ひまわり博士のウンチク

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映画「青春の門」(1975年)

2012年11月12日 | 映画
Seishun_no_mon
 
 映画『北のカナリヤたち』公開に関連して、日本映画専門チャンネルではこのところ吉永小百合の出演作が多数放送されている。
 今週は毎朝9時から『青春の門』を放映。
 劇場公開当時に一度観ただけなので、37年ぶり。一部を除いてまったくと言っていいくらい記憶にない。すごい映画だったという感動だけは残っている。
 
 青春の門(筑豊編)は何度も映画化、ドラマ化されているが、この1975年版がやはり代表作だろう。なんといってもキャストがすごい。
 
伊吹信介 - 浦山春彦(3歳時)/松田剣(6歳時)/田鍋友啓(10歳時)/田中健
伊吹重蔵 - 仲代達矢
伊吹タエ - 吉永小百合
牧織江 - 山崎理絵(少女時代)/大竹しのぶ
塙竜五郎 - 小林旭
長太 - 辻萬長
セキ - 小林トシ江
梓旗江 - 関根恵子
矢部虎 - 藤田進
金山朱烈 - 河原崎長一郎
朴 - 井川比佐志
早竹先生 - 加藤武
小島労務 - 藤岡重慶
炭鉱主 - 藤岡琢也
平吉/語り手 - 小沢昭一
 
 監督は『キューポラのある町』の浦山桐郎。生涯10作品しか撮らなかった監督の、代表作の一つである。
 
 この映画で吉永小百合は、顔をドロドロにして筑豊炭坑の坑婦を演じ、坑内でのセックスシーンもある。(それでもこの人、きれいだから困る)
 このとき吉永小百合は30歳、清純派から完全に吹っ切れた。
 織江役の大竹しのぶは、この映画で大ブレイク、大女優の道を一気に駆け上る。
 米兵を恋人に持つ学校の先生、梓旗江役の関根恵子(現・高橋恵子)はデビュー当時ポスト吉永小百合と期待されたが、脱ぎっぷりの良さやその後のスキャンダルからダーティーなイメージがつきまとい、吉永小百合を超えることはできなかった。この映画でも惜しげもなく裸体をさらしてベッドシーンを演じる。
 この映画の親切なのは、小沢昭一のナレーションで実写映像とともに時代背景が説明されていることだ。敗戦から、そしてまもなく朝鮮戦争。日本の基地から飛び立つ米軍爆撃機なども描かれる。実は、作者の五木寛之は自身の自伝的小説を通して、現代史を描いている。だから大変重要なシチュエーションなのだけれど、映画やドラマではそれが縮小される。
 この朝鮮特需で、日本は重工業が復活し爆発的な好景気(神武景気)となり、高度経済成長の力となっていく。
 しかし反面、好景気に取り残された人々の、暗い生活も見逃していない。教養のない織江は生きていくために、キャバレーのホステスになる。そこでは朝鮮特需で成り上がった男たちが、札をまき散らしていた。精一杯生きようとする女たちが、彼等の周辺に群がる。高度成長とともに、格差も拡大した時代である。
 
 現在では様々な批判や圧力で表現しにくい部分を含む映画である。また、ドラマ作りの古さも否めないので、若いファンには馴染めないかも知れないが、必見の価値はある。
 なにしろ長い。3時間強の上映時間の途中には休憩も入る。しかし、時間を作って一気に観ることをお勧めしたい。
 
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