2010年の『クレイジーズ』は、ノンストップ・アクションホラーですが、精神的にはかなり重苦しい作品でした(レビューは後ほど・・・)。後味の悪い思いをひきずったまま、ニワトリさんには似合わないヒルズをそそくさと後にして、日比谷線で上野に向かいました。国立西洋美術館で開催中の『デューラー展』を鑑賞するためです。
極楽トンボな暮らしをしているように見えるかもしれませんが、一日に複数のことをするのはわずかでも交通費を軽減するためで、好き好んで映画のはしごをしているわけではありません。少しでも安く見るため「~会員」になったり、チケットショップに寄って特別鑑賞券を買っていくし、基本的に昼食は抜き!です。この日も何度か誘惑にかられましたが、我慢しました。ひもじいよ~♪
今回の目玉の一つ(というか、純粋な宗教画はあまり興味がないので)が、このサイの版画でしょう。銅版画だと思っていましたが、木版画だったんですね。実物を見ずに描いたそうですが、あたかも甲冑を着ているかような想像力が素晴らしい! インドから連れてこられたサイは、輸送中に皮膚病にかかって黒班ができてしまい、それを模様だと絵師が勘違いしたとか・・・。同時代の博物学の大家コンラート・ゲスナーの『動物誌』の「サイ」の項でも、アルブレヒト・デューラーのオリジナル版画を忠実にコピーした絵(版画)が掲載されていて、以後数世紀にわたって、サイは甲冑を着ている動物だと思われていたそうです。
今回は展示されていなかったけれど、「サイ」と並んで有名なのが、野兎の素描。原画を元に彫られた手彩銅版画の美しさはこの世のものとは思えず、現代のオフセット印刷は足元にも及びません。
『神聖ローマ帝国マクシミリアンⅠ世の凱旋門』は、49枚の版画から構成される高さ3mの大作です。凱旋門の表面に描かれた彫刻には、皇帝の生涯を追った絵巻や、マクシミリアン家の系図、象形文字の謎解き、暮らしぶり、その他もろもろがびっしり描かれていて、ちゃんと読もうと思ったら三日ぐらいかかるでしょう。これも木版画なのだから、驚き桃の木!!
それにしても、銅版画&リトグラフの精微さには恐れ入りました。荒俣さんがこの世界に魅せられたのもわかります。あまりに細かいため、眼鏡を外さないと焦点が合いません。ローガンがここまで進んでいるとは・・・少し悲しくなりました。でも、この日のお客さんは、右を見ても左を向いても、知的で清楚な感じの美人ばかり! 版画より彼女たちを眺めていたのと噂も? 割合空いていたので、じっくり作品と対峙することができました。
(左)優れた建築物でもある国立西洋美術館の入口右横の巨大な彫刻。ダンテの『神曲』に登場する「地獄の門」を表現している・・・と、私の横で一人の方が十数名の仲間に解説していました。西洋美術館は常設展も素晴らしいので、時間の許す限りお立ち寄りください。ルノワールやモネ、藤田 嗣治も展示されてます。企画展ではデューラー展に合わせたのでしょう、19世紀のモノクロ版画が特集されていて、かなり見ごたえがあります。ルドンも展示されていました!
(右)あんこさんのブログでも触れていた近くの銀杏の樹。逆さハートか、クローバーか。モンブランか焼き栗が食べたくなりました!
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