Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

治療選択と文献を読む数と出会い

2013年09月10日 | ひとりごと
先日、”有効かもしれない”治療をするかしないかで、ある科のお医者さんたちと10分くらいディスカッションをした。
何についてかは言わないけど、個人的にはその治療をやらないのが当たり前になっていて、何故自分がそう思っているかも忘れてしまっているくらいの話題だった。
慈恵ICUでは”有効かもしれない”治療についての話題はあまり出ないので、チョー久しぶりのlong discussion(10分だけど)だった。
で、ちょっと考えた。

ただし、
Phase IIIのRCTで有効性が示されていない治療のこととか、
Surrogate markerがどうこうとか、
First do no harmの話とか、
そんな話はつまらないので、やめておきますよ。

”有効かもしれない”治療を選択する人には2パターンあると思う。
一つは、その治療方法についての十分な情報を知識として持っていて、phase IIIで証明されていないことの問題点も理解した上で、自分なりに天秤にかけて、その治療を行うことを選択するパターン。
もう一つは、日本の学会に参加して聞いた話とか、薬屋さんからの情報とか、先輩に教わったからとか、その程度の理由で治療を選択していて、自分で調べたり文献を読んだりはしてないパターン。

この二つの鑑別は簡単。根拠を尋ねれば終了。
頻度も明白。後者が圧倒的に多い、はず。

で、こんな仮想研究を思いついた。
疾患Xに対して治療Yを行うかどうかについてアンケートして、その中から無作為にZ人ずつを選び、1ヶ月で読む文献の数を前向きに調査したらどうなるか。
XとYはありがちなやつで良い。例えば、
X=重症感染症、Y=ガンマグロブリン
X=敗血症性ショック、Y=PMX
X=ARDS、Y=ステロイド、シベレスタット
X=DIC、Y=トロンボモジュリン、AT III
X=脳梗塞、Y=エダラボン
X=SAH、Y=ファスジル
とか。いくらでもあるね。

XとYの組み合わせによっては、Z=10とか20くらいで有意差が出るんじゃないかという気がする。
あ、繰り返しますけど、”有効かもしれない”治療を選択する人すべてが後者とは言ってませんからね。
後者の方が多いだろう、という想像の話。

で、次にこう考えた。
文献をたくさん読んでいる方が、偉いのか?
患者予後を良くすることができるのか?
その根拠は?
うーん。そんな根拠は見たことが無いなー。
じゃあ、自分はなんで文献を読まないといけないと思っているんだろーなー。

あ。
分かった。

1:以前は自分も学会とか商業雑誌から情報を得て臨床をしていた。
2:文献を読んでいる人達に出会った。発言の内容が違った。文献を読むことの重要性を認識した。
3:読んでいると、書いてあることは基本的にどれも同じであることに気がついた。”有効かもしれない程度の根拠で治療を選択してはいけない”。

そっかー。
出会いが僕の治療選択を決めたんだな。

問題は、それが予後改善につながるのかどうか、だね。
いつか、証明はされるのか?
どうやったら証明できる?
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