一年前に書いたのですが、ほったらかしにしてました。外出ばかりしているせいか、「迷宮映画館」は開店休業中です。映画に関するコラムは、それこそかなり「ディープ」だから、興味のある方以外は適当に読み飛ばしてくださいませ。これからもう一回観ようかな?
迷宮映画館の2本目は、『ザ・ディープ』(77)です。原作者はピーター・ベンチリー。デビュー作の「JAWS」がベストセラーになり、二作目の「THE DEEP」もベストセラーになりました(それ以後書いてるの?)
「JAWS」は〈ユニバーサル〉が映画化権を獲得し、テレビ映画『激突』(71)が話題になるもまだ無名に近かったスティーヴン・スピルバーグが監督に起用されました。
『ジョーズ』(75)は、ブルーレイの国内盤が発売されましたね。恐怖映画の教科書と言ってもいいくらい見事な映画です。たった一つの欠点は、(こうした映画に必須とも言えるし無駄とも言える)「エロ」が入っていないこと。原作には入ってたんですよ。海洋学者と警察署長の妻の不倫が…。女優に全く興味がないスピルバーグだから、仕方ないけどね。「インディアナ・ジョーンズ」四部作や「ジュラシック」二部作(三作目は監督違うので)も、お色気が足りません。あっ、話が逸れました。
「THE DEEP」の映画化権を獲得したのは〈コロンビア映画〉でした。『ブリット』(68)のピーター・イェーツが監督することになり、スタントマン出身で本物志向の監督は、舞台となるバミューダに実物大の巨大水中セットを造った上に、半年以上も世界中の海で水中撮影ロケを敢行しました。
そのため『ザ・ディープ』は、実は低予算映画だった『ジョーズ』とは比較にならないほどの製作費を計上していて、費用対効果は芳しくありません。でも「全て本物」であるが故に(サメのシーンもね。数出せば怖くなるわけじゃないけど、出演者たちは相当怖い思いをしたでしょう)、個人的には『ブリット』のカーチェイスと同じくらい『ザ・ディープ』の水中撮影が好きなのです。
毎日が潜水合宿だった『ザ・ディープ』(監督もメガホン片手に潜ってます…)、撮影の最後の方(半年後)になると水温がかなり下がってしまい、ビセット嬢も大変な思いをしたそうです。有名な冒頭シーンはいつ頃の撮影だったのでしょう? 笑顔で泳いでますが・・・。女優魂でしょうか、尊敬します。サイレント映画『東への道』(1924)の有名なエピソード(リリアン・ギッシュの髪が完全に凍って凍死寸前?)を思い出しました。
プロ根性といえば、デビューしたばかりのニック・ノルティも、危険なシーンだろうと代役を立てずに自ら演じてくれました。さすがタフガイですね。
トリース船長を演じたロバート・ショウは、『ジョーズ』のクイント船長と「かぶる」のですが、最初から彼に演じてほしいと原作者のベンチリーから申し出があったそうです。何でも、『ジョーズ』のクイント船長の最期に関して、ベンチリーは大変不満だったそうで(原作だと『白鯨』のエイハブ船長のような最期を遂げる)、『ザ・ディープ』が「かたき討ち」というわけ。
ヒロインのゲイル役にもエピソードがあって、最初はキャサリン・ロス(『卒業』『明日に向かって撃て』)にオファーしたそうです。「泳げないから」と断られてしまい、監督が駄目もとで(『ブリット』に出演した)ジャクリーン・ビセットに声をかけたら、意外にも二つ返事で引き受けてくれたとのこと。
海に潜ったことはおろか、プライベートでは水着にも着替えない彼女の、奇蹟としか言いようがない魅惑の巻頭シーンは、このような偶然から生まれたのですね・・・。もしもキャサリン・ロスがゲイルだったら、今も語り継がれる「幸せは白いTシャツ」の場面はなかったかもしれないし、あったとしてもビセットほど見栄えがしなかったでしょう。
完成した『ザ・ディープ』のプレミア試写会は、(東京ドームになる前の)後楽園球場を借り切って大々的に行われました。宣伝にも、かなりお金をかけたんですね~♪
心臓が口から飛び出るのではないかと思うくらい怖かった『ジョーズ』と比べると、『ザ・ディープ』はハラハラドキドキさせられるけれど、安心して観ていられる点がいいですね~。
観客は「安心して観られる」かもしれませんが、水中撮影は常に危険と隣り合わせで、本物の鮫の群れが出てくるシーンは、グレートバリアリーフで撮影されました。ウツボ君に関しては、彼を大きく「魅せる」ために二分の一の縮尺セットを作って、その中を泳がせるアナログな特撮をしました。その昔、ただでさえ大柄なジョン・ウェインをより大きく見せるために、小型のポニーを用意したり、実物の4/5の大きさのライフル銃をわざわざ作ったそうですが、それと同じエピソードですね。
音楽はジョン・バリー。『ジョーズ』のジョン・ウィリアムズ(あのテーマ曲は怖かったねえ~)ほどインパクトはないけれど、さすがジョン・バリー、いいスコアです。先日惜しくも他界したドナ・サマーが、エンディングで歌っていたのですが、版権に問題があるのか、ブルーレイでは(DVDでも)この場面が丸ごとカットされていて、歌なしのBGMでお茶を濁しているのが何とも残念です。でも、Amazonでこの曲を見つけてしまったので、早速クリックしてしまいました。 【You tube】でも聴けるので、興味ある方はどうぞ・・・。『ブリット』のラロ・シフリンといい、ピーター・イェーツは音楽のセンスもいいですね~♪
『ザ・ディープ』撮影中の宣伝用スチール写真。否応なしに目が釘付けになりました。
パンフにも掲載されていた水中シーンのスナップ
ジャクリーン・美セット(面白い変換しました!)は、服を着ていても一番好きな女優でした・・・。
バミューダの青と白が似合う女神サマ・・・
『ザ・ディープ』も通しで5回も見てしまいました。水中シーンが多いため、動きに関しては、ジェットコースタームービーにはならないのですが、一歩間違うと命を落としかねない危険なシーンの連続で、水中シーン以外にも屋外エレベーター上で行われる危険なスタント、火薬の量を間違えたのではないかと思うくらいの爆発、本物の鮫の大群が出て来るなど見どころ満載で、スリルとサスペンスに満ちた宝探しの物語は、これから訪れる夏にうってつけの正しく納涼映画です。
彼女のサービスショットは冒頭だけでなく、あんなこともこんなこともされていたんですね・・・ブルーレイを観返すまですっかり忘れてました。
わざとヘンな書き方をしましたが、ギリギリの挑発がたまりません(エロとは見せないことなのね)。衣装だけでも、シンプルな白のTシャツ&開襟シャツ、黒のビキニ、胸元が大きく開いた(でも下品ではない)パーティー・ドレス、水色のブラジャー、素肌に鶏の血でペイント(衣装じゃないけど)などなど、枚挙にいとまがありません。後半着ていた黒と赤のウエットスーツもステキでした。
ブルーレイの特典映像では、削除されたシーンが結構あって、本編と同じ高画質で観ることができます! 主役二人のラブシーンも長かったんですね~。ラブシーンについては、公開時は同じように長かったような気もしますが・・・。船長の素性についてイーライ・ウォラックと話すシーンの彼女は、シネマスコープのスクリーンいっぱいに横たわっているではありませんか! シネマスコープと女優といえば、『素直な悪女』のブリジット・バルドーが草分けだけど、当時から横長スクリーンを有効利用してたんですね。サムネイルで表示したので、お好きな方はクリックしてください。1280ピクセルまで拡大されます。
すっかり忘れてましたが、こんなシーンもあったんですね・・・。