ドイツの受入Ⅱ ~ホストの感想あれこれ~
「静」中の静 ( 吉川 利文 )
今度のドイツからのアンバサダー一行は「静かな人たち」だった。物静かで、考え深げで、おっとりしていた。我が家のゲスト、マリアンヌは、その中でもなお静かな人だった。片方の耳がよく聞こえないということもあって、話しかけもすぐ反応しないし、つぶやくように話すくせがあった。いつも、人の群れからぽつんと離れ、写真ばかり撮っていた。
そんなマリアンヌが、にわかに華やいだことがあった。我が家で私の妻らが何人かのドイツ人に着物の着付けをした時だった。私の妻がマリアンヌに「あなたにも…」というと、「太っているから無理」と固辞した。妻が「大丈夫よ」と言って着せてやると、珍しくはしゃいで、庭に出て植木の花の前に立って「写真を撮って」とポーズまでとるのである。それ以来、すっかり着物に魅せられ、「着物がほしい」「着物を買いたい」「着物を売っている店に連れて行ってほしい」…。
そこで奈良を出発する前の日、我が家から遠くないところにある中古の着物屋さんに連れて行った。ウェスタンらしく、派手なデザインのものを選ぶのでは、と予想していたら、まずは、渋い、落ち着いた模様の2着を選び出した。どちらも大島紬。妻は「私がほしいくらい」というほど「通」好みで、私も驚いた。マリアンヌは何度も2着に手を通しながらさんざん迷った挙句、「どちらも」と決断。今回病気のため同行できなかったマリアンヌの夫の為に、私が浴衣を買って「おみやげに」というと、これまで見たことがなかったような笑顔で「サンキュー」を繰り返した。その晩、スカイプで夫を呼び出し「秘密があるの。帰国まで内緒」と、いたずらっぽく話しかけていた。
マリアンヌは奈良訪問前夜、祇園観光の後の食事の時に飲んだ清酒に「開眼」、我が家でも、自分から「酒が飲みたい」と言い出し、アルコールは、ドイツ人の好きなビールではなく、清酒を通した。
もうひとつ忘れられない光景がある。アンバサダー一行は、京都観光の時、竜安寺の石庭を、方丈の縁側に30分くらい座りこんで、黙りこくって見つめていた。
ドイツ人の「静」、マリアンヌの「静」中の静。なにか私たちの心に染み入るものを感じた。
ティーセレモニー ( 吉川 公子 )
フリーデーにアンバサダーたちをティー・セレモニーに案内しました。お茶席は、大和郡山市内の澤田さん宅。澤田さんは、私にとってお茶の古いお稽古仲間で、女性たちにお茶や和裁を教えておられます。今回アンバサダーたちのおもてなしを頼んだところ、快く引き受けていただきました。当日は、あいにくの雨。傘をさし、足元に気を遣いながら平屋の一軒家の澤田さん宅にたどりついた5人のアンバサダーたちを驚かせたのは、あでやかな着物姿で出迎えてくれた女性たちのにこやかな笑顔でした。澤田さんがお茶を教えているお弟子さんたちです。澤田さんはこの日のために、お茶室を奥ゆかしくしつらえたり、開け放った隣室に大きなひな壇を飾りつけするなど、心のこもった準備をしてくれていました。アンバサダーたちは、この純和風の家と雰囲気に感動したらしく、茶室からひな壇、台所まで入り乱れて写真を撮りまくり、ティー・セレモニーがなかなか始められないほどでした。
さてお茶会。アンバサダーたちは正座ができないので、私たちホストたちは手作りグループで作った牛乳パック製スツールを持参し、アンバサダーたちに使ってもらいました。それでも、クリスタはひざの痛みがきつく、澤田さんに湿布をしてもらって休養しました。
お茶をいただく前とあとに、茶碗を二度回すことが不思議だったようで、何度も質問しながらトライしていました。用意していただいたお菓子はおいしく、お茶も気に入ったようで、アンバサダーたちは、座敷のお茶席と立礼の席で、満足げにお茶を飲み干していました。

左からEdith,,Christa,吉川利文さん、Marianne,Hedda、Helgard
みなさんの協力のお陰で ( 前野 美佐子 )
今回のアンバサダーのクレスタさんは初めての方でしたが、とても優しく、すぐ仲良くなりました。特に、阪井さんのお家でのポットラックパーティでは、沢山の日本人の会員ともに楽しく交流を深めました。高尾さんのお好み焼に舌づつみを打ち、クレスタさんは小さなおちょこで、何杯もお酒を飲みました。とても美味しかったそうです。
フリーデイは吉川さんのお友達のお茶会に、他のアンバサダーとご一緒に参加させて頂きました。本格的なお茶を楽しみました。雛人形が飾られており、写真を撮ったりして、有意義な一日を過ごしました。リターンという事で、すぐ打ち解け、お互いの文化や生活習慣を通して、交流が深められた事はとても良かったです。

Christa お茶会で
ツネオさん探し 続編 ( 河村 ひとみ )
昨年5月ホームステーした時、ウーリーから聞いた話では、40数年前に日本のツネオさんと文通をしていたとの事。その時送ってもらったという“こけし”も見せて頂きました。
ツネオさんを探せたら良いな・・・とは思いましたが、情報不足で諦めていました。
Return Exchangeが決まり、メール交換を始めた今年の1月、ツネオさんからの手紙が見つかったと、当時(1967年)の住所・名前が書かれていました。
Akita-ken Yuri-gun ・・・ ○○Tsuneo
合併や統合で現在の名称とは異なっていましたが、地域を絞り込む事は出来ました。決め手となったのは、電話番号案内で調べたら、1件のみの該当先でした。なんとそこは、彼のご実家だったのです。その後、彼とも連絡がとれ、これまでの経緯をお話すると、最初は
消極的な発言もあり、諦めかけていました。2月末になって、ウーリーへの来日記念のプレゼント、家族写真等が送られて来て“自分はあれ以来英語とは無縁になっているので、よろしく伝えて下さい“との事でした。また、当時ウーリーから送られたカレンダーが実家に保管されていたと、写真で送って下さいました。ウーリーもはっきり覚えていました。
40数年の空白がFFのExchangeを通して繋がった事は、とても嬉しく感動でした。
フリーデーは田平さん、乾さんの助けを借りて信楽へ行きました。まずタヌキを説明するのに四苦八苦。それもそのはず、タヌキは日本、中国アムール地方に生息分布しているので、あまりポピュラーではないのですね。 登り窯を見るのは初めてとの事、喜んでおられましたが、陶器店店主より振る舞われた渋いお茶とボソボソ話されるお茶の入れ方等の話には、渋い表情でした。生憎の雨でしたが、田平さん、乾さんのお蔭で楽しい時間を過ごせました。

Ulrike
ドイツの親戚がやってきた ( 内田 勝治・堯子 )
バスから降りてくる懐かしい二人の顔を見つけた時、思わず歓喜の声が口を突きました。まるで我が家に親戚を迎え入れたような5日間の受け入れ、とにかく楽しかったです。これぞ ”Return Exchange“だと実感しました。
私たちが、ドイツ滞在中彼らは、ずっと私たちと一緒に行動してくれ、いつも4人一緒でした。それが私たちにとってとても心地よく、そしお互いに親密な関係を築く事が出来たと思います。そこで私たちも、短い期間中ですができるだけ、4人一緒の時間をたくさん持てるように心がけました。
私たちは、ドイツでのホームスティ後、2週間ドイツを旅行しました。その時、彼らは多くの手助けと、アドバイスをしてくれました。その旅行の報告がいっぱいで、毎晩遅くまで楽しく話し合いました。フリーディで計画した、「平城京跡」、安堵町の「中家住宅」「飛鳥万葉文化館」は、訪れる人も少なく静かな中、ゆっくりと観光できました。彼らは、私たち二人の拙い英語での説明にも関わらず、奈良の歴史を知ることが出来たと、非常に喜んでくれました。
勝治は、ドイツのフェアウエルパーティで、ドイツの歌を歌い皆さんに喜んでもらえました。それに気をよくして、今回「ホームコンサート」を開きました。8人のアンバサダーに参加していただき、勝治とトリオの歌を再び聞いてもらいました。アンバサダー達も一緒に歌ってくれ、勝治は、大満足でした。その後のディナーパーティでは、参加者一同楽しく歓談しました。その時のフランツのスピーチが印象的でした。「FF交換で私たちは、もう家族になったのだ。だから、その後もお互いにその関係を続けて行く事が大切だ。」そのような趣旨です。実際彼は今もたくさんのメンバーたちとの交流を実現させているのです。 私たちも是非、もう一度彼らを訪ねたいと強く思いました。近い将来・・・
彼らが非常に興味を示したこと
日本では当たり前なのですが、家電や、お風呂等に音声での案内があります。それに非常に興味を示し。「何を言ってる?」とその度に尋ねます。カーナビからの音声にも、それが聞こえる度に、二人で笑います。
もう一つ驚いたこと
クリスタが、食器洗いを手伝ってくれました。ほとんど終わりに近い時に私は気づきました。食器洗剤液で洗ったあと、そのまま篭に上げます。ヨーロッパ方式なのです。生活様式の違いに改めて驚きました。
やっぱり我が家でも・・
ドイツに行った時に、フランツが家事手伝をよくするのに驚きました。日本の男性とは大違いです。我が家に来ても同じです。ディナーパーティでは、その後片付けに大活躍してくれました。家事を手伝うことが、日常的に習慣になっていることを改めて痛感しました。
こんなに楽しくリラックスした受け入れは今までにありませんでした。まだ、その余韻が残っています。

Franz&Christa
ホームコンサート


前列の観客は吉川さん宅のMarianneと今井さん宅のHelgard
日本文化、食を楽しむ ( 道上 恵子 )
JurgenとIngo&Juttaは家族ぐるみで交際されているお友達。三木さんとJurgenの家にホームステイした時、Ingoがデイホストをしてくれました。ということで、奈良滞在中はすべて三木さんと一緒に行動しました。

吉岡宅で串カツ 三木さん宅の Ingo&Jutta 道上宅で鉄板焼きのディナー
今回はショートステイで日本文化体験がないため、アンバサダー6名が滋井さん宅で日本食のランチ、折り紙、ティーセレモニー、着物を着る体験をしました。

着物を来ているのは畠中さん宅のInge&Kathleen親子 *一番手前は中森さん宅のKirsten
ティーセレモニーの前に和食のランチ(すべて手作り)を頂きました

着物を来てティーセレモニー

お茶会でKathleenがオレンジの着物を先に着て、この後、Juttaはパーティーに着て行きました。
最後のフリーデーに大阪見物。黒門市場の魚の並び方に興味を惹かれたようです。又、ちょうど相撲の大阪場所があり、チケットは売り切れだったそうですが、通路には入れ、力士達と写真を撮り、ランチは回転寿司。中森さんはこの後、Kirstenと京都の歌舞伎座へ。

JurgenとJutta (相撲さんをバックにパチリ!) 回転寿司
あっという間のホームステイ、短かったけれど、それぞれの方が日本の文化体験を満喫された事と思います。今回はホストの皆さん頂いた原稿そのままを載せさせて頂きました。記事を書いて下さった方々、有難うございました。記事が載っていない方、FF例会でお話し聞くの楽しみにしています。
次回はもうすでに終わった、グルジアからのホームステイの様子をお伝えします。