西麻布のランドマークといえば、HOBSON’Sだ。
あま~くとろけるようなアイスクリーム。
今年いちばん、あま~くとろけるような映画タイトルといえば「リリィ、はちみつ色の秘密」だろう。
主演が天才子役のダコタ・ファニングだし、どんなファンタジックなおとぎ話が始まるのかとウキウキしながら観始めたら、4歳のときに自分の母親を撃ち殺してしまった少女の物語なんだから、驚いたわ。タイトルから思い浮かべるイメージとあまりにも違い過ぎるんじゃないの?
まあ、まあ。そう神経質になるな。昔々、「新幹線大爆破」なんていうたいそうなタイトルの日本映画があって、派手に新幹線がぶっ壊れる映画かとワクワクしながら観に行ったら結局新幹線は全然破壊されなかったなんてこともあったんだから。
まあ、そういう意味では、この映画は、ちゃんとはちみつは出てくるし、少女の名前はリリィだし、タイトルに偽りありとまでは言えないわね。
タイトルの響きが柔らかいわりには内容がシビアだっていうことだろ。
うん。自分の母親を過って殺した苦悩をかかえたまま14歳になった少女が父親の虐待に遭ってメイドの黒人女性とともに家を出るという話。
人種差別についての映画でもある。設定が1964年。ちょうど黒人に公民権が与えられたばかりで、白人の黒人への偏見はまだまだ激しい。
このまえ観た「ダウト」と同じ時代設定よね。
あの映画の中でも黒人は重要な役割を果たしていた。黒人がからんでいたから、メリル・ストリープは無意識のうちに人種差別的な行動をとったんじゃないかと俺はいまでも邪推しているんだ。
そういう白人たちの偏見に囲まれながらも、この映画に出てくる黒人女性たちは背筋を伸ばして生きている。
演じるのがクイーン・ラティファとかジェニファー・ハドソンとか、日本人でいえば和田アキ子級の大物そろいで、おいおい、超ド級黒人女優大集合かよ、と思っちゃった。
監督自身が黒人女性らしいから、みんな共感して集まっちゃったんじゃないの?
その中でがんばらなきゃいけないんだから、子役といえど、やっぱりダコタ・ファニングくらいのレベルが要求される。経験と度胸が要る。
ベテラン子役。見るからにのジョディ・フォスターのような道を歩みそうな雰囲気。
安達祐実みたいになりませんように。
で、心にキズを負った少女は気丈な黒人たちと彼女たちの育てるみつばちに囲まれて心が癒されていくというお話。
それって、最近の日本映画で言えば「西の魔女が死んだ」に物語の構造が似てない?
心にキズを負った少女が自分とは違う文化の女性と自然を相手に暮らしていくうちに心が回復していくという意味では、ちょっと似ているかもしれないわね。
でも母親を殺したとか、父親に虐待されているとか、センセーショナルな題材のわりに、演出には、はちみつのような粘っこさがない。メリハリも足りない。
黒人女優たちにも、いつものような暑苦しいほどの存在感が消えて、どこか小ざっぱりしているわね。
タイトルどおり、みつばちが出てくるわりに「ミツバチのささやき」のような詩情も感じられないしな。
「チェンジリング」のイーストウッド監督くらいのこだわりがあれば、傑作になったかもしれないわね。
演出はまだまだ、脇が甘い。
甘いタイトルは、映画の内容の甘さではなく、演出の甘さを暗示していたのね。
HOBSON’Sのアイスクリームみたいな甘さなら歓迎なんだけどな。
でも、食べ過ぎるとクイーン・ラティファみたいな体型になっちゃうかも。
そりゃ、ダメだ。せめて、ジェニファー・ハドソンくらいにしておいてくれ。
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