英語の原題をカタカナ表記している映画に文句ばかりつけているニワトリサンですが、『SUPER 8/スーパーエイト』(11)は、そのとおり表記しなければなりません。スピルバーグにオマージュを捧げたこの映画は、と同時に題名となっているスーパー8ミリフィルムへのオマージュだからです。さらには、スピルバーグが一度も描いたことのない「ボーイ・ミーツ・ガール」な初恋映画でもあるのだから、一粒で三度おいしい!?
「スーパー8」は、1965年にコダック社が発表したアマチュア用8ミリ規格です。撮影用カメラは(今のDVカメラと違って)大変高価でしたし、撮影したフィルムを見るには映写機と白い壁が欠かせません。
個人的には、「スーパー8」カメラを触ったこともなければ撮影されたフィルムを見たこともなかったのですが、友達のお父さんがスライド映写機を持つほどの写真愛好家で、ときどきスライド上映会を開いてくれました。雨戸を閉めて真っ暗にした部屋の中で、夏などは汗だくになりながら(映写機は熱を発するし、部屋にはクーラーがない)、スクリーン代わりの白い壁にひとコマずつ映し出されては消えていくフィルムを眺めました。
学校でも、スライド映写の授業がありました。使用される視聴覚教室のカーテンは、遮光のためにかなり分厚い生地でできていて裏地も黒でした。重たいカーテンを引くとちょっとした暗闇が出現し、映画館にいるときに少し似た興奮を覚えたっけ・・・。
スライド上映は「静止した映画」といえるでしょう。映し出される一枚の写真から何を読み取っていたのか全く覚えていないのですが、静止している上に不連続につながったスライド映画を観ながら、大いに想像力を働かせていた可能性があります。であるならば、これらの体験がニワトリさんの映画全般に対する出発点というか、原点だったのかもしれません。
「スーパー8」は、アマチュア映画家や映画を志す学生だけでなく、一般家庭でも子供の成長を記録したホーム・ムービーなどで親しまれてきました。「スーパー8」の映像はところどころぼんやりしているのですが、カタカタと回るリール音の相乗効果もあって、「ぼんやりしている」がために塑像力をかきたてられ、感受性も3割増しぐらいに増感されます。そのときスクリーンに、自分の幼い頃や家族そして親しい人が写っていたら、どんな気持ちになるだろう? 自分自身の映像に対しては、自分の声を聴いたときのような恥ずかしさを覚えるかもしれませんが、さぞかし郷愁にかられるのではないでしょうか。
ハイビジョンカメラで撮られたリアルで綺麗な映像にも感動を覚えますが、「思い出」はすこしボケていたり欠落している方がいいのかもしれません。『SUPER 8/スーパーエイト』の中でも、主人公の少年少女がホームムービーを見る場面が出てきます。映し出される映像は「本物」ではないのですが、胸がジーンとなりました。
そして・・・エンドクレジットで、彼らが撮影していたゾンビ映画がめでたく上映されます(『リトル・ランボー』もそうでした)。オマケに挿入されているこの映画こそが、実は『SUPER 8/スーパーエイト』の真骨頂なのですが、それがノスタルジーでしかない「今」のことを考えると、ほんの少し残念でした。
というのも、ニワトリさんが今現在13歳の少年で『SUPER 8/スーパーエイト』を観に行ったら、紅一点の大人びた少女に恋するだけでなく(いつの時代も、この年頃の女の子は同学年の男の子より少し年上だった)、「スーパー8」が欲しいと思うに決まっているのですが、昔とは違った意味で入手困難になってしまったからです。デジタルビデオカメラに一部のデジカメのようなアートフィルターが搭載されれば、それっぽい映像を作ることが可能になりますが、何が出てくるか分からない一発勝負の緊張感や、フィルムを切ったりつなげたりする編集作業の楽しさは得られません。その意味では、「スーパー8」は昔と同じ「贅沢品」ですね。
もう少し思い出話をさせてもらうと、フィルム(銀塩)カメラの世界も事情は同じで、カメラ本体が高価な上にフィルム代・現像代・プリント代にお金がかかるので、今のように誰もが楽しめるものではありませんでした。
(その意味で、使い捨てカメラの「写るんです」が発売されたのは画期的だった)
中学生になると、旅行やイベントなどに限って(PENではなかったけれど)ハーフカメラや35mmのレンジファインダーカメラを持ち歩くようになりました。高校生になると、父のOM-2で一眼デビューしましたが、使用フィルムは現像代の安いモノクロームが9割を占めていました。映画熱は写真熱よりさかんでしたが、映画を「撮る」方ではなく、ひたすら「観る」方に向けられていました。
動画には動画の、静止画には静止画の良さがあり、自分で撮影するなら一瞬を切り取る静止画の方が性に合っている気がしますが、動画を撮るならやっぱり「スーパー8」がいい~! 愛好家は世界中に結構いるらしく、コダック社は今も「スーパー8」フィルムを発売しています。スティーブン・スピルバーグもティム・バートンも、ピーター・ジャクソンも塚本晋也も、本作を監督したJ.J.エイブライムスも、皆「スーパー8」で大きくなった~♪
だから、今を生きる少年少女たちも、「スーパー8」に是非とも触れて欲しいと願います。
ニワトリさんはもう大きくはなりませんが、老後の趣味として(これ以上趣味を広げるのは無理だと思いますが)「スーパー8 もいいかも?」なんて、そんな夢みたいなことまで考えてしまいました。
もう、時間が来てしまいました。ちょっと忙しくなるので、続きは金曜日の夜ぐらいまでにはUPしたいと思います。
コダック社スーパー8フィルムの公式HPは、 → ここをクリック
『SUPER 8/スーパーエイト』の公式HPは、 → ここをクリック
撮影隊の面々(一人は銃口の先にいる)。エル・ファニングちゃんについては、次回で・・・