【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「イカとクジラ」:勝島バス停付近の会話

2007-01-07 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

船がいっぱい繋留されてるけど、汚い東京湾でも魚なんて採れるのかしら?
結構採れるぜ。アナゴにシャコにアオヤギ、アサリ、メゴチ、スズキ・・・。
でも、さすがにイカとかクジラとかは採れないわよね。
それは、魚じゃないんじゃないないのか?
イカとクジラの格闘なんて言われても、ピンとこないわよね。
だから、あまり気乗りせずに観たんだけど、身につまされるところもあるぜ、アメリカ映画の「イカとクジラ」。
作家同士の夫婦が離婚して2人の息子たちは奇行に走る、っていう家族ものなんだけど、あの夫、たいして売れもしない本を書いてるのに、一般の人々を俗物呼ばわりして、最低なのよね。
最低なのは、妻のほうだろう。夫に隠れて浮気を繰り返して、まったく俗物そのものだよな。
でも、その妻の書く本は売れてるのよ。
それがどうしたんだよ。いい本が売れるとは限らない。レベルの低い本のほうが大衆受けがいいっていうのは、事実だぜ。
だけど、家族団らんしてるときにペダンチックな本の話をしたって、息がつまるだけよ。
くだらないお喋りするより、ディケンズやT・ハーディの話をするほうが子どもたちの将来のためにいいだろう。
そんなこと言ってるから、こんな兄弟ができちゃうんじゃない。
どんな兄弟だよ。
16歳の兄はピンク・フロイドの歌をパクッても平気で僕の曲だって言ってコンテストで歌っちゃうし、弟は12歳なのに酒びたり。
だからそれは、おまえが浮気ばっかり繰り返すからだろう。
あなただって、人をバカにするくせに、ピンク・フロイドの曲も知らないで自分の息子がつくったって、信じこんで、笑っちゃうわ。
わかった、わかった、おまえとはもうやっていけないぜ。別れよう。
・・・て言って別れちゃうのようね、この映画の夫婦は。
あ、そうそう。俺たちの話じゃなかったな。映画の話だったな。
でも、ひとごととは思えないのよね。
ああ。俺たちの会話の中にも「勝手にしやがれ」とか「野生の少年」とかの話題、よく出てくるもんな。
デートで「ブルー・ベルベット」を観に行ったりして・・・。
映画としてはおもしろいけど、青少年がデートで観る映画じゃないな。
それを子どもに薦めちゃうんだから、この親は空気が読めないというか浮世離れしているというか。こういう親に「離婚するから週のうち半分は母親と、半分は父親と暮せ」って突然言われても困っちゃうわよね。
そんな親にならないためにも、やっぱり、俺たちは結婚なんかしないで、このままの関係のほうがいいかもね。
でも、あの兄弟、結構いじらしくて、かわいいのよね。
そうそう。親がダメな割りにいい子に育ってるな。
ダメな親でも子は育つ。ああいう子どもたちならいてもいいかも。
結婚しないで子どもだけつくるか?
そういう話じゃないでしょ。キーワードは「イカとクジラ」なんだから。
ああ、あのラスト・シーン。たしかにキーワードは「イカとクジラ」だった。どう読むかは人によって違うだろうけど、そうやって人は成長していくんだ、って俺は読んだね。
問題にちゃんと対峙する覚悟ができたってことね。
この間観た「リトル・ミス・サンシャイン」もしょうもない家族の話だったけど、この映画もまた違った意味でしょうもない家族。
というか、家族ってしょうもないものなのよね、結局。
でも、いとしいものなんだよな。シリアスな話なのに、どこか温かみを感じるっていう。
そうね。ちょっとリアルな「リトル・ミス・サンシャイン」て感じでこの映画、想像以上におもしろかったわ。単館でしか公開していないのがもったいないくらい。
やっぱ、俺たちも家族になるか。
なに、そのふらついた発言。
じゃあ、この船で俺たちのイカとクジラを探しに行くっていうのはどうだい?
免許もないのに?


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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして (kuroneko)
2007-01-09 01:35:57
初めましてkuronekoと申します。
TB頂きましてありがとうございます。
こちらも僭越ながらさせて頂きました。
ユニークなブログですね。関心しました。
たまにお邪魔するかもしれません。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。 (ジョーズ)
2007-01-09 22:50:17
■kuronekoさんへ
たまにと言わず毎日でもお邪魔してください。
そんなに更新していませんが・・・。
身に・・・ (kimion20002000)
2007-09-23 22:04:52
TBありがとう。
そうなんですよね。
なんか、身につまされる映画なんですよ。
あんまり、カップルで見たくない(笑)
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-09-24 08:54:11
■kimion20002000さんへ
カップルで観るのもつらいですが、ひとりで観るのもつらいですよね。でもなかなか含蓄のある映画でした。
(〃⌒ー⌒)/どもっ♪ (miyu)
2007-09-30 21:16:15
いつもお世話になっております。
確かにちょっと身につまされちゃうお話でもありますよね。
うんうん、家族ってしょうもないもんなのかもしれません。
子供って親のしょうもなさになかなか気付けないけど、
それに気づいた時成長するのかもしれませんね~。
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-10-01 21:36:08
■miyuさんへ
まったく家族とは洋の東西を問わず、やっかいなものですね。思わぬ拾い物の映画でした。
こんにちは♪ (AnneMarie)
2007-11-02 14:59:03
やっとこの映画を観ました~。
私は、離婚というテーマでも「リトル・ミス・サンシャイン」ぽい映画なんだと思い込んでました。
ところが全然笑えない。
リアルな映画でした。
そして、コチラの記事を拝見してもう一つ、激しく思い込んでいたことが判明!!!!
お二人はご夫婦じゃなかったんですね。
コメントありがとうございます。 (ジョー)
2007-11-03 16:56:58
■AnneMarieさんへ
男女の仲は他人にはなかなか計り知れない、ということで・・・。
Unknown (石田崚真)
2019-07-16 16:38:19
ウィラ大井
Unknown (成山裕治)
2019-07-16 16:38:52
辻松裕之

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