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解雇解決金制度は、新規雇用に有利か?

2016年03月14日 20時34分14秒 | Weblog
 解雇解決金制度とは何か? 解雇紛争解決の迅速化のため、とか、労働者保護のため、とかとか、いろんな見方がある。

 「解雇解決金制度」が導入されれば、労働者を解雇するのが簡単になる、と思われる。
これは、使用者・企業経営者に有利な制度なのか? と考えると、そうとも言えない。


 日本では、若年労働者(特にオフィスワーカー)が、比較的安い給料で働いている。彼らは安い給料だけで十分だとは思っていない。彼らが期待しているのは、日本的な安定雇用・長期的なキャリア形成、継続的な賃金上昇だ。 将来にわたって、解雇の不安がない、給料の上昇が望めるために、労働に対して見合わない低い賃金で若い間は働いているのである。


 日本でも解雇が一般化すれば、新規採用時点で若者が要求してくる給料が上昇するだろう。「その他大勢・人手」の人件費は上昇しないかもしれない。しかし、「即戦力・人材」に含まれる人件費はかなり上昇するはずだ。 彼らの希望賃金に見合うだけの待遇を準備できない企業は、「人材」の採用競争から取り残されることになる。

 特に解雇解決金制度では、焦点となる「解決金」の金額が、雇用期間中の平均給与をもとに算出される可能性が高い。 有能な人材であれば、新規に採用される時点から解雇される可能性、その際の補償金のことを考えて、割高な給与水準を要求してくるはずだ。

 「どこにでもいる人手」に高い給与水準を用意する必要はないかもしれない。しかし、国際競争を勝ち残っていくために、「どうしても必要な人材」を確保するためのコストは上昇するだろう。

 安定雇用を保証する代わりに低い給与水準に納得してもらうのが得か? 解雇を容易にする代わりに高い給与水準を準備するのか? ちょっと考えさせられる論点である。




 別の視点からみると、「成長企業」には解雇制度は必要ない。業績が伸び続けるかぎり、人を増やす必要はあっても減らす必要はない。ある部門で期待通りの能力を発揮できない人がいたとしても、成長企業であれば新規分野への異動で乗り越えられる。


 解雇解決金制度では、衰退産業の属する企業で解雇を容易にする一方で、成長産業に属する企業が新規採用を行うコストを引き上げる制度なのかもしれない