monologue
夜明けに向けて
 



アルバム「ホテル・カリフォルニア」からは先行シングルとしてまず「ニュー・キッド・イン・タウン」 がリリースされてヒットしていた。「ニュー・キッド・イン・タウン」はフミオのことね、とこの曲は奥さんのお気に入りだった。翌年にはヒットチャートのトップグループに入るほどになった。ところが第二弾シングルとして「ホテル・カリフォルニア」がラジオから流れ始めると奥さんの表情が曇るようになった。聴くのをいやがるのだ。なぜかわからなかった。「わたしは、こんなところ来たくなかった。ニュー・ヨークは良かった。窓から外を見てるだけでも毎日なにかがあって楽しかった。ここにはなにもない」と嘆き出す。こんなに素敵な所、という歌詞の内容に反発を感じているらしい。そういえば近所づき合いはないし、ゴミを外に出すときにも人に見られるのを嫌がる。「カリフォルニアは嫌いなの。ニュー・ヨークに帰りたい」と訴える。それを毎日ベッドルームで夫に言い続けているらしかった。「今度、ワシントンにハズバンドが仕事見つけに行くの。ここ以外で暮らしたいから頼んだの。あなたに壁を塗ってもらうのはこの家をきれいにして高く売るためなのよ。親に援助してもらって25万ドルで買ったの」。意外だった。カリフォルニアが嫌いとは…。そのうちに本当に夫は車でワシントンに仕事探しに出かけていった。病院巡りをしているらしくなかなか帰ってこない。この家には長くいられないらしいと感じた。
fumio


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