大阪府工賃向上計画支援事業を受託する一般社団法人エル・チャレンジ福祉事業振興機構が、今月から工賃向上研究会をスタートする。同機構が進める賃金向上プロジェクトの一環で、障害者らが働く就労継続支援B型事業所の工賃向上を目指し、各事業所の担当者と議論を深め、事業所間の交流と課題や情報の共有化を図る。
治具(作業効率を上げる小道具やアイデア)と店舗経営(商品配列やPOP表示など)、販促(商品チラシの作成)の三つの研究会で、5~6回にわたって開く。
これまでにも、ビジネスマナーや事業計画づくりなどのセミナーが開かれてきたが、いずれも単発で、参加した一部担当者への効果だけで具体的な成果の波及が小幅にとどまるのが実情だったが、今回の研究会では「実践的な成果を得られる形にしたい」と同機構の担当者は話す。
このため、参加型の姿勢を重視し、参加者の創意工夫を促す形で進めることにしており、販促研究会ではパソコンの専門家やデザイナーを招いて商品チラシを作成するなど、実際に帰ってすぐに役に立つ具体的成果の習得を目指す。
また、研究会を通じて他の事業所の担当者らと議論や交流を深めることで、研究会終了後も情報交換し合えるようなネットワークづくりも視野に入れる。
さらに同機構では「研究会の成果を出席した担当者だけでなく各事業所で共有してもらえるように、マニュアル化するように工夫したい」と話している。
大阪府では、就労継続支援B型事業所に従事する障害者の2011年度の月額平均工賃は9761円。07年から府が取り組んできた「工賃倍増5カ年計画」の成果もあり、06年度の7990円に比べて22・2%増加したが、11年度の調査で現状の工賃に「満足」とする意見は12・3%で、50・9%が「やや不満」26・7%が「大いに不満」と回答している。
工賃向上プロジェクトでは、経営コンサルタントや技術指導者、企業OBの販路コーディネーターなどを派遣し経営力アップもサポートする。販路サポーターの新規企業開拓などで、年間約5千万円の販路を各事業所に供給する実績を挙げている。
しかし、06年に府内の4千社を対象に実施した調査では、作業所の存在を知る企業はわずか12・6%にとどまるなど、一般企業などの作業所への理解や協力はまだまだ必要なのが現状。同機構の担当者は「もっと多くの企業にこうした事業所の存在と取り組みを知ってもらいたい」と話している。
2010年に開かれたセミナー。研究会ではさらに参加者の創意工夫を促し、実践的な成果を目指す
大阪日日新聞- 2012年10月9日