水曜日の夜勤中から目の奥が妙に熱くて体が何となくだるい・・・猛威を振るっている風邪についに自分も罹ってしまったか?と思ったのですが、昼過ぎに自宅に戻ってから下痢が止まらなくなりました。念のため病院に行くと、「ウイルス性腸炎ですね。これも最近流行ってます。心配するほどのことはないでしょう」とのこと。整腸剤だけもらいました。ウイルスが体の中から出てしまうまでは我慢ガマン・・・。
それにしても、今回の下痢は今まで経験した中でも二番目にひどく、その日の午後から翌日昼過までに何回トイレに駆け込んだことでしょう? 20回まではいってないと思うけれど、15回は超えていました。その最中、お腹はぎゅうぎゅう苦しく、お尻は焼かれるように痛いし、もう散々です。
翌朝になって下痢はどんどんひどくなり、1時間おきにトイレに駆け込む始末・・・もう一度病院に行くべきではないか、と考え始めました。ところがお昼近くになった頃、苦しんだ末にトイレから出てきたにもかかわらず、「これで下痢は終わった」と確信しました。何だから知らないけれど、直感的にこの瞬間峠を越えたと思ったのです。お風呂を湧かして、贅沢にも真昼間からお湯に浸かりました。気持ちよか~♪
直感は正しく、これを境に下痢は治まってしまいました。とはいえ、かなり体力を消耗したのでしょう。何かをしようという気には全くならず、念のため昼食も抜きました。そして台無しになった休日の午後は、ベッドで半分眠りながら本を読んで過ごしました。
取り出したのが、アーサー・ランサム全集第4巻の『長い冬休み』です。
このシリーズを読み始めた頃は(小学生のときです)、湖がだんだん凍っていき、ツバメ号やアマゾン号を帆走させられないこと自体が不満で(第2巻の『ツバメの谷』はアクシデントだから良い)、新参者のD姉弟がウォーカー家の四人やブラケット姉妹をさしおいて主役のような扱いになっている点も気に入りませんでした。弟のディックの頭の良さと、運動能力で敵わなくても柔軟な思考で試練を乗り越えていく様子に(ロジャと同程度の頭だった自分は)反感を覚えたのでしょう。
姉のドロシアはティティとキャラクターが被っていて、しかもティティ以上にティティ的な空想好き少女だったのも、ティティのファンだった自分には納得がいきませんでした。何しろ彼女の登場場面が減ってしまったし(『ツバメ号とアマゾン号」『ツバメの谷』では、彼女が主役といっても良い)、一番好きなキャラだった彼女がD姉弟の前では姉スーザンのような常識的&現実的な女の子に変わってしまったかのような台詞を言ったりするものだから、がっかりしてしまったのです。でも・・・。
『長い冬休み』は、シリーズの中でも一二を争うくらい好きな部類に入ります。ディックは嫌味に頭が良いのではなく、創造力も想像力も併せ持っていて、父の後を継いで船乗りになるしかない(といったら言い過ぎかな?)ジョンやロジャとは異質の魅力を持っています。天文学好きなようですが、彼の性格なら好きを生かして天文学者になったに違いありません。姉のドロシアに至っては、ティティやナンシイをさしおいて一番お気に入りのキャラになってしまいました。彼女の未来は、ずばり作家。幸せな家庭も築いているでしょう。D姉弟の関係は、『クローディアの秘密』のクローディアと弟のジェイミーにも少し似ていますね。二人のやりとりが面白いし、この二人が一番自分に近いと感じる人が多いのでは?
さらに、冬休み中にナンシイ船長がおたふく風邪に罹ってしまい、感染の疑いがある他の子供たちもしばらく登校禁止になったため、結果的に題名通りの「長い冬休み」をエンジョイすることになった、というのが妙に心地良いのです(インフルエンザが流行って学級閉鎖になったけれど自分は元気だったとき、似たような高揚感を味わいました。勉強以外の好きなことをしたり、こっそり遊びに行ったり・・・)
そして『長い冬休み』は、(「ナンシイのふくれたかおはきのどくでかけない」と作者のランサムに言わせたように)不幸な彼女と同じように家でじっとしているしかないときに読むと、これがまた妙にしっくりくるんです。風邪で寝込んだとき、火照った頭で何度『長い冬休み』を読んだことか・・・嘘だと思うなら試してごらん!
7~8年前の真冬に、同じようなウィルス性腸炎で仕事を三日間休んだときも、『長い冬休み』を読みました(友達から借りた『攻殻機動隊SAC』全26話も見たっけ・・・)。物語と同じように、思いがけず休みをもらったと思いながら・・・。
D姉弟中心に描かれる『長い冬休み』の中で、いつものメンバーはわりと目立たないのに、「海の恐怖」ナンシイ船長に抑圧されていた?妹のペギイ航海士が、不在の彼女の代わりに奮闘する姿がとても素敵です。ことあるごとに「とんま!」と言われてきたペギイが、姉の十八番だった「驚き桃の木」「たまげたこまげた」を口にしつつリーダーの役割を立派に果たしていくのだから、健気で小気味良いよね!
それから、1&2巻ではディクソン農場の「単なる無口な人」だったディクソンおじさんとディックの交流も、とてもいい感じで描かれています。
このシリーズに新風を運んでくれたD姉弟は、続く第5巻の『オオバンクラブの無法者』にも語り部として(物語上は準主役)登場します。『オオバンクラブの無法者』はファンの間でも評価が低いようですが、舞台設定が大変魅力的で、個人的には一番好きな物語でもあり、非常に面白い番外編です。何といっても、トムの生活に憧れました。あんな風に毎日を過ごせたら、言うことなし~♪
ランサムが描いた挿絵。このシリーズは挿絵がまた素晴らしい! ナンシイの顔の部分に「ナンシイのふくれたかおはきのどくでかけない」と字が書いてある。「ランサム=神宮輝夫」と言っても良いほどの名訳が作品をより身近に、そして魅力的にしてくれました。翻訳者って大事だよね!