風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

厄介叔父とチーズ

2018-07-27 10:51:11 | 昭和つれづれ

                       

        父の姉である伯母と、弟である叔父がいる。

     戦後復員してきた叔父はしばらく我が家の居候になっていた。

    その居候先の我が家へ伯母が訪ねて来た。

    深刻な食糧難時代である、お茶一杯、芋一本が貴重品で、

     いつも誰もがお腹をすかせていた時代である。

    外地から引きあげてきた弟を案じた伯母が、

  どこで手にいれたものか、貴重なチーズ持参で会いにきた。

 母にこれを手渡すとき、「シュクに食べさせてちょうだい」と言ったので、

     母がカチンと来た。

たださえやりくりが大変で、我が子にさえひもじい思いをさせながらの叔父の居候である。

あなたも大変ね、少しだけど、みんなで分けて食べて頂戴……とでもいうのが、

母の期待した挨拶であったろう。

シュクに食べさせてと言われたのがよほど腹がたったらしい。

ずっと、根に持って、後々私たちが成人したあともなにかのときにはこれを聞かされた。

衣食足りて礼節を知るというが、いまどきの飽食の時代なら、

 なあんだ、チーズかあ、叔父さんチーズ好きなの、で済んだ話であろう。

コメント
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