パンと珈琲日記~整形外科じゃなくて成形~

パン焼きと珈琲を趣味とするある整形外科医の日記

Baby-led weaning

2011-02-11 21:15:21 | Weblog
Baby-led weaning (BLW)は実際に実践している方が日本でほとんどいないので英語の情報しかないに等しく、日本で行うにはかなり敷居が高いが、それほど難しいものではない。要はスプーンで与える離乳ではなく赤ちゃんが自分で食べ物を選んで持って食べさせる離乳、赤ちゃんが自分で遊びながら学ぶ離乳、あるいは自分の能力に応じた食べ物摂取を応用した離乳ということだ。

最初から固形物と言っても硬い物は無理でやわらかい果物ややわらかく煮た野菜を持てるサイズにして遊ばせておくことからはじめるとよいと思う。最初のやわらかさとしては大人の舌と口蓋でつぶせるぐらいの硬さにするとよいかもしれない。ただ、硬すぎると赤ちゃんが自分で判断したら食べられないし、食べないのなら無理に食べさせなくて良いので、やわらかくして食べさせるということに固執しなくてもよい。食べないのなら食べない、手で持てないのなら無理に持たせないで放置が重要だ。無理に持たせて無理に食べさせようとすると窒息する危険性もある。見ているうちに何が大丈夫でなにがまだ早いかなんとなくわかってくる。ここらへんは赤ちゃんとの阿吽の呼吸によるコミニュケーションだ。これが出来ないと無理をしてしまい窒息の危険性も高まる。このコミニュケーションは別の意味でも大事だ。自分はBLWにより子供との信頼関係が築けたと思う。

BLWは

1) 乳児の消化器は4~6ヶ月頃に固形物消化にも対応できるようになるので、6ヶ月頃ではマッシュしたものやピューレしたものをスプーンで与える必要はなく、固形物を与えてもいいだろう

2) だいたい6ヶ月ぐらいには知能もある程度発達しており、色々な物に興味を示すようになり親のやることを真似るようになるので自分で食べられるようになれる

3) 身体の発達に伴い乳児は自分で食べられるものを自分で判断する

などという考えに基づいている。

BLWの基本はその名のようにあくまでも「乳児主体」の離乳で乳児が欲しがるまま自然に離乳を図ることが重要だ。いついつ頃は何を食べさせてなど決まった「離乳」ではない。旧来の「離乳」の概念を捨てることが必要だ。だから育児・離乳を競争のように考えている、例えば「うちの子はまだ○○が食べれない、○○がまだ出来ない。発達は大丈夫か?同じぐらいの何々ちゃんは食べれるのに、、、6ヶ月なので早く○○を食べさせなければ、、、」と考えるような性格の方は向かないどころか、無理をしてしまうため危険だと思う。窒息で子供を殺したり、そこまでいかなくてもフラストレーションがたまるのでやめた方がいい。巷では極端な育児として1歳ぐらいまで母乳をあげておけば他はいらいない、と考えている方々もごく少数いるようだが、そこまで極端でなくても食べないなのならそれは乳児が欲していないため、大丈夫だし母乳を与えておけば問題ないという考え方ができないとBLWは不可能だ。それに食物で遊ぶので汚れる。この汚れを我慢できないようだとBLWは無理だと思う。いや汚れた赤ちゃんを見て楽しめるぐらいでないとBLWはできない。

固形物を与えて懸念されるのは窒息、誤飲であるが、きちんと座らせて食べるのを乳児にまかせて無理をしなければ大丈夫だ。ただ万が一のためにハイムリック、背部叩打などの対処法をきちんと覚えておく必要はある。でも窒息への対処を覚えておくことは従来の「離乳」でも同じことだろう。

思いつくままにまとまりなく書いてしまったが、最後に自分でBLWを実践して感じたことはBLWは一部、認知症の高齢者にも適応できる考えかただと言うことだ。高齢者の術後などでせん妄が強い時、BLWを知るまでは看護師や家族などに食事介助を頼んでいたりしていたのだが、誤嚥性肺炎をおこしてしまうことがしばしばだった。BLWを応用して食事時は最低限の手助けにして時間は何時間かかっても自分で食べさせるようにしたら誤嚥性肺炎が減少したような気がする。



※ パンの写真は本文と関係ありません(笑)。