厚生労働省などの2014年の調査によると、65歳未満で発症した若年性認知症の人で、発症時就労していた人の約8割が、自主退職や解雇によって、職を失っていた。退職後の再雇用には壁も多く、国は障害者の雇用促進制度を活用した就労継続支援を掲げるが、認知症の特性と合わないケースも。作業所などで働く人も増えてはいるが、まだ広がっていない。
若年性認知症の発症は平均51・3歳とされる。調査は15府県の2129人が回答。就労経験があると確認できた1411人のうち、71%が定年前に自ら退職し、8%が解雇されていた。労働時間の短縮や配置転換などの配慮が全くなかったとの回答もあり、職場の理解や支援が得にくい中、仕事を辞めざるを得ない姿が浮かび上がる。
患者が障害者手帳を取得すれば、企業の障害者雇用枠で働いたり、作業所を利用したりできるほか、企業が設備整備の助成金を得られる。だが、制度自体が知られていないことや本人らの抵抗感もあり、同調査によると手帳の申請は全体の4割にとどまる。
国は、福祉や雇用の制度利用を促すため、17年度末までに全都道府県に1人の支援コーディネーター配置を進めている。兵庫県では13年から配置しているが、関係者は「障害者採用も、40歳以上になるとがくんと減る」と指摘。新しい職場に慣れるまでのストレスで進行してしまう恐れもあり、「よほど理解がある事業所でない限り、再就職はなかなか難しい」と打ち明ける。
元の職場で働き続ける場合でも、精神障害者保健福祉手帳の申請は初診日から6カ月以上経過しなければならず、県内のある事業者は「経営的にも人員的にも余裕がなく、その間に症状が進むこともある。待っていられない」と不満を漏らす。
円滑な就労をサポートする「ジョブコーチ」の派遣制度もあるが、県内の依頼は15、16年度のいずれも1件だった。別の関係者は「認知症は次第に症状が進むため、働き始めるときだけでなく、支援者の配置や医療機関との連携など、職場や本人への継続的な支援が必要になってくる」と訴える。「一方でやむなく退職したり、症状が進行したりした場合には、作業所など福祉的就労も選択肢の一つでは」と話している。
2017/1/9 神戸新聞NEXT