自民党が圧勝するとは予測していたものの、実際ここまでとは思わなかった。
むしろ民主党が墓穴を掘ったというのが正しいであろう。
自民党が臥薪嘗胆の想いで、野に下りつつも、修練を怠らず、民の声を聴き、勉学に勤しみ
政治家としての大切な資質だといわれる「情熱」「責任感」「判断力」という刀を、日々研いでいたとは到底思えないからである。
この政治家としての三つの資質とは、マックス・ウェバーの「職業としての政治」という著書で述べられているもので、政治というのは堅い岩盤に力を込めて穴をほがす仕事」と論破しているのだ。
政治権力に就いたとしても、上から命令するだけでは物事は簡単には動かないということである。
それは、人心を掌握して少しづつ前に進んでいくという実に根気と辛抱のいる仕事なんである。
民主党の失敗は実はここにあるのだと思う。
高い理想を掲げたのはいいが、それを実行していく政治や行政を動かすノウハウがなかった。
政権基盤が固まらぬうちから党内を二分する権力闘争を繰り返したのだから、呆れてモノガ言えぬのである。
政権公約に謳われた公務員制度改革や天下り廃止など、霞が関の官僚が一番嫌ういわば本丸に切り込もうとするのだから、単なる理想論に終わってしまうのも、むべなるかなであろう。
政権にパワーをもたらす同志を意見の合わないとみるや、党内から追い出してしまうのだから、野田さんの宰相としての器も疑われるところであった。
いわば、自分で弱体化と惨敗の道筋をつけたという、バカ正直な首相である。
バカ正直で通用狩るのは宗教や芸術の世界である。
政治には国家百年の大計に代表される戦略と冷静な判断力が必要なのだ。
こんな人間力学が理解できないような人を党首に据えた民主党員も同罪ということになる。
政権公約に書いてなかった上に国民の痩せ細った懐を直撃する消費税増税や、農業者には死活問題としか映らないTPP協定などは先行しすぎる位に踏み出し、
ガソリン税の軽減や高速道路の無料化、高齢者医療制度の廃止などの財源を必要とするものは何一つ実現しなかったのだから、国民からソッポを向かれるのも仕方がない。
野田内閣は、いわば財務省からコントロールされた傀儡政権であったということである。
しかもその財務省からも最後は捨てられたということか・・・・。
自民党時代の歴代の宰相が陽明学の大家「安岡正篤」先生の講義を受けていたというのは、かなり有名な話である。
そこで深く香り高い帝王学の薫陶に授かったというのだ。
平たく言えばリーダーシップ論を学んだということであるが、今となっては前世の遺物と化した、民主党時代の三人の宰相に、この帝王学を修めたお方が一人でもいらしたら、こんな惨めな体たらくには陥ることはなかったであろう。
しかし、我が国の政党政治、議会制民主主義の活性化のためには、しっかりとした野党の存在が不可欠であることから、民主党にはもう一度、一から積み上げ直して頑張って貰いたいものである。
捲土重来を期して、民の声に素直に耳を傾けるための本当の試練だと受け止めて、原点に却って出直して貰いたいものだ。
さて、安倍さん、臥薪嘗胆の三年半の間に、古い自民党が抱え込んでいた公共工事依存型の利権政治や派閥政治が改められているか、国民は黙って観ている。
もし、旧態然とした政治体質が改められていないとなると、今度は自民党が民主党のコピーとなるであろう。
当面は、くれぐれもお友達内閣とならぬように祈るばかりである。