絵画館の建物って、サンフランシスコ市庁舎に似ていないか。
そうかなあ。
威風堂々としたシルエットは似ているだろ?
真ん中がふくれているところぐらいじゃない?
でも、実物のサンフランシスコ市政委員ハーヴィー・ミルクと彼を映画で演じたショーン・ペンくらいは似ているだろ?
あいかわらず、例えがよくわからないけど。
こら、そうやって差別するな。
してないし。
ハーヴィー・ミルクっていえば、アメリカで初めて公職に就いたゲイなんだぞ。
彼の等身大の姿を描いた映画が「ミルク」。本人はちらっと写真が出てきただけだけど。
でも、人懐こそうな笑顔からは時代のカリスマになった魅力が十分伝わってくる。
たしかに、そのカリスマ性は、映画で彼を演じたショーン・ペンからも十分感じることができたけどね。
オーバーな仕草はいっさいなく、ほんの1、2センチ首を曲げたり、2、3センチ手を動かすだけで、ゲイであることをなんともナチュラルに感じさせるなんて、たいした芸だ。
あれ、いま、駄ジャレ言った?
言わない。
だよねえ。ショーン・ペンの演技は、ゲイを演じたっていう範囲にとどまらず、人間として魅力にあふれてた。
ユーモア、包容力。
気骨、精神力。
最初から成功したんじゃなく、何度も何度も落選を繰り返し、私生活的にも破綻を繰り返していく。それでもエネルギーを失わず、挑戦していく姿は、俺たちヒネた観客にも勇気を与えるよな。
“信念”よね。ゲイの存在を認めさせる以上に、世の中を変えたいっていう信念が伝わってくる。ゲイかどうかを越えてそういう信念を持っている人間は強いっていう普遍の法則。
それは、ハーヴィー・ミルク本人だけじゃなくて、この映画をつくったスタッフにも言える。
監督のガス・ヴァン・サントもゲイなんだってね。だからってわけでもないだろうけど、とにかくこの映画は芯に強いメッセージを持っていてそれが片時もブレない。
描き方としては決して奇をてらわず声高にならず、実にまっすぐなんだけど、それがまた映画の誠意を感じさせる。
でも、どうしてハーヴィー・ミルクは写真屋を開いたのかしら。
はい?
彼がサンフランシスコに来て最初にやったことといえば、写真屋を開くことだったんだけど、ミルクっていうからには牛乳屋のほうが自然じゃない?
おもしろいこと言うねえ。おもしろくない顔して。
素朴な疑問よ。
そんなこと、ちょっと考えればすぐわかる。
そう?
彼はゲイとしていつも人の目を気にしながら生きてきたんだぜ。見る、見られるを繰り返すうちに、無意識のうちに人を写しとる写真に興味を持ってしまったんだ。
ほんと?
知らないけど。
なにそれ。
だって、ハーヴィー・ミルクみたいな人間がいたなんて、この映画で初めて知ったんだもん。
40年近くも生きてきて?
40年生きてきて誇れるようなことは何もしてこなかった・・・。
あれ、それショーン・ペンのセリフじゃない。
ああ、ハーヴィー・ミルクは40過ぎてか頭角を現したんだ。俺にもまだまだ未来は開けてるよな。
なんか、むりやり自分に言いきかせてる?
ヒヒヒヒ。
あーあ、ミルクの笑顔とはえらい違いね。
こら、差別するな。
してないし。
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