劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

国立劇場の「義経千本桜」

2022-10-09 10:47:10 | 歌舞伎
10月8日(土)の昼夜で、国立劇場の「義経千本桜」を見る。菊五郎劇団で、御大の菊五郎は最後の義経役だけだが、代わって菊之助が最初から最後まで中心人物を演じる大活躍で出ずっぱり。長い話なので、Aプロ、Bプロ、Cプロと分けてあり、Aは鳥居前と渡海屋、大物浦、Bは木の実、小金吾討死、すし屋、Cは道行きと河連館となっている。原則1日に一つしかやらないが、続けてみたいので、土曜日の昼と夜でAプロとBプロを見てきた。昼は8割ぐらい入っていたが、夜は6割ぐらいの入り。

昔だったら昼夜で、A~Cを全部続けて見れるような演目だが、コロナ以降どうも根性がなくなって、細切れにしてステルス値上げとなっている。見るほうは値段が高いだけでなく休憩時間が長すぎてちょっとくたびれてしまう。昼と夜との間が1時間半空くが、その間伝統芸能情報館の図書館で本を読もうと思ったら、コロナのため事前予約制になっていては入れなかった。仕方なく1階の展示室に行ったら、同じように行き場所のない人が30人ぐらいたむろしていたので驚いた。奥で30年以上前の古い公演ビデオが流れていたので、暇つぶしにそれを見る。白波五人男と、恋の苧環を見る。昔のビデオだと掛け声が入っているが、最近はコロナのため掛け声がなくなり、歌舞伎も寂しい。

歌舞伎の開始前に、簡単な解説がスクリーンに上演されるが、まるでテレビドラマのような音楽付きで、興がそがれる。実演を見に来ているのに映画みたいなものは興ざめだ。源平の争いの背景を説明しているのだが、こうした解説をやるほどならば、きちんと「川越上使」の場から上演すれば見るほうも話が分かりやすいと思う。今回の上演だと頼朝と義経の関係や、初音の鼓の経緯がわかりにくいと思う。

さて、菊之助は若干線が細いものの、どの役も立派に演じていた。渡海屋の主人などはもうちょっと貫禄が出たほうが良いが、Bプロのいがみの権太などはなかなか良いと思った。菊五郎ももう年だから激しく動き回るような役はもう卒業で、キツネ忠信などは菊之助が引き継ぐのだろう。娘役では、静御前とすし屋の娘お里を演じた米吉がキュートで可愛い。

国立劇場は建て替えのために「さよなら公演」と銘打っているが、「あぜくら会」の会報では、建て替えの告知だけで、建て替えの間に文楽公演はどうするのかなどといった説明が全くないのも困ったものだ。建て替えたりせずに補修しながら使えばよいように感じるが、建て替えるならば、もっと具体的な内容を会員にはきちんと説明すべきだろう。

12時から見始めて、終了したのが午後8時25分だった。A~Cを全部続けても、入れ替え時間を削って午前10時半ごろから始めれば、午後9時には終わると思うので、ぜひそうした上演を望みたいものだ。

帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、イカのフリットス、若鳥のローストなど。


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