【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「20世紀少年」:業平橋バス停付近の会話

2008-08-30 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

この塀はなんだ?
この塀の向こうに新しい東京タワーができるのよ。
高さ610メートルの新タワーか。
そう。2011年完成予定なんだって。
20世紀の少年たちなら、胸をワクワクさせて聞いたような話だな。
でも、21世紀の少年たちにとっちゃあ、ふーん、ていう程度の話なんでしょうね。
残念ながらな。映画の「20世紀少年」も、もっと胸がワクワクするような映画かと思ったら、ふーん、ていう程度だったし。
あら、そうかしら。テレビでよく見かけるような俳優たちが次から次に出てきて観ているだけで楽しかったけどな。あ、木下優樹菜が出てる、とかデーブ・スペクターが出てる、とか探すのが楽しかったあ。
そういうところに感心するような映画じゃないだろ。三部作になるような壮大な物語のはずなのに、どうもスケール感が出てこない。どこかチマチマした感じが漂う。テレビの役者が多いっていうのも一因かもしれないけど、原作と格闘するだけで終わって、映画としての形を整えるまでの余裕がなかったのかな。
って、あなた、浦沢直樹の原作は読んでるの?
読んでない。
じゃあ、この映画の真価を語る資格はないわね。
とーんでもない。原作を読んでないからこそ、純粋に映画としてどうか、っていう話ができるんだ。
で、この映画の何が不満なわけ?
三部作っていうからには、ふつうは第1作は敵にいいようにあしらわれて屈辱を味わい、第2作で奮起、反撃して、第3作ではさらに強大になった敵と対峙して最後に主人公が勝つ、っていう構成がいちばん美しいと思うんだけど、この映画、第1作としては、全然屈辱感が足りなくないか?
屈辱感?
主人公の唐沢寿明が敵の横暴に耐え忍んで、耐え忍んで、耐え忍んで反撃に出るんだったら感激できるのに、どうも耐え忍び感が足りない。もっといたぶられなくちゃあ。
それって、あなた、任侠映画の見過ぎじゃないの?
悪かったな。どうせおいらも20世紀少年さ。
少年サンデーとか太陽の塔とか、20世紀のアイコンが出てくるわりには映画の展開に生かされていなかった気はするけどね。
タイトルから、「三丁目の夕日」の悪意版みたいなのを期待していたんだけどな。
それは、原作を読んでない人の勝手な思い込みよ。
そうか?全体の流れにはそんな雰囲気もあったぜ。ただ、それに徹しようとしていないから、視点が中途半端になっちゃったんじゃないのか。
三部作だから、中途半端にならざるを得ないの。これからを期待してよ。
しかし、冒頭いきなり、「オリーブの首飾り」のレコードを壊すエピソードが出てきて、このいかにも20世紀的な線で全編押すのかと思ったら、ちょっと違った。
そうかしら?こうして世界に反抗しようとした20世紀少年が、中年になってそんな意志も忘れ平凡な生活をしていたところに、もう一度世界と相対するチャンスを与えられる。そのとき、人類の調和と進歩を信じていた20世紀少年はどう行動するかという、わかりやすい映画じゃない。
実際話はそう進んで行くんだけど、そこに不可欠な、一本芯の通った感情のうねりのようなものが感じられない。
要するにあなたは、話というより、描写の仕方に不満を感じるわけね。
というより、理屈を超えた空気感かな。比べちゃあ悪いが、同じくコミックを原作にした「ダークナイト」には最初から最後まで映画の中の世界を支配する空気感が画面に漂っていた。「20世紀少年」には、ひとつの世界を構築するほどの空気感が最後まで覆っていたかどうか。
空気感ねえ。なんか抽象的。とにかく、これからを期待してよ。
具体的な描写に即していえば、地下鉄の車庫に暮らすシーンがあるが、阪本順治の「カメレオン」の工場に暮らすシーンと比べてみろ。どっちに空気感があるか歴然だろ。
ますますわからないけど、第2作、第3作ってあるんだから、これからを期待してよ。
期待したくなるほどのワクワク感があったかどうか。
ワクワク感はこれから出てくるの。これからを期待してよ。
期待して、期待して、ってお前、俺は金出して予告編を観たのか?
やあねえ、おでこに皺なんかつくっちゃって。あなたも20世紀少年のわりには、21世紀的な夢も希望もない精神の持ち主なのね。
わかった、わかった。新東京タワーに期待するほどには期待感を持っていよう。
そう、そう。何事も前向きにね。





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「ダークナイト」:本所吾妻橋バス停付近の会話

2008-08-27 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

質屋っていうのは、いまでもやっぱりこういう路地裏にあるのかしら。
そりゃあ、そのほうが入りやすいだろう。俺なんか、暗い夜を狙って質屋通いをしたもんだ。
暗い夜、まさしく、映画の「ダークナイト」ね。
いや、映画の「ダークナイト」は暗い夜っていう意味じゃなくて、闇の騎士っていう意味らしいぜ。
“ナイト”は“夜”でしょう。「アラビアン・ナイト」だって「英語で喋らナイト」だって“ナイト”は“夜”よ。
でも、ちゃんと字幕にも書いてあったぜ、闇の騎士って。
あやしいもんだ。
意固地だねえ。なんでそんなにこだわるの?
夜のシーンが艶やかっていうか、やたらなまめかしいしのよ。
監督が暗い映像に命をかけているようなクリストファー・ノーランだからな。
トゥーフェイスの顔も強烈だったなあ。
人間のくせにちょっとターミネーターみたいでな。
ジョーカーの演技ばかり話題になっているけど、私はそっちに気を取られちゃった。アホ面エッカートがトゥーフェイスをやるなんて!
ああ、バットマンと宿敵ジョーカーの闘いには目を見張るものがあるけど、今回の影の主役は意外にもゴッサム・シティの検事、トゥーフェイスだった。
ゴッサム・シティを浄化しようとして立ち上がったのに、理想論だけじゃうまくいかないって思い知らされて、徐々に悪に手を染めていく。
お前はダース・ベーダーか!みたいな展開。
顔の半分が焼け爛れて半分が素顔のまま残っている。そこに、善と悪の葛藤が象徴的に表現されている。アメリカのコミックとか映画ってこういうわかりやすさがあっていいよねえ。
一方、いくら正義の味方を気取ったところで、かえって犯罪は増えるばかりで、バットマンは人間的に悩んじゃう。細菌を撲滅しようとワクチンを打ったらもっと強い細菌が現れたようなもんだな。
ジョーカーみたいに純粋悪の権化のような人間まで現れるし、バットマンの偽者は現れるし、恋は三角関係に陥るし、すごいボリューム感のある映画。
ごった煮みたいな話なのに、監督のクリストファー・ノーランはしっかりと整理して格調感さえある映画に仕上げた。見事だ。
一瞬も飽きさせず、かといって混乱もさせない。
あのジョカーは「ノーカントリー」の主人公を凌駕するくらいの不気味さだったし。
血も涙もない。それどころか、金銭欲もない。権力欲も何もない。
およそ人間的なところがない。悪の感情だけで動いている。
なんで、最近の映画って、ああいう究極的に救いのない人物を悪者に造型するようになったのかしら。
日本でも、「誰でもいいから殺したかった」なんてうそぶく犯罪者が増えてきたじゃないか。正義の味方だったはずのイラクのアメリカ兵は悪者みたいになっちゃったし、そういう社会全体を覆っている行き詰った時代の空気を制作者が敏感に感じているってことだよ。
そこをうまくすくいとって極上の娯楽映画に転化するんだから、アメリカ映画もまだまだ隅に置けないわね。
理屈じゃなく、空気として表現に取り込んでしまうところに脱帽しちゃうんだ。
単純なヒーローっていうのも、もう望まれていないのかしらね。近頃のヒーローはみんな人間的に屈折しちゃってるけど。
フェリーの危機を救うのが、バットマンじゃなくて、乗船者たち自身だっていうのがまた肝でな。一人の英雄じゃどうにも救いようがない世界。せめて、人々の善意を信じたいという、涙がちょちょぎれるような希望が、かえって世界の絶望感を誘う。
そう。勝っても全然爽快な映画じゃないの。
それがいまっていう時代なのさ。
ヒーローがピカピカなヒーローでいられたころが懐かしいわね。
まったく、俺も質屋通いしていたころが懐かしい。
って、何で過去形で言うの?いまでも通っているくせに。
お、知ってたのか。


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「赤い風船」:吾妻橋一丁目バス停付近の会話

2008-08-23 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

さすが、風船屋。いろいろな色の風船があるな。
私の好きなのは、何と言ってもシンプルな赤い風船だけどね。
おいおい、旅行会社の回し者みたいなこと、言うなよ。
ああ、そういうツアー・ブランドもあったわね。
行くなら、どこがいい?
そりゃあ、パリよ、パリ。赤い風船でパリなんて、最高にロマンチックじゃない。
アルベール・ラモリスの「赤い風船」みたいにか?
そう。真っ赤な風船がパリの空の町並みをふわふわ、ふわふわと飛んで。
それだけの映画。
それだけで十分。50年以上前の映画とは思えないほどくっきりとした美しい映像で蘇っていたわ。
噂だけは聞いていた幻の名作ってやつをようやく観られた満足感はあるけど、そんなに感動的な映画だったか?
あたりまえじゃない。かわいい男の子と赤い風船の交流なんて、これ以上誌的な関係が世の中にある?しかも、場所はパリよ、パリ。これ以上、ふさわしい場所が世の中にある?
まあ、たとえば吾妻橋よりは絵になるかな。しかし、物語が単純すぎてなあ。
単純なんじゃないの、シンプルなの。
どこが違うんだ?
シンプル・イズ・ベスト。この映画は、上映時間も短いし、話もシンプルだけど、それだけに心に訴えかけてくるものは深いのよ。なんて豊穣、なんて優雅。だから、いまだに名作として語り継がれているんじゃない。
まあ、ワン・アンド・オンリーの映画で、これやられちゃうと、他の映像作家が何をつくろうが風船をモチーフとする限り、この映画を超えることは不可能だけどな。
そう、しゃちほこばった言い方しないでも、ただ単にスクリーンに流れている映像に身をまかせているだけで、至福の時間が過ごせると思わない?
眠くもなるけどな。
えー、信じられない!
って驚いたときのお前の顔のほうが信じられなーい。
余計なお世話よ。とにかく、この映画の良さがわからない人間は、馬に蹴られて死んじまえ。
同時上映が「白い馬」。これも少年と馬の友情を綴った短編映画。これに比べれば「赤い風船」はずいぶんと洗練された印象ではあった。
「白い馬」は習作、あの映画があったから秀作「赤い風船」が出来上がったのよ。あの、見事なラスト。震えるほどの映像。
CGなんてなかった時代だろうに、あれはどうやって撮影したんだろうな。
この風船屋さんで聞いてみようか。
風船だけに、せんの風になったんだ、なんてね。


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「接吻」:東駒形一丁目バス停付近の会話

2008-08-20 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

駒形橋っていえば、有名な句があるな。
何?
「君はいま 駒形あたり ほととぎす」。吉原の花魁が恋しい人を待ちかねて詠んだものらしいぜ。
へえ。あなたにしては、珍しく艶っぽいこと、言うのね。
珍しく、とは何だよ。男女の仲なら俺にまかせておけっていうの。
お、そうきたか。じゃあ、聞くけど、万田邦敏監督の「接吻」の男女はいったいどういう関係なのよ。
陰惨な殺人で刑務所に入った男をテレビで見ただけで好きになってしまう女の話だろ。あ、同類!って思っちゃったんだな。広い世間にはそういうきっかけで始まる男女関係もあるだろうさ。
何、それ?説明にも何にもなっていないじゃないの。テレビで見ただけであそこまで執拗に追いかけるなんておかしくない?結婚まで迫るのよ。
おかしくない。韓国映画にだって刑務所の中の男に巷の女が惚れるという、同じようなプロットの映画があったぜ。
キム・ギドク監督の「ブレス」でしょ。たしかに似たようなシチュエーションの話だけど、あっちは刑務所の面会室であーんなことやったり、こーんなことやったり。現実にはありえないようなとっぴな話だった。それに比べると、「接吻」は結構リアリティのある描き方をしていたわ。
いやいや、「接吻」だって、現実には刑務所の中であそこまではさせないだろうと思ったけどな。
ラスト・シーンのことでしょ。現実的とか何とかより、あの面会室の中の衝撃的な展開は何なのよ。あれは、いったいどう受け止めればいいの?
女の思いが男の思いを越えちゃったってことだな。自分のものにするにはもうああするしかないっていう、へびのような女。言ってみれば、あの女は現代の阿部定なのさ。こわっ。
それで終われば、あなたが言うとおり、広い世間にはそういうこともあるだろうで済んでいたかもしれないけど、本当の衝撃はそのあとの展開よ。
俺もああくるとは思わなかったけど、そうやって女という生き物は新しい獲物を見つけて生き延びていくのかと思うと、背中が凍ったね。
その“女”っていうのは、映画の中の女?一般的な女?それとも、ひょっとして私のこと?
それは言わぬが花だろう。
あ、いきなりフェミニストのふりして。やーな男。
その得体の知れない女を小池栄子がハード・ボイルに演じていて最高だったね。
そう、そう。情緒纏綿っていう感じゃないのよね。なんか乾いてる。男のほうの過去は結構説明されるのに、女のほうの過去はほとんど説明されないからかしら。
手玉に取られるのが、豊川悦司、仲村トオルっていうんだから、贅沢だ。上出来なスリラーを観たような感触が残る。
「君はいま 駒形あたり ほととぎす」なんていう悠長な世界ではなかったわね。
いいように操られる情けない男にしてみれば、「君はいま 刑務所あたり トホホすぎ」って感じかな。
うーん、意味わかんない。いつものあなたに戻ったわね。



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「ひゃくはち」:本所一丁目バス停付近の会話

2008-08-16 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

LIONの文字を見ると、学生のころ、野球部の連中がよくライオンの洗剤でユニフォームを洗っていたのを思い出すなあ。
試合に出られない補欠選手なんて、それだけで高校3年間過ぎちゃうのよね。
そういう縁の下の力持ちにも、たまには光を当ててもいいんじゃないかと思っていたら、ついに出てきた、補欠野球選手映画「ひゃくはち」。
野球の縫い目は煩悩と同じ百八あるから、「ひゃくはち」。なんかごじつけのような気もするけど。
それくらい稚気あふれる高校野球映画ではあった。
強豪ひしめく名門野球部で、試合に出るどころか、ベンチに入ることも夢の補欠選手たちのほろ苦くも滑稽な物語。
ベンチ入りギリギリの背番号20をもらってあんなに感激するんだもんな。
もらえない選手は、大泣きする。ベンチに入れるかどうかってだけなのに。
それも青春。あれも青春。
「無駄に前向きなやつら」とか言われながら、彼らなりにチームに貢献しようとする涙ぐましさ。
「楽しいか」と聞かれて即座に「楽しくないです。ほぼ、苦しいです」と答える。そうさ、それがほんとの青春なのさ、フフフ。
なに、ひとりで納得してるのよ。
甲子園はいまや、熱戦の真っ最中だけど、その底辺には彼らのように、何ひとつ報われることなく黙々と部活に励んでいるやつらがゴマンといるってことだよ。
黙々、っていうほどストイックじゃなかったわよ。タバコも吸えば女の子ともいちゃつくんだから、見つかったら野球部廃部もんよ。
まあ、まあ。そう目くじら立てるな。社会に出れば出たで、注目を浴びることなく、平凡な人生を送っていくんだろうから、それくらい羽目をはずしてもバチは当たらないだろう。
ずいぶん、彼らの肩を持つのね。
何も野球選手に限らず、大半の人たちは野球で言えば補欠選手みたいな人生を送るわけよ。これが、共感せずにいられるか、ってんだ。
他人事とは思えない?
ぜーんぜん、思えないね、俺たち下流社会の人間には。
だからって、ふてくされてばかりいないで、無駄でもいいから前向きに生きていこうよ、っていう勇気をもらえるくらいには、いい映画だったかな。
竹内力が名監督なのか迷監督なのかわからない野球部の監督を怪演するかと思えば、光石研が息子のベンチ入りを喜ぶ父親役で相変わらずいい味出してるし、なかなか隅に置けない映画だったぜ。
野球で言えば、甲子園に出るほど隙のない映画ではないけれど、地区大会を沸かせるほどにはいい映画だったかな。
なんだ、その微妙な感想は。やっぱり、男じゃなくちゃわからないのかねえ、万年補欠の切なさは。
それほど言うなら、あなたも彼らを見習って、せめて身の回りのものは自分で洗濯したら?
余計なお世話だ。ライオンの洗剤とコイン・ランドリーさえあれば俺は生きていける。それくらいには清潔な人生を送ってるぞ。
煩悩だらけのくせに。



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