聴覚や視覚、小人症などさまざまな障害を持つ俳優が出演するミュージカルが今月下旬、東京都豊島区で上演される。2020年の東京パラリンピックを控え、障害者スポーツに光が当たる中、将来の夢は障害を抱える俳優が集まった劇団作り。主宰する聴覚障害者の女性は「新しいスタイルの演劇で芸術面でも革命を起こせたら」と意気込む。
「声のボリュームを落とす代わりに体で表現して」。同区内であった10月下旬の稽古(けいこ)で、演出家の野崎美子さんがてきぱきと指示を出した。そのそばには手話通訳者。声が聞こえない俳優もいるからだ。
プロデューサーは聴覚障害者の女優、大橋ひろえさん(46)。05年から「サインアートプロジェクト・アジアン」代表として、聴覚障害がある人とない人が一緒に演じる劇に取り組み、「音が聞こえない人も舞台で活躍できる」とのメッセージを発信してきた。今回の演目はシェークスピア原作のミュージカル「夏の夜の夢」。聴覚だけでなくさまざまな障害者が演じる舞台を初めて手がける。
出演者約25人のうち障害者は、点字の台本でせりふを覚える視覚障害者のウォルフィー佐野さん(46)ら7人。小人症の野澤健さん(33)は車いすで踊るといい、「観客が驚くような演出もある」と笑う。
大橋さんは「パラリンピックで障害者にスポットライトが当たると思うが、大事なのは終わった後」と話し、今回のような舞台が演劇界に影響を与えていくことを期待する。
上演は22~26日、「あうるすぽっと(区立舞台芸術交流センター)」で、チケットは一般5000円(前売り4500円)、シニア・学生4000円(同3500円)。聴覚障害者も楽しめるよう字幕や手話を取り入れ、視覚障害者向けのサポートもある。問い合わせは制作会社(03・5912・0840=平日11~18時)。
本番に向け、稽古に取り組む俳優たち
毎日新聞 2017年11月8日