チャン・イーモゥ監督の初恋映画といえば?
「初恋のきた道」。
そう。誰だって、あの映画と比較したくなっちゃうよな、「サンザシの樹の下で」を観ちゃうと。
同じような題材の映画を撮った時点で、彼はもう負けている。
まあ、まあ。そう決め付けるな。今回は、文化大革命を背景に持ってきたところがミソだ。
でも、文化大革命の是非を問うような映画じゃない。「ノルウェイの森」における学生運動程度の扱いと見たけど。
ピュアな思いを描くんだから、あまり政治的な主張を盛り込むのは野暮だってことだろう。
ピュアもピュア。ピュアすぎ。ほとんどカマトト。
かわいい女の子を見ると、お前はすぐ、そういう風に対抗心を燃やすけど、相手はティーンエイジャーだぜ。くるくる変わる表情を見ているだけで、心が癒されるっていうもんだ。
なに、あなた、ロリコン?
そういうことじゃないだろう。素直に見れば、いまどき珍しいくらい純粋ないい話じゃないか。
いちばんわからなかったのは、この男女の暮らす村と町の位置関係。すごく遠いような感じもするし、すぐに行き来できるような感じもある。だから、二人の距離がどのくらい離れているのかわからない。
地理上の距離は、恋する二人にとって心の距離でもあるわけだから丁寧に教えてほしかった気はするよな。
日本人にはよくわからなかったけど、中国人ならわかるのかな。そしてあのころのノスタルジーに酔うのかしら。
日本でいえば、「コクリコ坂から」のように?
そうとう無理な比較・・・。でも、ここのところ、ちょっと前の時代を描く映画が続いたけど、それって、なかなか微妙だなって気がするわね。
「初恋のきた道」は、年取った主人公が昔を語るっていう形式を取っていたけどな。
そう、そう。あの構造があんがいミソだったんだなって、いまにしてわかる。
それなら許せる?
許せるとか、許せないとかの問題じゃなくて、余計なものを捨象してピュアな思いだけを語るにはああいう枠組みが必要かもしれないって思ったの。ノスタルジーにスーッと入っていけて、無理がなかったっていうこと。
たしかに、あそこまで物語に観客を引き込む力は「サンザシの樹の下に」にはなかった。それは認める。でも・・・。
でも?
でも、あの女の子はかわいかった。
それは認める。