〈昭和幻燈館〉紀行その1 ~青梅を散歩する

2006-11-07 03:00:12 | 日常&時間の旅

     

青梅キネマ館(左)と本郷路地の井戸広場(右)


 青梅に行こうと思ったのは、山本高樹さんの素晴らしい素晴らしい情景模型(ヂオラマ)が、〈昭和幻燈館〉を訪ねれば、思う存分見られるからでした。
(彼の作品集『昭和ヂオラマ館』を見て、じかに見たいと思っていた)

 11月04日(土)11時55分、国立駅。オレンジ色の中央線がホームに到着しました。次の立川駅で青梅線に乗り換えます(直行電車もあり)。左下に写っている手は、心霊写真じゃありません。ご安心を。PCで加工すれば消せるのかしら?


 いきなり楽しい青梅駅構内です。シネマスコープの映画看板が並んでいます。左右は『鉄道員』『終着駅』と鉄道関係の映画ですが、真ん中は日本人が大好きなオードリー・へッバーンの『ティファニーで朝食を』。カーポティの原作はお読みになりました?

  
      


 改札を出ると、バカボンのお父さんが逆立ちしながら迎えてくれました。右は【赤塚不二夫会館】内に展示されてる『ひみつのアッコちゃん』の原画。多数の原画を見ることができます。


 これも懐かしい立看板と、怪人(二十面相?)が迎えてくれる【昭和ヂオラマ館】。山本高樹作品は、青梅線の陸橋まで出てくる『青梅キネマ慕情』を中心に、デビュー作『夢の駄菓子屋』から、『向島 墨東の色町』『神保町の古書街』『浅草凌雲閣(十二階)の怪人』『本郷朗字裏の井戸広場』などの下町シリーズ、『新潟越後十日町 冬の市』『ヒロシマ 尾道 坂の上の遊郭』『隠れ里の温泉』などのローカルもの、『額縁ショウ』『見世物小屋の建つ縁日』『川っぺりの町』『サムライ商会』といった風俗や懐かしい光景と、最新作!まで13点が展示されていました。展示物は催事などに貸し出されて時々変わるのでしょうか、人気ヂオラマ『有楽町ガード下』『電気キネマ館』がありませんでした。


     

 最新作は、町子さんの写真館より少しローカルな『平塚写真館』(左)。右の写真は、関東大震災で被災するまで都内で一番背の高い建物だった『浅草十二階』。気球に乗った怪人に連れ去られる令嬢! 背後には、『凱旋門』と『禁じられた遊び』の看板。

懐かしの昭和スタア達
Q.欠けてるところにいたのは誰?(私が幻燈館にいる間に消えました・・・)

 〈昭和幻燈館〉紀行はもう少し続きますが、明日は徹夜なので、は水曜日になります。それではなさい


陶磁器製手榴弾 ~それから60年後に開発されたDIME

2006-11-07 02:55:24 | 独り言&拾いもの




 先日のクイズですが、〈ケンツク〉さんの模範解答が出ましたので、一輪挿しの正体をお教えします。実は、太平洋戦争の末期に海軍工廠の発注を受けて製造された陶磁器製手榴弾(〈ケンツク〉さんご指摘のとおり、読み方は「しゅりゅうだん」が正しい)でした。

 手榴弾の弾体は殺傷力を高めるため、鉄などの金属を使いますが、戦争末期になると金属類が不足し、昭和20年6月まで、このような陶磁器製手榴弾が相当数作られたそうです。戦争協力の証拠品とみなされるため、戦後は破壊するとか防空壕に埋めるなどして処分されました。
 このような貴重な品を教えてくれた友人に、改めてお礼を申し上げます。

 ところで、弾体というと、DIMEという「着弾時の殺傷範囲を狭くとどめ、周囲の民間人の巻き添え被害を減らすことを目的にした新兵器」が開発され、レバノンなどで実験使用されていることを、東京新聞の「こちら特報部」で知りました。先ほどの手榴弾と同じく、砲弾や爆弾は、鉄などの固い金属で外皮を覆って殺傷力を高めていますが、DIMEは爆発時には簡単に分解する炭素繊維を使って殺傷力を弱めています。爆薬と一緒に充填されているタングステン粉は、広範囲に飛散しないかわりに爆発時に高熱を発し、内部組織を焼きながら貫通する性質があります。DIMEは通常の弾体よりも、「より狭い範囲に対してより高い殺傷能力のある」兵器ですが、だから、「人口過密な場所で使用するのに適している」というのは、以下の実例からとんでもない考えだと思いました。

 ガザの難民キャンプで、イスラエル軍の無人戦闘機からDIMEらしきミサイルが撃ち込まれ、二人が死亡し、三人が重傷を負いました。二十人余りが集まっている過密な場所で爆発したにもかかわらず死傷者が五人に過ぎなかったことから、軍事評論家はDIMEの有効性が実証されたというのですが、問題が二つ生じています。第一に、死亡したのはイスラエルが狙うゲリラではなかったこと。第二に、DIMEで攻撃されると、全身に無数の小さな穴が開き、内部組織が焼かれること。医療機関は、体中に穴が開いて焼かれた者をどうやって治療したら良いのか、途方に暮れているそうです。患者の苦しみは想像を絶するものでしょう。

 イスラエルは、(ヒズボラのゲリラが一般人と識別できないので)みせしめのために誰それ構わず攻撃していた可能性が高い、と言われています。庭先で涼んでいた母親と少女がミサイル攻撃を受けて死亡しましたが、彼らがゲリラでないことは周知の事実でした。この状況で、「民間人の巻き添え被害を減らすための人道兵器」であるDIMEが使われたところで何の意味もなく、兵器の人体実験を行っていると非難されても当然です。そもそも人道的な兵器なんて、あるのでしょうか?

 陶磁器製の手榴弾が実戦で使われた形跡はありませんが、いくら殺傷能力に欠けるといっても、こなごなに砕け散った陶器の破片で体を貫かれるのはごめんこうむりたいものです。最近、割れた陶器に手の平をぶつけた際に、意外と深い傷口が開き小指の腱が切れてしまいました。細かい破片が傷口内部に付着して、それらを取り除くのに洗浄してもらう必要がありました。陶磁器製手榴弾が一輪挿しに姿を変えてくれて本当に良かったと思います。