2022年上半期第167回直木賞候補作。中央公論社刊、307頁。
好評だったが次点に泣く。受賞作は、窪美澄著「夜に星を放つ」。
鎌倉幕府下、政子の意向で入内することになった長女の大姫は、幼くして許婚の(木曽)義高を殺され心を閉じていた。
入内促進のため都から派遣された周子は、大姫が抱える心の傷の深さを知り、政子と対立しても大姫の願いをかなえたいと奔走するが・・・。
後宮や幕府内の人間関係の複雑さから、結局、日本史を再学習する羽目に陥った。しかし、これが物語を楽しむ上で大いに役立った。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
選者寸評:三浦しをん氏
「北条政子と大姫の関係など、いつの時代にもこういう母娘の葛藤はあるだろうなと思ったし、作者は”時代小説のなかで、いかにさりげなく現代社会にも通じる問題に触れるか”に非常に自覚的な方なのだろうと感嘆した。登場人物全員が魅力的に躍動しており、読後に忘れがたい余韻が残る。」