【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ルンバ!」:大久保通りバス停付近の会話

2010-08-04 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

マッコリみたいなお酒を飲むと、気分がよくなって踊り出したくなっちゃうんだよな。
どんな踊り?
たとえば、ルンバとか。
マッコリとは関係ないけどね。
いや、「ルンバ!」っていう強烈な映画を観ちゃったあとだからさ。
たしかに、ベルギー人とカナダ人の道化師ユニット“アベル&ゴードン“が監督、主演を務めた映画「ルンバ!」は、強烈としか言いようのない個性的な映画だった。
「お嫁サンバ」も真っ青!
それも関係ないし・・・。
オリジナリティとはこういうものさ、っていうのをこれでもか、これでもかと見せつけられるような映画。
それは言えてる。
何十年も映画を観続けてきたはずなのに、世の中にはまだこういうジャンルの映画があったのかって発見する驚き。
ダンス愛好家の夫婦が、ダンス大会で優勝した直後に自動車事故に遭い、夫は記憶喪失、妻は片足を失い、悲惨な経験をするっていう話。ストーリーだけ追うと、どう見ても悲劇なんだけど、映画はなんとも奇妙なテンポと味わいに満ちた喜劇になっている。
放り投げた花が自分のところに戻ってくるなんていうギャグひとつにさえ有り余る才能を感じちゃうんだから、凄い。
チャップリンのようでありながらチャップリンではなく、ジャック・タチのようでありながらジャック・タチでもなく、ルイス・ブニュエルのようでありながらルイス・ブニュエルではなく、エミール・クストリッツァのようでありながらエミール・クストリッツァでもなく、アキ・カウリスマキのようでありながらアキ・カウリスマキでもないという信じられない映画体験。
要するに、どんな映画にも似ていない。
まったく、こんな悲劇を笑っていいものかと思うんだけど、とにかくオフビートな笑いに満ちている。
笑いといっても、人を小馬鹿にするような笑いじゃなく、真情があふれているから、他人の不幸を笑いものにするような後ろめたさがないんだろうな。
事故にあったあと、幻想の中で二人がルンバを踊るシーンなんて、これ以上ないくらい切ない名場面だもんね。
「お嫁サンバ」も尻尾を巻いて逃げる。
だから、関係ないでしょ!
セリフがまた、サイレント映画かって思うほど、極端に少ない。
登場人物が寡黙っていう点では、アキ・カウリスマキの映画以上なんだけど、その分、肉体がこれでもかっていうくらい饒舌に動き回って、観ている側があっけにとられるほど。
映画の精神は肉体に宿る。
妻なんて、「ポパイ」に出てくるオリーブのように細長い手足をしてるんだけど、それがそのまんま、漫画映画の中のオリーブのように変幻自在に動くんだからビックリヒャックリ。
ミュージカル映画は、「ウエストサイド物語」で個人の技を見せるものから集団演技になってつまらなくなったっていうのが定説だけど、この映画は、まさに集団演技の映画を“個”の存在に戻してくれたっていう印象だよな。
個人の技に酔わされる映画。
マッコリを飲んだあとのように酔わされる。
だから、マッコリとは関係ないって。



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ふたりが乗ったのは、都バス<橋63系統>
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