開演前の光景
久し振りに酒井俊さんのライブに行ってきました。
ヴォーカリストの俊さんのことを教えてくれたのは、例の陶磁器製手榴弾の存在を教えてくれた友人です。その友人と一緒に、吉祥寺のライブハウス〈サムタイム〉で俊さんのステージを聴きました。以来、吉祥寺や新宿のライブハウスに、多いときは月一のペースで通ったのですが、早いもので、あの日からもう5年が過ぎてしまったのね~
もしかすると、今年は今日が初めてかもしれません。それくらい久し振りに、俊さんの声を聴きました。
俊さんは、ジャンルや国籍や時代を問わず、これは!と思った曲を歌ってきたのですが、その中に、『四丁目の犬』という、とても面白い歌があります。
一丁目の子供 駆け駆け 帰れ
二丁目の子供 泣き泣き 逃げた
四丁目の犬は 足長犬だ
三丁目の角で こっち向いていたぞ
これだけの歌なのですが、一度聴いたら耳に残って嫌でも忘れられません。それもその筈、この曲を作ったのは、野口雨情(作詞)本居長世(作曲)。『七つの子』『赤い靴』『青い目の人形』『十五夜お月さん』といえば、日本人で知らない人はいませんよね。
(また、野口雨情/中山晋平コンビで、『しゃぼん玉』『雨降りお月さん』『兎のダンス』『証城寺の狸囃子』『黄金むし』『波浮の港』『船頭小唄』が有名)
『四丁目の犬』は俊さんの十八番になったのですが、ヴァイオリン=太田恵資、ピアノ&アコーディオン=黒田京子、テナー・サックス&フルート=竹内直、チューバ=関島岳朗のメンバーで演奏されるときが格別に楽しく、この編成はいつしか〈四丁目バンド〉と呼ばれるようになりました。
俊さんといえば、何といっても『満月の夕』でしょうが、それ以外にも『セプテンバー・ソング』『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』『マイ・マン』『アメイジング・グレイス』といったスタンダード・ナンバーから、『ヨイトマケの唄』『昭和歌謡メドレー』『愛燦燦』『きみのために』など日本の歌、そして俊さんが歌詞をつけた『かくれんぼの空』『橇に残された約束』『黄金の花』など、枚挙にいとまがないほど素晴らしいナンバーがあるのだけれど、私と俊さんの出会いともいえる『グレープフルーツ・ムーン』『マーサ』(トム・ウェイツ)の素晴らしさを今でも忘れられないので、個人的にこの二曲も、俊さんの十八番に入れたいと思います。
去年の秋頃から、俊さんはさらにもう一歩進んで、新たな音楽表現に取り組んでいるようです。一つは、全く新しい編成と編曲で歌うこと(Tiny Adventure with Strings)。そしてもう一つは、徹底的にジャズを歌い込むこと(PLAYS STANDARD)。
吉祥寺の〈MANDA-LA 2(曼荼羅Ⅱ)〉で行われた今日のライブは、前者の〈Tiny Adventure with Strings〉。酒井俊 & String Trio は、俊さんのヴォーカルに、ヴァイオリン&ヴィオラ(向島ゆり子)、チェロ(坂本弘道)、コントラバス(水谷浩章)という、弦楽器のみの編成で、しかも編曲がかなり冒険してます。弾き方も超絶的ですが、電動ドリルやハンドグラインダー!まで登場するのだから・・・
今夜のライブは二部構成になっていて、第一部は犬塚彩子さんのヴォーカル&クラシック・ギター。ほぼ全曲がオリジナルのボサノヴァでしたが、ギター1本で奏でるボサノヴァが何とも心地よくて、そのまま眠れたら最高です(寝ませんが)。服を一枚ずつ脱いでいくような軽やかさとでもいうか、心が軽~くなりました。どれも同じ曲に聴こえてしまうのですが、飽きることがありません。一昨年&今年と、気の毒なツキノワグマのために作曲した「ツキノコグマ」など優しい歌の数々、そして「ルパン3世」のエンディングテーマまで、ボサノヴァとちょっぴりマンボ&サンバの一時間、トシ子は「ボサノヴァは、窓を開けると部屋の中に流れ込んでくる気持ちの良い風だ」と思いました。
犬塚彩子さんのHPは、こちらをクリック
そして、第二部。久し振りに聴く俊さんだったけれど、これまた久し振りに生のヴィオラを聴いて、そのヴァイオリンともチェロとも違う音色に大いに魅せられました。弦楽四重奏の美しさといったら、たとえようがないくらい素晴らしいのだけれど、ヴォーカルに弦三本という編成もなかなかいいものです。第一部も含めて、今日は弦楽器の夕べ、というわけです。最近ご無沙汰だったせいか、初めて聴く?曲ばかり。馴染みの曲は『セプテンバー・ソング』と『満月の夕』だけでしたが、これもアレンジを変えてきているので、とても新鮮でした。知ってる曲だと、『フニクリフニクラ』がとっても楽しかった~
ただ、斬新な編曲もいいのだけれど、最近クラシック寄りの自分は、途方もなく美しい三重奏を伴奏に俊さんがしっとり歌う、というバージョンも聴いてみたいと思いました。やっぱり、俊さん、いいよ。来月も行こう~と! それから・・・一年に2回、「四丁目ばんど」を是非!!
俊さんのアルバム(あれ?「夢の名前」がない・・・)
「カレイドスコープ」と「香港ブルース」を入手できれば、コレクションが完成するのに・・・