風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

先生

2018-07-19 22:09:41 | 昭和つれづれ

                   

 小学校入学以来、高校卒業までいったい何人の先生方と出逢っただろう。

思い出に残る何人かの先生はいても、生涯最後まで付き合えたのは、

小学四年5年で受け持ちの野口先生だけである。

 付き合うと言っても、転校したあと、何度か先生のお宅まで遊びにいったり、

先生が我が家まで来て下さったことはあっても、わたしが中学生くらいまでのことで、

その後は年賀状だけのお付き合いになった。

 長くなると、賀詞のほかは、お元気で、というようなことだけが書かれたやりとりになったが、

それでも互いに何度かの引っ越しのときは転居先が分かり、わたしが結婚したら姓が代わり、

先生が定年になったら知らされ、会うことはなくても、懐かしい人であった。

 最後は、年末のある日、息子さんが差し出し人の封書の中に先生の手書きの葉書が入ったものが届いた。

 癌と分かったあと、

積極的な治療は受けずにいるので、まもなく皆さんとお別れすることになるでしょう、

葬儀も供花もいっさい頂くつもりはなく、ただこれまでのご交誼をときどき思いだしていただけたら

それがなにより。ありがとうございました。

 とあった。死亡日時だけはご本人でなく、息子さんの字で書き加えられていた。

 

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