【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「紀子の食卓」:上野駅前バス停付近の会話

2006-11-03 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

「紀子の食卓」の主人公”紀子”が家を飛び出して降り立った上野駅ね。
いやいや、「紀子の食卓」の主人公”上野駅54”と呼ばれる女が捨てられていたコインロッカーのある上野駅だ。
え、「紀子の食卓」って、吹石一恵が演じていた紀子が主人公なんじゃないの。
表の主人公はそうだけど、よくよく考えてみると、つぐみの演じていた”上野駅54”が影の主人公のような気がしないか。
ストーリーだけ見ると、紀子が父親との確執の末、家を飛び出して妹もその影響で家を出て、父親がもう一度家族の絆を取り戻そうと東京に追いかけてきて惨劇が起こるという話でしょ。
そこで、レンタル家族と言う形でもう一度父娘を結びつけるのが、擬似家族になって母親役を演じる”上野駅54”という名前の女なんだけど、コインロッカーに捨てられててもともと家族のない彼女こそが家族で囲む食卓を求めていた物語とも読み取れる。
崩壊する家族の物語ではなく、家族を願う女の物語だったってわけか。
コインロッカーベイビーとか、レンタル家族とか、あやしげな宗教団体風のサークルとか、手垢のついた素材がいっぱい出てくるんだけど、その割りに古臭いって感じがしないのは、そういった一筋縄ではいかない哀しさみたいなものが全篇を貫いているからかもしれない。
とにかく、モノローグの洪水で、モノローグのない場面なんてほとんどないんだけど、つまり何か言ってないととても間がもたないといった切羽詰まった感じが画面からも流れてくるのよね。
画面がスカスカという意味じゃなくて、過剰すぎるんだよな。
そう、過剰もここまでくればほとんど感動に反転するっていう好例よね。
それにしても、あの、サークルの説明をする男の気味悪さ。
妙にもののわかったようないやらしい目線と口ぶり。勘弁してよ、って思っちゃったわ。
実は全篇をそういう気味悪さが覆っていて、見ていて気分の悪いことこのうえないんだけどな。
ホラー映画じゃないのに、ここまで寒けがするかっていうくらい寒けがするのよね。
でもラストはハッピーエンドじゃないのか。自立して出ていく女と自立してとどまる女。
そう?影の主役の”上野駅54”にとってはどうだったの?
うーん。微妙なところだな。やっぱりあれだな、東京の表玄関の東京駅に捨てられたんじゃなくて、上野駅に捨てられたってことが最後まで尾を引いてるのかもな。
どういう意味?
きっちりと映画の終着点をつとめる表の主役にはなりきれなかったってことだ。
哀しい話ね。
救いようのない傑作だ。


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「百年恋歌」:御徒町バス停付近の会話

2006-11-01 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

ここが、アメ横にある台湾料理の店だ。
なんだかディープなところにあるのね。迷路みたいなところじゃない。
台湾の映画監督ホウ・シャオシエンもここのところ迷路に迷いこんだ感じだったけどな。「珈琲時光」なんて、小津安二郎生誕百年記念とか言ってたけど、どこが百年記念だったのか、全然わからなかったもんなあ。
こちらの百年はどう?最新作の「百年恋歌」。
1966年、1911年、2005年と、時代が違う三話のオムニバスになっているんだけど、俺は最初の1966年篇が一番良かった。とうとう、ホウ・シャオシエンも迷路を抜け出したかと思ったよ。
というより、1966年篇て、昔のホウ・シャオシエンぽくない?「恋恋風塵」とかの頃の。
そりゃ誉めすぎだろ
なに、赤くなってるのよ。
いや、ここだけの話だが、「恋恋風塵」て、俺が一番好きな恋愛映画なんだ。
ははーん。そういうこと・・・。
やっぱり、彼はあの頃の時代を描くと素晴らしいな。屋外から差しこむ光の中、屋内にたたずむ若い男女の姿を見ているだけで涙が出るほど感動するよ。
白っぽい屋外と暗い室内の対比ね。
たいしてドラマチックなことが起こっているわけでもないのに、ドキドキしちゃうんだよな。ホウ・シャオシエン復活かと思ったよ。
じゃあ、他の二話は?
それが問題なんだ。1911年篇はまずまずとしても、2005年篇となるとわけがわからなくなる。むだに時間を過ごしている気分になってくるんだ。
まあ、時代がそういう時代なんじゃないの?
というより、今の時代をとらえるには、彼もちょっと年をとっちゃったんじゃないの、残酷な言い方をすれば。
いつまでも、1960年代とか70年代を撮っていろということ?
だって、1966年篇はあんなに素晴らしいんだぜ。あの路線でまだまだ行けるよ。
そんな昔の栄光に頼ってちゃだめよ。バレーボールの台湾チームなんて昔を捨てて戦ったおかげで日本に勝っちゃったんじゃない。
て、なんか、話が脱線してない?
そうそう、この台湾料理のお店に入るんだった。
ホウ・シャオシエンが迷路を抜け出して、「恋恋風塵」のような映画をまた撮ることを祈ってな。


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「父親たちの星条旗」:上野広小路バス停付近の会話

2006-10-29 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

あのアメリカの旗をデザインした看板は何?
アメリカ屋。いろんなアメリカ製品を売ってる。
旗とかも売ってるのかしら。
硫黄島で最初に立てたほうの旗も売ってたりしてな。
まさか。
ほんと、「まさか」だよな。あの有名な硫黄島の星条旗の写真に写ってる旗が実は二本目の旗で、一本目の旗は誰かお偉いさんの記念にって持って帰ちゃったなんて。
で、その二本目の旗をたまたま立てただけの兵士が英雄に祭り上げられちゃうなんて。
本人たちはその欺瞞に一生悩み続ける。
監督がクリント・イーストウッドだから、ただの戦争映画にはならないだろうとは思っていたけれど、「父親たちの星条旗」って、期待を裏切らない出来よね。
あの有名な写真がどういう意味を持っていたのか、冷静に検証していて立派だよ。「男たちの大和」だって、大和がどういう意味を持っていたかもっと冷静に検証すればこれくらい立派な映画になっていただろうに、若い乗組員が海に散ってかわいそうだった、で終わってて、仲代達矢なんてただのおじさんにしか見えない。
出口のない海」(9.18の記事)のときの会話でも出た話ね。ただ回想するだけのおじさんならいらない。
回想シーンがいまにつながっているかどうかということが大事なんだ。「父親たちの星条旗」はしっかり現在につながっていて立派だよ。
愛国心をどうとらえるかっていうのは、いままさにここにある問題だものね。
兵士のセリフに「茶番だ」っていうのがあるけど、ほんと、すべて茶番なんだよな。しかも、アメリカ的にショーアップすればするほどむなしくなってくる。アホらしくて見てられないんだけど、それが戦争ってもんなんだな。
野球場みたいなところで観客を満員にして兵士たちに旗を立てるところを再現させるなんて、背筋が凍ったわ。
硫黄島の山をかたどったケーキに赤いシロップをかける無神経さとかな。
イーストウッドって、けして誰かを大声で泣かせたり、これみよがしのクライマックスシーンをつくったりしないのに、かえって言いたいことが浮かび上がってくるのよね。
戦場の悲惨さも、銃後の悲惨さも、そして、その悲惨さは戦争が終わっても続くということまで描いて見事というしかない。
恋人の出し方も、ただの善良な女の子って感じじゃなくてまた、リアリティを感じるのよね。
結局、愛国心を煽って戦場に送って利用できるだけ利用したらポイと捨てる、っていう国のやり方はアメリカも日本も変わらないんだよな。いや、世界中が変わらない。
だから、兵士は戦友のために戦ったと思うしかないのよね。期待にたがわない、ううん、期待以上の名作だわ。
それにしても、あの一本目の旗はどこに行っちゃったんだろうな。
アメリカ屋で探してみる?
いや、それじゃあ愚かなお偉いさんと一緒になっちゃうからやめとこう。
そうね、国民一人ひとりが冷静にならなくちゃね。


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「サンキュー・スモーキング」:竜岡門バス停付近の会話

2006-10-28 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

東大の薬学系総合研究棟・・・か。禁煙できる薬でも開発してくれないかな。
なに、言ってるのよ、あなたから煙草を取ったら何も残らないじゃない。
そりゃそうだ。映画の「サンキュー・スモーキング」でも煙草を飲んでもかまわないって言ってるしな。
体に悪くないなんて一言も言ってないわよ。
そうだっけ?
この映画の主人公は煙草会社のPRマンだけど、あげあしを取られるようなことは決して言わないの。それでいて、勝手な論理で禁煙論者を上手に煙に巻いて結局論争をうやむやにしてしまうすごいやり手なんだから驚くわ。
ははは。煙草だけに文字通り煙に巻くってことか。
宣伝文句にもあるけどね。
「デベートは相手が納得するんじゃなくて、聴衆が納得すればいいんだ」とか「子どもに煙草の害を教えるのは親の責任だ」とか思わず納得するようなことを次から次に笑顔で言うから、こちらもついつい、うなずいちゃうんだよな。
別に信念があるわけじゃなくて、話術がうまいからこの仕事についているだけ、っていうのがまた妙に納得しちゃうのよね。
「ローンのために働いてるだけだ」とか言われるとつい、身につまされちゃうよな。
アーロン・エッカートがまた、「ブラック・ダリア」とはうって変わって軽いヤツを生き生き演じてるから、煙草会社の片棒をかついでるのに、なんかいいヤツに見えてきちゃうのよね。
だから、この映画を見ると、ま、このまま煙草飲んでてもいいか、って気にさせられちゃうんだよな。
でも別に、喫煙賛成がテーマの映画じゃないからね。
そりゃ、わかってるさ。むしろ、こういうヤツがいるから、アメリカは牛肉輸入禁止措置を取る日本の考えが理解できないんだろうと思っちゃうよ。
「食べるか食べないかは個人の自由だ」っていう考えよね。でも、そこには何が安全で何が安全でないかを明確に明示する責任があるんだけどね。
とにかく映画としては、抜群におもしろい。タイトルバックの煙草のイラストからして楽しくてしょうがない。
最近て、そっけないタイトルバックが多いもんね。
そっけないタイトルは、ウディ・アレンだけで十分だ。
初代マルボロマンのエピソードとかあんな扱いして問題にならないのかって、心配になっちゃっうほどよね。
まあ、日本じゃ無理かもな。こういう問題作を平気でつくれちゃうところにアメリカの懐の深さがあるんだよな。
その懐の深さが牛肉問題のいい加減さにもつながるんだけどね。
表裏一体ってやつだな。
とにかく一見の価値ありよ。
この際、この主人公と東大の学生のディベートってのはどうだい?
だから言ってるでしょ。うまく煙に巻かれちゃうって。
うーん、煙草でも吸って考えるか。
だめよ、バスの中は禁煙なんだから。
ハイ。


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「キャッチボール屋」:東大病院前バス停付近の会話

2006-10-27 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

東大病院の前っていいグランドになってるんだな。
東大生って、勉強ばかりして運動なんかしないかと思ったけど、そんなこともないのね。
そりゃ、東大生だって、キャッチボールくらいするだろ。
映画の「キャッチボール屋」はなんだかごちゃごちゃした公園でキャッチボールしてたけど、これくらい広いところで伸び伸びとやりたいわよね。
ま、それが世間てもんだ。あらゆる障害を超えてどこまで愛する人とキャッチボールを続けられるか。
そんなかっこいい映画じゃなかったわよ。成り行きでキャッチボール屋になった男が奇妙な人々と交流ともいえないような交流をするってだけの話。
まあ、愛だの恋だのはなかったな。
ドラマチックなこともほどんどなく。
高校野球のエピソードは泣かせるけど、でも映画自体はことさらそれを強調するわけでもなく。肩の力を抜いてるのな。
そういう映画って、観てる方も肩が抜けて、なんかダラダラ見てるだけで癒されるのよね。
時代にぴったりってやつかな。ちょっと感じは違うけど、「かもめ食堂」系の映画だよな。
俳優たちがみんないいのよね。熱演ていうんじゃなくて自然体で、淡々としてて。
大森南朋も寺島進も松重豊も光石研もみんないい。
光石研なんて、キャッチボールが下手な役なんだけど、下手そうにボールを取るって、かえって難しかったんじゃないのかなあ?
それもまた自然に演じてたよな。
それからあのOL役。あんまり見かけないけど、何て言うのかしら。
キタキマユ。ヘンなヤツ。エンタの神様にでも出ていそうなキャラクター。
この映画のヘンさって、北野武の映画のヘンさにどこかリズムが似てるなあと思ったら、監督の大崎章は北野武の映画の助監督してたんだってね。
北野武ほどの洗練さはなかったけど、そのぶん、素朴でこれはこれでよかったよな。
別に傑作でも秀作でもないし、特筆すべきシーンもないんだけど、どうもけなすのにためらわれる愛すべき映画なのよ。
東大生のように秀才ではないけど、東大の生協のおばさんくらいの愛嬌はあるって感じかな。
例えがよくわからないけど、取材協力東大病院ってタイトルに出てたわね。
痴呆の取材に協力したのかね。
老人の痴呆がすべての発端というのも案外意味深ね。ファンタジーの始まりって感じで。
人はみな、誰もが誰かとキャッチボールをしたがっている・・・。
なるほど。たまにはあなたも頭よさそうなこと言うのね。
たまにじゃない。いつもだ。


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