
ロマン・ポランスキーがまた職人の腕の冴えを見せたな。

公園で遊ぶ子どもたちから始まって、その子どもたちのけんかの和解のために集まった二組の両親が最初は上品ぶっていたのに徐々に本性を表わして修羅場と化していくまでを、さすがと言うしかないスムーズな手さばきでコメディにしていく。

問題のきっかけとなる子ども同士のけんかのさらりとしたスマートな見せ方、その後はほとんどマンションの一室で繰り広げられる会話劇なのに閉塞感を微塵も感じさせない演出。

ポランスキーくらいの監督になると、このくらいの話、お茶の子さいさいなんでしょうね。

役者陣が凄い。ジョディ・フォスターとジョン・C・ライリー、ケイト・ウィンスレットとクリストフ・ヴァルツがそれぞれ夫婦役。

ほとんどこの四人しか出てこないんだけど、海千山千の芸達者たちだから、観ていて飽きる瞬間がない。

この四人が、ときには夫婦同士の争いになり、ときには妻連合対夫連合のいがみあいになり、話はくるくる回り、子どものけんかのことはどうなっちゃったんだよ、とチャチャを入れたくなるくらい、おとなげない展開になっていく。

そして、白眉の嘔吐シーン。

嘔吐シーンが白眉というのもおかしな話かもしれないけど、タイミングと言い、その量といい、映画史に残る嘔吐シーンだ。

ケイト・ウィンスレットは、光栄なことに、これから“嘔吐女優”って呼ばれるのね。

あれだけ揺れたタイタニックでさえ、嘔吐しなかったのに。

そして、実は一番の主役だった携帯電話。

この四人の会話をバカにしたように絶妙のタイミングで鳴り出すんだから笑っちゃう。

しかも、これが映画のラストをすっきりまとめてくれるとは思わなかった。

こういう誰が観ても楽しめる映画が都内では一館でしか上映してないっていうんだから、世も末だなあ。

子どもたちには見せたくないっていうことかもしれないわよ。