風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

見送り

2011-08-22 16:08:54 | 俳句、川柳、エッセイ
   夏休みも残り少なくなった。
  お盆を中心に、帰省ラッシュの風景はテレビでも度々映しだされた。
  新幹線の中から、ホームのジジババに泣きながら手を振る幼児の姿があった。

   存分に甘えたジジババとの別れを惜しむ幼い泣き顔は実に愛らしかった。
  こんな小さな子供にある別れの胸のうちとはどんなものだろうかと思った。

   駅から列車が離れる瞬間は子供でなくても物哀しい。

   しかし、同じ別れでも、飛行機の搭乗口へ見送る際の別れは情緒がない。
  手荷物をトレーに入れて、ショルダーバックを肩から外して、
  ペットボトルはないですかと問われ、係員に急かされ、あそこではまず泣けない。

   新幹線のホームでは、ピーと笛が鳴り、スルスルと車体が走り出すから泣けるのである。

   昔の列車は、走り出す速度がもっとずっとゆっくりだった。
  だから見送る方はホームを走って列車のあとを追い、列車の窓から身を乗り出してはハンカチを振り、
  今よりいっそうみんな涙もろかったような気がするけどどうだろうか。