Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

大植英次/日本フィル

2024年06月09日 | 音楽
 ラザレフが振る予定だった東京定期が秋山和慶に代わり、プログラムもガラッと変わった。その秋山和慶が鎖骨骨折を起こしたので、急遽大植英次に代わった。プログラムは秋山和慶のものを引き継いだ。

 1曲目はベルクの「管弦楽のための3つの小品」。原曲は4管編成の巨大なオーケストラ曲だが、それをカナダの現代音楽作曲家ジョン・リーア(1944‐)が28人の室内アンサンブル用に編曲した。管楽器は2管編成が基本で、弦楽器は各パート2名だ。私見では、2名としたことがものを言っている。1名だとシェーンベルクの室内交響曲第1番のように各パートがソロ楽器のように動くが、2名だとそれなりの厚みがでる。

 この編曲はたいへんおもしろかった。原曲だと巨大なオーケストラが壁のように立ちはだかり、細かい動きは壁の中に埋もれるが、この編曲だと細かい動きがクリアに聴こえる。加えて、たとえばチューバのように、ドスのきいた低音にも欠けない。第3曲のハンマーはどうするのだろうと注目した。原曲どおり、ハンマーを使っていた。

 岩野裕一氏のプログラムノーツには、打楽器は3人と書いてあったが、実際には8人でやっていた。持ち替えをせずに、各楽器に演奏者を配置したのかもしれない。ただ時々4人以上が演奏している箇所があったようにも思う。

 2曲目はリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第2番。ホルン独奏は日本フィルの首席奏者・信末碩才(のぶすえ・せきとし)。音の輝かしさ、細かいテクニック、甘美なカンタービレのどれをとってもすばらしい。日本フィルのホルン・セクションは歴代、福川さん(日本フィル→N響→フリー)、日橋さん(日本フィル→読響)と名手を生んだが、信末さんは新たなスターの誕生だ。

 リヒャルト・シュトラウスのこの曲は1942年に作曲された。シュトラウスが帝国音楽院総裁を追われ、ガルミッシュに隠遁した際の作品だ。冬の時代の過ごし方として、たいへん興味深い。冬の時代の過ごし方は人それぞれだ。シュトラウスは限りなく美しい歌をうたうことを選んだらしい。

 3曲目はドヴォルジャークの交響曲第7番。大植英次は時に主観性の強い演奏をすることがあるが(まれに驚くほどデフォルメした演奏をすることもある)、今回の演奏は客観性を保った演奏だった。どっしりして、手ごたえ十分だ。ボヘミア的な要素は薄く、むしろドイツ的な構えの演奏だ。大植英次のそのような振れ幅の大きさは、師のバーンスタイン譲りかもしれない。
(2024.6.8.サントリーホール)

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