14日の最初の地震直後から住民が集まり始めたため、校舎を開放、教職員や学生らが独自の避難所を運営した。

 災害時に障害者や高齢者を受け入れることになっていた市内の福祉避難所が十分に機能しない中で、福祉教育に力を入れていた同大は障害者や高齢者を、健常者と同様に受け入れ、5月28日に閉鎖するまで24時間態勢で見守った。

 学内外の医師や看護師らのチームが、体調を崩した避難者の情報を共有するために書いたメモから、緊迫した状況が伝わってくる。91歳の女性の4月18日の項。「日赤へ救急(搬送した患者)の家族がもどってきて報告あり。MRIにて脳腫瘍(しゅよう)の疑いと古いInfarction〈梗塞(こうそく)〉あり、入院となった」

 同大卒業生の福祉関係者らが、要介護2で一人暮らしをしていた避難者から聞き取った記録には、「たき出し ないと困る。足が不自由なので(食料を)買いにいけない」という切実な声が記されている。

 写真パネルは、一般の避難所のトイレが使いづらくて同大に移ってきた車いすの人たち、ボランティアの美容師に髪を整えてもらい、ほほえむ車いすの女性、炊き出しに初めて挑戦する学生の様子などを伝える。学生が体験を振り返って語る映像も流れる。企画展「熊本震災と障害者を受け入れた避難所 熊本学園大学・激動の45日」を担当した都人権啓発センターの林勝一さんは「災害時に障害者や高齢者の人権を守ることを、普段から考える必要がある。熊本学園大の取り組みに学ぶべきではないか」と話す。

 11日午後1時半から、避難所運営にかかわった同大の花田昌宣教授らが「人権を保障するインクルーシブ(包括的)な避難所とは」と題して講演する。定員80人。講演、企画展とも無料。問い合わせは都人権プラザ(03・6722・0123)へ。企画展は6月29日まで(日曜休館)。

写真・図版 

大学の取り組みを資料の実物や写真パネル、映像で紹介する企画展

2019年5月6日        朝日新聞


障害者は見た目に障害がないとダメなの? ~ある発達障害者の体験から~

2019年05月07日 14時30分56秒 | 障害者の自立

 「バスで料金払うときに手帳見せて障害者の料金で払ったんだけど、後ろの老人の一言でかなり落ち込みました。 自分は発達障害だから見た目は何もないんです。『最近の若者は見た目丈夫なのに嘘ついて手帳貰ってるのか。』その先は頭真っ白になって聞こ取れなかったけど悲しいですね」

 こうツイッターにつぶやいたのは、ADHDと自閉症スペクトラムを抱えている、こーたろさん。こーたろさんは、成人してから発達障害の診断を受けた、大人の発達障害当事者のひとり。子どものころから、会話の際に場の空気を読めずに突然違う話をし出したり、相手の気持ちをなかなか上手くくむことが難しかったりなど、自閉症スペクトラム特有の特性があったために、周囲から浮いてしまったり、いじめを受けてしまったりということもしばしばあったそうです。

■ 大人になって知った、自分が「発達障害」だということ

 こーたろさんが子どもだった当時は、今ほど発達障害の概念が確立されておらず、情報も少なかった時代。自閉症の概念といえば、著しく勉強ができずに自分の世界に閉じこもってしまいコミュニケーションが非常に難しい、という様なイメージだった時代。こーたろさんは、子ども時代からあった自閉症スペクトラムについて、親からも理解されず、暴言や暴行を受けて育った背景があります。

 そんなこーたろさんが発達障害の診断を受けたのは、22歳の時。はじめて入社した会社で上手く行かず2社目に転職しましたが、仕事が覚えられない、ミスが続くなどの失敗が相次いだせいもあってか、上司からの執拗なパワハラを受けうつ状態に。自殺未遂やうつ状態から、2018年5月に精神科を受診。その場で休職の診断書が出され、後日、検査した結果、ADHDと自閉症スペクトラムとの診断がおりたということです。現在も休職していますが、パワハラで受けた傷はそう簡単には癒えないようです。

■ 障害者手帳は簡単に交付されるものではない

 自閉症スペクトラムなどのいわゆる発達障害は、医師の診断書を保健所に持って手続きをとれば、精神疾患のひとつとして“精神障害者保健福祉手帳”が交付されます。一見すると簡単な手続きに見えるかもしれませんが、そもそも診断書が出るまでには、何回もの診察などが必要なため、障害者手帳の不正取得を前提にして医師を欺くのは困難。さらに診断書を出す以上は医師にも責任がともないます。医師側も患者によりそいつつ、その点は冷静な診断を行います。つまり、医師の診断書が必要という時点で、単に噓をついて交付を受けるということは困難なのです。

 障害者手帳を持つということは、自分が健常ではないということを示すこと。健常者と違って、脳の機能が違っているが故の特性であり、それは日常生活や社会生活を脅かす特性でもあり得ます。生活するにあたって障害と感じることが多くあるが故の、障害者手帳なのです。

 こーたろさんが社会的に困難を感じたことのひとつに、指示されたことが一度で覚えられずに何度も聞き返すなどした結果、相手を怒らせてしまったり、ミスが多発したりすること、一つの事に集中している時に他の要件が入ってくるとパニックになって複数のタスクを完了させることが出来なくなる、などがあります。結果、提出物をため込んで期限内に提出できないといった、仕事上での問題を多く抱えるまでに至ってしまいました。

 こうした、仕事ができない、対人関係でつまずく、などをきっかけとして抑うつ状態から発達障害に診断がつながることが最近増えてきています。これは、発達障害の特性故にまわりとの協働やコミュニケーションに困難と感じることが、二次障害的に適応障害や抑うつという状態(気分障害)を引き起こすことが多くあるためです。複数の学術文献からも、ADHDや自閉症スペクトラムと気分障害は併存すると指摘しています。

 世の中には様々なハンディキャップを抱えながら生活している人が多くいます。四肢、内臓、視聴覚、脳神経など……多くの人が、目に見えたり見えなかったりする何かを抱えて生きています。しかし、目に見えないというだけで理解されなかったり、差別的・侮蔑的な扱いを受ける人も多い現状。先述のこーたろさんのツイートには、「心の病とか見た目で判断出来ない病とかいっぱいあります。高齢の方ほど理解不足ですね」「内面の障害者は、わかりづらいですよね。私も障害者なのでよくわかります」「わからない人はわかりませんね。ASDとADHDのグレーゾーンの私も二次障害二つ、三つありますが、優先座席、ヘルプマーク、手帳、何でも使って自分の人生を歩みます」など、理解を示す声があふれています。

 また、「むしろ見た目で分からないけど辛いから手帳見せるんですけどね……」「自分も見た目では分からないけど精神2級の手帳を所持しており、バスでは見せています」「内臓疾患など見た目にはわからない人のために見せましょうよ。見た目でわかる私はタクシー乗る時につい手帳見せるの遠慮しちゃってたのですが、発達障害で手帳持ちの娘にそう言われてはっとしました」といった、認知を広めるためにも積極的に手帳を使っていくという人々の声も。こーたろさんは、自身の特性に対し、スケジュール帳、家のカレンダー、携帯のカレンダー機能を活用し、遅刻対策として、タイマーを出発時間の5時間前から一時間刻みでセットして、最後は出発時間15分前に鳴らすようにしているそうです。また「心がけてる事は、自分が間違ったことをした場合は素直に謝るようにしてます」と、自身の特性故に周囲とぶつかりやすいことを意識して行動している様子。

  2019/5/6        おたくま経済新聞


かほくに歌声 届けたい 高齢者、障害者、園児にも

2019年05月07日 14時17分40秒 | 障害者の自立

金沢の声楽家ら 活動2年目

 金沢市在住の声楽家らのグループが昨年から、主にかほく市内で歌声を届ける活動を続けている。かほく市の高松少年少女合唱団の桜井晴美代表が企画する音楽プロジェクトの一環。十一月には、かほく市高松産業文化センターで無料コンサートを行い、観客とともにプロジェクトのテーマ曲をCDに収録する。(島崎勝弘)

 グループのメンバーは、声楽家の安藤明根(あかね)さんと吉内晶(あき)さん、かほく市出身のピアニスト吉田珠美さん。日ごろコンサートに足を運びづらい人たちの元に出向いて音楽を聴いてもらおうという桜井さんの趣旨に賛同し、これまで五回開催してきた。

 かほく市内の海岸に自生するハマボウフウにちなみ、「かほく浜防風プロジェクト」と名付け、三人も英語でハマボウフウを意味する「リトラリス」をグループ名にする。オリジナルのテーマ曲「砂に震えて」は桜井さんが作詞。ただただ生き延びておくれ…などと、あるがままに生きる願いが込めらている。作曲は合唱団のピアノ奏者の山口美和さんが担当した。

 歌声を届けた過去五回の対象者は障害者や幼稚園児、高齢者など。各回とも三人で曲目を選んで練習を重ねた。

 四月二十七日には、かほく市に隣接する宝達志水町の特別養護老人ホームでは童謡とともに「上を向いて歩こう」や「川の流れのように」を披露した。三人とも普段のコンサートよりも聴衆の反応がより直接伝わってくることを喜んでいる。安藤さんは「『砂に震えて』は本当に良い曲。大勢の人に聴いてほしい」と話している。

大型連休初日に特別養護老人ホームで歌声を披露したリトラリスの皆さん(前列の3人)

2019年5月6日           中日新聞


成年後見、自治体が申請 都道府県で最大6倍差

2019年05月07日 13時57分30秒 | 障害者の自立

 認知症や知的障害などで判断力が不十分な人の財産管理や生活を支援する成年後見を巡り、親族らに代わって市区町村長が二〇一七年度に利用を申し立てた件数は、人口当たりで比べると、都道府県間で最大約六倍の差があることが厚生労働省の調査を基にした分析で分かった。

 申し立てが適切に行われていない自治体では、独居の高齢者らが消費者被害に遭ったり、福祉サービスを利用できていなかったりする恐れがある。政府は権利擁護の観点から成年後見の利用を促しているが、自治体による取り組みの差をどう埋めるかが課題になりそうだ。

 成年後見は家庭裁判所に利用を申し立てる。親族が申立人になることが多いが、身寄りがなかったり親族が虐待したりしている場合、首長が申し立てることができる。

 厚労省調査は、全千七百四十一市区町村について一七年度の首長申し立ての件数を調べた。全国で七千三百三十六件あり、対象者は84%が高齢者、残りが知的・精神障害者だった。

 これを基に共同通信が総務省の人口推計などを使って都道府県別に高齢者と知的・精神障害者計十万人当たりの件数を算出すると、宮崎県が最多で四三・〇件。次いで岡山県(四二・四件)、東京都(三七・三件)と続いた。最も少ない栃木県(六・八件)と最多の宮崎県では六倍強の差があった。

 全体の43%に当たる七百四十一自治体では件数がゼロだった。申し立てが低調な理由には、制度に関する職員の知識不足や、自治体側の手間、費用負担が生じることがあるとみられる。

◆活用すればメリット

<成年後見に詳しい上山泰・新潟大教授の話> 首長申し立ては同じ都道府県内でも市区町村によって差があると思うが、平均値で約6倍も開きがあるのは、合理的な理由があるとは思えない。「そういうニーズはない」と言う自治体もあるが、支援すべき人の存在に単に気付いていない可能性も高い。親族の有無の調査などが必要なため、手間がかかることが職員の心理的なハードルになっている。ただ、うまく活用すれば、家族による虐待の防止や、生活困窮者が地域で暮らせる共生社会づくりの手段になる。そうしたメリットがあることを知ってほしい。

<成年後見> 認知症や知的・精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり弁護士や司法書士、親族らが預貯金の管理や福祉サービスの手続きなどを支援する制度。2000年に導入され、利用者は18年末時点で約21万8000人。家庭裁判所が申し立てを受け後見人を選任する。弁護士ら専門職の場合は利用者が月数万円の報酬を支払うのが一般的。身寄りのない単身高齢者の増加に伴い、市区町村の首長申し立ては年々増えており、18年には利用が決まった件数全体の21%を占めた。

2019年5月6日         東京新聞