あんなところでコスプレして、最近の若者は変身願望があるのか。
そりゃあ、年齢に関係なくあるわよ。変身というより、現実とは違うもうひとつの別の世界を持ちたいっていう感じかしら。
ああ、「テラビシアにかける橋」の子どもたちみたいにか。
そうそう。小学校でいじめられている少年と転校生の少女が、森の中にテラビシアという想像上の国をつくっていくという話。
俺たちが子どものころは、森の中に秘密基地とかつくったもんだが、それの延長線上だな。
まあ、そんなところね。でも、ある日、少女に悲劇が訪れる。
少年はその悲劇を少女からもらった想像力で乗りこえていく。
めちゃくちゃ感動的な物語よね。
というか、ちょっとわかりやすすぎないか。
いいのよ、子どもたちに観せるには、これくらいわかりやすくて。
あ、子ども向けの映画だったのか、この映画は。
あたりまえじゃない。原作は児童文学の最高傑作なんだから。
そうなの?俺なんて、最初っから橋をかけときゃよかっただけじゃん、と思っちゃったけどな。
それは、禁句でしょう。
それにしても、描写に深みがないというか、監督の力量が感じられないというか、魅力的な物語なんだから、もうちょっと演出に工夫があってもよかったんじゃないのか。
だから、あまり複雑にすると子どもたちがついてこれないんだって。
しかし、少女に訪れる悲劇なんて、口で語られるだけで、もう少し手に汗握るサスペンスがあってもよかったと思うし、それがないと残された少年の悔恨がいまひとつ胸に迫ってこない。
いいのよ、少女役のアンナソフィア・ロブが魅力的であれば。
ああ、ちょっと釣りあがった目が印象的な金髪の少女か。あの子は買いだ。案外、ジョディー・フォスターみたいな女優になっていくんじゃないのか。
まるで、私の幼少時代を見ているみたいだったわね。
うーん、そういうふうに女優と自分を比べる癖、やめてくれない?
ごめん、想象力豊かなもんで。
というより、妄想力豊かなんだよ、お前は。
少年の妹役の女の子も、ちょっと生意気でかわいかったでしょ。
フォークシンガーくずれみたいな学校の音楽の先生とか、案外いいことを言う高齢の教師とか、おもしろくなりそうなキャラクターがたくさんいたのに、みんな一通りの描き方で終わっているのも、惜しかった。「テラビシア」という国の描写も、自然豊かな風景というだけで、あまり新鮮味がない。
そういう意味では、ファンタジー映画の入門篇ていう感じかしら。
そうだな。これを観た子どもたちには、ファンタジー映画の真髄はこんなもんじゃないとわかってもらうために、もう少し大きくなったら「パンズ・ラビリンス」でも観るよう薦めたいな。
うわっ。一気にそこまで行く?ある意味、究極のファンタジー映画。
想像力がなぜ必要か、極限の答えがあそこにはあったような気がしないか。
たしかに、あれは想像力がなければ生きていけないほどの、のっぴきならないシチュエーションだったもんね。
残念ながら、この映画にはそこまでののっぴきならなさはないんだ。
あそこでコスプレしている若者たち程度にはのっぴきならなさがあると思うけどね。
のっぴきならなさの入門篇な。
この際、私もコスプレしようかしら。
魔女な、魔女。
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