【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「インセプション」:大久保駅前バス停付近の会話

2010-07-24 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

遠くにぼんやりと高層ビルが見えるような気がするんだけど、夢かしら。
夢じゃない。あれは、新宿の高層ビル。現実だ。
よかった、「インセプション」に出てきたマリオン・コティヤールのように、夢と現実の違いがわからなくなっちゃたら、どうしようって心配しちゃった。
クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」は、他人の夢の中に潜り込んでアイデアを盗み出す企業スパイの話だっていうから、SFに近いサスペンス・アクション映画かと思ったら、観終わったあとに残るのは、レオナルド・ディカプリオとマリオン・コティヤールの切ない愛の物語だった。
二人は夫婦役なんだけど、夢の中なら望む世界を自由に構築できることを知ってから、夢の世界にのめりこんでいくうちに、夢と現実の区別がつかなくなっていく。
とくに、コティヤールは、夢依存症のようになっていく。そこで起こる夫婦の悲劇。
もちろん、ディカプリオが渡辺謙に雇われて大企業の御曹司の潜在意識に忍び込むっていうのがメイン・ストーリーの映画なんだけど、その中で露わになってくる夫婦の関係っていうのが、胸をしめつけてくるのよね。
その御曹司の潜在意識っていうのが、また、複雑でね。二層にも三層にも重なっているんで、さまざまなシチュエーションの世界がからみあってくる。
でも、そのシチュエーションの組み合わせが、どういうわけか、よく計算された建築物を想わせるような印象をもたらしてくる。
ふつう、夢とか潜在意識とかいえば、どこか茫洋とした部分があるもんなんだけど、この映画の夢世界は隅々までくっきりと構成されているからな。
目の前にそそり立ってくるパリの圧倒的な街並みとか、人工的な断崖が崩れ落ちていく海岸の退廃的な風景とか、鳥肌が立つほどクリエイティブな世界が広がる。
そういった要素がルービックキューブのように組み合わされていくから、建築的というか、数学的な芸術のような肌合いが出てくるんだろうな。
最後も夢落ちといえば、夢落ちなんだろうけど、そもそもこの映画の成り立ち自体が夢落ちだからね。
目を見張る映像体験のあとで、心に残るのは夫婦の在りようっていうのが、おもしろい。
この映画、クリストファー・ノーランつながりで「ダークナイト」の系譜というよりは、ディカプリオつながりで「レボリューショナリー・ロード ~燃え尽きるまで」の系譜と捉えたいな。
突然老けた渡辺謙は、「2001年宇宙の旅」だったけどな。




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ふたりが乗ったのは、都バス<橋63系統>
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