風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

甥の来訪

2011-08-15 09:56:51 | 時事
   東京の甥っこが、職場の夏休みを利用して福岡の我が家へ来た。

  風子ばあさん自慢の海辺へ案内すると、彼はしみじみ言った。
 「いいですねえ」
 「素晴らしい眺めでしょ」

   一瞬、彼はきょとんとした顔でこちらを見た。
  それから、あわてたように、まったく……と頷いた。

   しばらく話していて、わかったのだが、
  彼の本意は、海より山より美味より、なにより、
  東京を離れることがこんなに解放感があるとは思わなかったというのである。

   手元のスマートフォンで各地の放射能情報を睨みながら、
  九州なら、大丈夫、と彼は安堵のため息をついたのだ。

   首都圏に住む彼らは、口に出さねども、
  みな見えない放射能に怯え疑心暗鬼を抱えて暮らしているというのだ。

   さっき、新幹線で博多駅についたとき、
  あ、ここは大丈夫ってそのほっとした思いを、おばさんたちにわかりますか?

   原発の罪は重い。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする