2021年上半期第165回直木賞候補作。
「小説現代」2020年6月~21年3月連載、299頁。
「やるせなくて不自由で、思い通りにならないけれど、愛しい私たちの世界」の物語6つの短編集。
共感できるものもできないものも、設定が現実離れしていたり、時空を越える物語だったりして振り回されたが、何とか最後まで行きついた。
選者の中には評価する方もおられたが、正直のところ、この作品での受賞は難しいと思った。
選者評:高村薫氏
「身近な世界を切り取っているようで、実は生身の人間はどこにもいない人工的に構築された箱庭とそこに置かれたフィギュアのようだと言おうか。本作の短編はどれも手練れゆえに書き流した感が強い。本ものの小説家であるために、あと少しの執念と用心深さを。」