県内の公営住宅で、障害者や高齢者の低層階への住み替えが進んでいない。多くの自治体が住み替えを認めているが、近年は高齢者や障害者の新規入居希望者が多いため、公平性確保のため住み替え希望の人も高倍率の抽選に申し込まざるを得ない。エレベーター設置など抜本対策は進んでおらず、共生社会の理想と現実のはざまで「1階に住みたい」というささやかな願いは宙に浮いたままだ。
「公平性は大事だが、一人一人の事情に配慮してほしい」。盛岡市西見前の市営住宅4階の自室で、無職女性(59)は訴える。33年前の入居時は健康そのものだったが、約20年前、脳卒中で右半身が不自由になった。子どもの独立後は1人で暮らしている。
同住宅にエレベーターは無く、階段を片道5分かけて上っている。買い物や通院に欠かせない電動車いすを充電する時には、重さ4キロの延長コードを左手の指2本で支え、残りの指で手すりをつかんで4階と1階を往復。疲労が募り、転倒の不安も絶えない。
貝塚さんは8年前から、都南地区などで1階の空き部屋が出るたびに18回応募を繰り返しているが、全て落選した。民営住宅への転居も試みたが、家賃などが折り合わない。
【写真=左手で延長コードと手すりをつかみ、慎重に階段を下りる女性。「入居者一人一人に応じた配慮を」と訴える=盛岡市西見前】
(2017/01/08) 47NEWS