Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2021」

2022年01月01日 | 音楽
 知人からチケットをもらったので、大晦日恒例の「ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2021」に行った。開演は午後1時、終演は午後11時25分という(大小の休憩をはさみながらの)マラソン・コンサートだ。体力と集中力がもつかどうか心配だったが、実際には大して苦痛はなかった。

 あらためていうまでもないだろうが、このコンサートはベートーヴェンの9曲の交響曲を第1番から第9番「合唱」まで順番に演奏するものだ。今回は19回目。指揮者はいろいろ変遷があったが、最近は小林研一郎がひとりでやっている。オーケストラも当初はちがったが、最近は「岩城宏之メモリアル・オーケストラ」という特別編成のオーケストラがやっている。コンサートマスターはN響の篠崎史紀。管楽器を中心にN響の首席クラスが多く入っている。他のオーケストラの首席奏者たちも散見される。

 第1番は弦楽器の音が汚く、先行きが案じられた。第2番では冒頭の和音が堂々と鳴り、ひとまず安堵した。第3番「英雄」ではオーケストラがまとまり、小林研一郎の指揮も雄弁になった。第4番が意外に良かった。わたしはこのコンサートに行く前に「ベートーヴェンの9曲の交響曲の中で自分はどれが一番好きだろう」と自問したが、第4番の演奏を聴いて「案外、第4番かもしれない」と思った。第4番は第3番「英雄」その他とちがってストーリー性がないので、その分清新に聴くことができるのかもしれない。

 第5番「運命」は深刻でヒロイックな演奏だった。語弊があるかもしれないが、昭和の時代を感じさせる演奏だった。第6番「田園」は、どうしたわけか(というより、小林研一郎には時々あることだが)、全般的に音を抑えて、(第4楽章以外は)ソット・ヴォーチェで通した。人為的で音が痩せるので、わたしはあまり好きではない。

 第7番は熱演だった。第8番も同様だ。ただ、第8番の第3楽章は第6番「田園」と同様に音を抑えて、優しく、まるで慰撫するように演奏した。それがわたしには過剰だった。もっとも、ベートーヴェンの「不滅の恋人」との関連が推測されることもあるトリオの旋律の、夢見るような演奏には、なにか感じるところがあった。第9番「合唱」は、こういってはなんだが、小林研一郎のスタミナ切れを感じた。

 ともかく、ベートーヴェンの9曲の交響曲を一気に聴くのは、稀有な体験だった。各曲が音楽へのまったく異なるアプローチで書かれていることが、空恐ろしく感じられた。

 小林研一郎が9曲全曲を指揮するのは今回で最後とのこと。聴衆とオーケストラの双方から「BRAVO」と書かれた布が振られ、盛んな拍手が送られた。
(2021.12.31.東京文化会館)
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