Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

急速輸液がヘモグロビン濃度に及ぼす影響

2022年11月10日 | 循環
Quispe-Cornejo AA, Alves da Cunha AL, Njimi H, et al.
Effects of rapid fluid infusion on hemoglobin concentration: a systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2022 Oct 23;26(1):324. PMID: 36274172.


補液前後でHbの変化を報告している65研究のメタ解析。補液後にHbは1.33g/dl低下し、補液に反応しない患者群ではDO2も低下した。

問題:なぜ補液をするのか?
解答:前負荷を増やして心拍出量を増やすため。

問題:なぜ心拍出量を増やしたいのか?
解答:Hb*SaO2*CIで与えられる酸素運搬量を増やし、CI*SVRI-CVPで与えられる組織灌流圧を高くするため。

問題:補液は有効か?
解答:多くの場合で有効ではない。
・補液によって心拍出量が増えるのは50%
・Hbが低下するので補液の効果は限定的
・短時間で血管外に出ていくので効果も短期間
・CVPが上昇するので灌流圧の上昇も限定的
・肺水腫、組織浮腫、高Na血症など副作用がたくさん
・プラスバランスは予後悪化と関連。つまり生理学的な、サロゲートマーカーとしての有効性はあっても、患者予後を改善するかは不明。

補液は薬。
薬は有害。
有害なものは有益性の方が大きい時のみ使用。
この当たり前のことを知らない、知っていても忘れている人はすごく多い気がする。
補液すると目の前で血圧が上がったりするから気持ちはわかる。
でも医療は気持ちでやるものじゃない。

そして、気持ちをコントロールできるのは知識のみ。
コメント
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