『この世界の片隅に』がキネマ旬報の2016年ベストテンの1位になった。
2位が『シン・ゴジラ』で『リップヴァンウィンクルの花嫁』も6位に入っている。
僕が昨年、高く評価した映画が3本ランクインした。
一般の映画ファンは不思議に思うかもしれないが『君の名は。』はランクインしなかった。
選出者がへそ曲がりだからではない、内容で評価すれば、この順位はまったく妥当だ。
まあ、『シン・ゴジラ』が1位でもおかしくなかったと思うけれど。
「キネマ旬報」は、月2回(上旬下旬)発行の、日本で最も古い映画雑誌である。さらに、キネマ旬報ベスト・テンは世界最古クラスの映画賞でもある。
発足当時(1924年)は外国映画が対象で、まだ発展途上にあった日本の映画は評価の対象にならなかった。
日本映画の賞が設けられたのは、それから2年後のことである。
そして、20016年のキネマ旬報ベストテンは、第90回になる。
第1位にアニメが選ばれたのは、『となりのトトロ』以来で28年ぶり。日本のアニメで僕が最も高く評価したい宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』は2001年の第3位。
今回ランクインした中で、7位の『湯を沸かすほどの熱い愛』、10位の『怒り』も観たかったのだけれど、多忙にかまけてスルーしてしまった。DVDかCSで観るしかない。
ところで、かすりもしなかった『君の名は。』だが、ファンは納得していないらしい。
「意図的に除外された」とか、「選考基準がおかしい」などの批判がネットに溢れているけれど、これは選考基準が人気や興行収入よりも、内容重視で選ばれるためだから、批判は見当はずれである。見てくればかりで中味がすっからかんの映画がランクインするはずなどない。
選考委員は120人前後で、映画評論家や新聞記者、映画雑誌編集者など、毎年数百本の映画を観ている人たちである。
それぞれが1位から10位までを選ぶ投票制なので、他の映画賞のように会議ではないから、他人の意見に左右されることがない。
だから、「意図的に外す」などということはあり得ないのだ。
すなわち、映画をよく知っている人たちが個人の基準で選ぶので、マスコミの勢いや興行収入はほとんど選考基準にならない。
1位になった作品は、今後、世界中で上映される。片渕須直監督は、世界中を飛び回って忙しくなる。そのための費用もクラウドファンディングだそうだ。
すでに結構な金額が集まっていると聞く。ミーハー好みの『君の名は。』ではそうはいかないかも。