Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

AKIへの介入を組織的に行ったRCT

2019年03月24日 | 腎臓
An Organizational-Level Program of Intervention for AKI: A Pragmatic Stepped Wedge Cluster Randomized Trial
Nicholas M. Selby, Anna Casula, Laura Lamming, et al.
JASN March 2019, 30 (3) 505-515.


イギリスの5施設のstepped-wedge cluster RCT(だんだん導入していき、導入前と導入後で比較)。AKI症例24000例。
・AKIのe-alert
・ケアバンドル
・教育プログラム
を導入した効果について検討、primary outcomeは30日死亡率。
結果は、死亡率に差はなく(オッズ日が1.04なので少し多いくらい)、診断された人数が増え、在院日数が短くなり、介入が多く行われた。

結論は、死亡率は減らなかったけどいろいろ良いことが起こった、という書き方なのだけど、それってちょっと違うんじゃなかろうか。
まずEBM的視点から言えば、primary outcomeに有意差がないのだから、それ以外の結果は仮説に過ぎないし。
それに、診断頻度が増えて在院日数が短くなるのは当然な気がする。逆に死亡率が減らないことが驚きなくらいで、つまりは介入に効果がなかった、ということではないのか。

ちょっと評価が難しい研究だ。
医療の質は改善したけど予後は改善しない。とても重要な話題ではある。
Rapid responseについての唯一の多施設RCTであるMERITで結果がネガティブだったのと、ちょっと似ているのかも。
多施設研究で質の改善をしようとしても実際は難しい、というのはあるね。そこだろうか。
コメント
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