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滋陰至宝湯、滋陰降火湯の比較

2008-08-13 01:45:49 | アンチエイジング

名称がとても似ているが効能は随分と異なる。どちらも薬価収載されているが効能の違いについてはよく知られていない。

滋陰至宝湯は逍遥散加味方であり、疏肝健脾退虚熱滋陰(あるいは養肺陰)止咳湯とでもいうべき方剤である。一方、滋陰降火湯は逍遥散たる柴胡や疏肝理気作用の香附子も配合されておらず、逍遥散加方ではない。滋陰至宝湯に配合されている化痰止咳の効能を持つ貝母も配合されていない。青を涼~寒薬、赤を温薬、グリーンを平薬で表記すると、

滋陰降火湯

生地黄 熟地黄 白芍 天門冬 麦門冬 白朮 陳皮 黄柏 当帰 知母

炙甘草 生姜 大棗 が組成である。

効能:滋陰降火

肺腎陰虚 陰虚火旺による痰の切れが悪い乾咳 盗汗 潮熱などが適応症であるとされる。

滋陰とは清熱の意味を持つ

滋陰すなわち養陰あるいは補陰とは陰虚の陽に対して相対的に少なくなった陰を増してやることを意味する。育陰などという用語もあるが、陰を補うことにより相対的に過剰になった陽を抑え、虚熱が出にくい状態にさせるのであるから、滋陰は清熱作用を持つことになる。滋陰至宝湯中の麦門冬、滋陰降火湯中の天門冬の養陰剤はいずれも涼寒の薬性である。

滋陰とは時として養血、養陰の滋陰血の意味を持つ

中国漢方の診断方法を弁証という。その中での気血津液弁証では「血」と「津液」は別個に扱われているが「津血同源」という概念もあり、実際の診療での用語として生津と養血を区別しないで養陰血あるいは簡便に養陰と述べる医師もいる。なぜなら津液も血も人体の「陰」に属するからである。この立場からすれば、滋陰至宝湯中の狭義の養血斂陰の組み合わせである当帰 白芍と養陰剤の麦門冬をひっくるめて養陰と呼んでも誤謬はないようである。ただし、狭義の養血斂陰の当帰 白芍の組み合わせだけでは直接の清熱作用はない。なぜなら当帰は温薬であるからだ。飛躍して考えれば血は津液を生むという中医学の理論からすれば、やや遠回りの清熱作用はあるともいえる。それで虚熱をより清熱させる目的で、滋陰降火湯には養陰清熱剤の麦門冬に加え天門冬、清熱瀉火薬の知母、黄柏が加えられている。生地黄、知母には滋陰潤燥の働きがあり、養陰剤としての側面をもつ。

以上をまとめれば

滋陰至宝湯

柴胡 当帰 白芍 白朮 茯苓 甘草 薄荷 生姜 香附子 知母 地骨皮 貝母 麦門冬 陳皮

滋陰降火湯

生地黄 熟地黄 当帰 白芍 天門冬 麦門冬 白朮 陳皮 黄柏 知母

炙甘草 生姜 大棗 

疏肝解鬱作用

益気健脾作用

滋陰血作用

退虚熱作用

備考


アンチエイジングの為の薬酒

2008-07-29 14:40:30 | アンチエイジング

肉豆?酒(にくずく酒 ロウドウコウジュウ)

暑さをしのぎ、胃腸機能を高め、夫婦愛を高める肉荳蔲 酒(ナツメグ酒)

材料

肉荳蔲 100g(ハンマーなどで砕く) 氷砂糖200g 焼酎あるいはブランデー1リットル

作り方

材料を混ぜて約1月で服用できる。

ナツメグ(和名 肉荳蔲 (にくずく) 中国名 肉荳蔲(ロウドウコウ)

熱帯性のニクズクの常緑樹の直径4cmほどの杏のような実の中の種がスパイスで古来より珍重されてきたニクズクの種子で、種の殻を割った中身の仁がナツメグ(肉荳蔲)である。

漢方薬肉豆? は英文でMatured seeds of Myristica fragrans HOUTTと表現される。中国の別名は肉果(ロウグア)である。

性味は辛 温で脾 胃 大腸に帰経を持つ。肉荳蔲 は収斂薬に分類され、?腸止 温中行気に働く。漢方薬の肉荳蔲 の最大の特徴は止瀉(下痢止め)作用であり、慢性の下痢(久瀉)に効果がある。老人が早朝、ちょうど鶏が時を告げるころに下痢がおこる五更泄潟(腎泄)は腎陽によるものだが、腎泄に対する有名な方剤「四神丸(ししんがん)」に配合されている。

四神丸(ししんがん)

補骨脂 肉荳蔲 五味子 茱萸の4薬からなる。原因不明の老人性の明け方の下痢は腎陽虚とそれに付随する脾陽虚による脾腎両虚によるものが多い。四神丸が奏効する。

香辛料としてのナツメグ(肉荳蔲 )

熱帯地方ではナツメグ(肉荳蔲)の果肉の砂糖漬けを食べる。暑さ負けを防ぐ目的である。肉荳蔲 酒も暑さ負けを防ぐ酒といわれている。温脾作用により胃腸での消化を助け、頭痛にも効果があるという。事実インドでは紀元前10世紀ごろから頭痛薬として利用されていた。温薬なので体を涼しくさせる効果は無いが、暑さで疲れた体を奮い立たせるという。肉荳蔲 の表面の赤い皮をmace(メース)というが、肉荳蔲 酒より、そのmace(メース)を漬けた酒のほうが実は風味、薬効ともに優れているという。Mace(メース)は中国語では肉荳蔲 花(ロウドウコウフア)と呼ばれる。

玄宗皇帝と楊貴妃の話

肉荳蔲 は6世紀にアラビヤ商人がヨーロッパに紹介した時には、回春薬として人気が出た。中国唐の玄宗皇帝と楊貴妃も肉荳蔲 酒を愛飲したという。玄宗が56歳で、楊貴妃が22歳ぐらいであった。玄宗はすでに当時では老人である。私がアンチエイジングのための薬酒にナツメグ酒を入れたのは玄宗の年齢にある。ナツメグは夫婦の愛をつなぎ止める力があるといわれている。また、スパイスであるナツメグを数グラム摂取するとある種の幻覚を引き起こす作用があるという、玄宗皇帝と楊貴妃もその幻覚を楽しんでいたのかも知れない。「安史の乱」の最中、玄宗が楊貴妃と共に蜀へ逃げる途中、近衛軍の抵抗に会い、楊貴妃の縊死を命じ、楊貴妃が仏堂前の梨の木の下で縊死させられたのは38歳の時である。十数年にわたる二人の夢物語は終焉を迎えた。

ナツメヅの原産地はインドネシアのモルッカ諸島といわれ、そもそも熱帯原産であるから、当時の唐の交易圏の広さがうかがい知れる。唐代の676年に現在のベトナムに都護府を置きその他の南海諸国を支配したといわれるので、玄宗以前に、ナツメグの流通も完成していた。

ナツメグには、甘い芳香があり、肉料理や魚料理の臭みを消すために用いられることが多い。また焼き菓子やケーキに香りつけとして用いられる。

肉1kgに対する標準的な使用量は0.2g程度であるとされる。

       いかがであろうか?

玄宗と楊貴妃に想像力を膨らませ、肉荳蔲 酒をたしなむのも大人の楽しみである。

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アンチエイジングの為の薬酒

2008-07-25 23:11:26 | アンチエイジング

山茱萸酒(サンシュユ酒)

老化現象が見えはじめたら服用開始。昔は愛妾を多くかかえた富豪の愛用酒。

少し酸味のある薬用酒である。仕込んでから約1月で賞味することができる。杜仲酒や桂皮酒との相性もいい。相性で思い出すのが愛妾である。同じ読みである。中国では多くの愛妾を持つことが男の甲斐性のひとつであり、そうした富豪も多かった。しかし、金銭がいくらあっても、老化、老衰は人の世の常である。古今の書物や医者の知恵を借り、作り出したのが山茱萸(サンシュユ)酒である。

山茱萸は秋珊瑚と呼ばれるくらい美しい赤い実である。

材料

山茱萸50g 人参 当帰 枸杞子 黄耆 白朮 各20~30g 干地黄を入れても入れなくてもいい。氷砂糖200g 焼酎1リットル

作成方法

材料を絹の袋に入れ、焼酎1リットルに氷砂糖と一緒に仕込む。

1月で十分に薬効が酒に移行する。

山茱萸とは?

山茱萸は固精縮尿止帯薬に分類され、収斂薬に属する。収斂薬の中ではもっとも高価である。別名を中国では棗皮(ザオピー)という。種を除いた成熟果肉の部分であるから、英語ではFlesh of matured fruit of Cornus officinalis SIEB.et ZUCCと表現されている。古くは「神農本草経」に「中品」として記載されている。

固精縮尿の作用とは、精液の漏れる遺精、頻尿、尿失禁などを改善する作用のことである。一般的には菟絲子と配合して用いられる。止帯とはご婦人のオリモノを止める作用のことである。山茱萸には斂汗作用もあり異常な発汗を抑える効果もある。老化を腎虚と考えると、山茱萸は補腎陽、補腎陰の両方の作用があるので貴重な薬剤である。

六味地黄丸

山茱萸が配合されている中成薬でもっとも有名なものが補陰の基礎方剤の六味地黄丸である。温薬を赤、寒涼薬をブルー、平薬をグリーンで表記すると、六味地黄丸の組成と効能は、

熟地黄君薬滋陰補腎、山茱萸(萸肉)補肝腎、山薬 補脾 以上が補薬である。

澤瀉泄腎濁、防滋?、牡丹皮:涼血、防温燥、茯苓:利水滲湿助健脾 以上が瀉薬となる。したがって、中国の方剤学では「三補三瀉」の方剤といわれている。

難しい漢方用語で恐縮だが、適当な日本語が見つからない。問題の山茱萸は温性であるので、直接の補陰には向かないが、牡丹皮の涼性が対薬となっている。熟地黄の長期連用にありがちな胃腸のもたれや食欲低下を澤瀉が防いでくれる。これが防滋?(ジニ)作用である。六味地黄丸はバランスのとれた補陰方剤である。より補陰効果を強くしたものが左気丸である。左帰丸は胃に対して障害作用(滋?ジニ)があるので、胃モタレや食欲低下などの副作用が出現したら六味地黄丸に変えるとよい。ちなみに、中国では陰陽を左右で言えば、右が陰で左が陽であるが、左帰丸とは補陽の方剤ではなく補陰の方剤であり、「左」の逆の意味で用いられているので注意すべきだ。中国に旅行に言った際には、右と左には注意して薬を買うべきである。左は補陰、右は補陽である。冷えが強い場合には右帰丸、肌の乾燥や、皮膚の痒みなどには左帰丸と覚えるのがいい。

      さて

左帰丸の特徴は鹿角の強い補陽(左)効果をアクセントとして補陰剤に配合し、善補陰者 必干陽中求陰、即陰得陽昇 而源泉不竭「善く補陰する者 必ず陰を求める中に陽を用い、即ち陰、陽の昇るを得れば源泉尽きず」の中医学理論に基づき、補陰効果を強めていることにある。禅問答のようだが、感覚で捉えられるかの問題である。中医学を勉強する欧米人にとっては「quite difficult to perceive」「感覚で理解しがたい」のであるが、日本人には比較的「easy to understand」「理解しやすい」のである。要は「隠し味」のごときものであり、左帰丸の「左」は鹿角の補陽の「左」の意味なのである。

参考までに六味地黄丸の加減方剤をあげておく。

知柏地黄丸:

六味地黄丸+知母黄柏:陰虚火旺に対する滋陰降火 更年期障害などに。

杞菊地黄丸:六味地黄丸+枸杞子 菊花

清肝明目:私の愛用の薬である。パソコンで目が疲れてたまらないのだ。

麦味地黄丸:六味地黄丸+麦門冬五味子(補肺陰)

腎虚喘咳に対して用いる。

石斛夜光丸:目の老化に良い

耳聾左慈丸:耳に老化に良い

山茱萸の現代医学的研究

男子不妊症の精子運動率を増加させるという報告がある。動物実験であるが、インスリンの分泌を促し、糖尿病に効果があるらしい。ヒトでの臨床データの蓄積はまだ無い。活性酸素を抑制、あるいは中和する作用が動物実験で報告されている。ヒトでの実験の報告はまだ無いようだ。肝細胞が破壊されと血中に増加するGOT,GPTの降下作用があるらしいが、ヒトでの系統的な治療効果の成績はまだ無い。抗アレルギー作用が報告されているが、その作用メカニズムに関しての精密な報告は無い。

老化、衰弱死は必ず訪れるものである。健やかに老いて、天寿を全うするために「山茱萸酒」を仕込んではいかがであろうか?

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アンチエイジング&抗癌のために抗酸化漢方治療

2008-06-13 23:32:38 | アンチエイジング

アンチエイジングを考えるとき、「抗酸化」は避けて通れない課題です。

同じく癌の予防や癌との闘いでも「抗酸化」は有効な手段なのです。

活性酸素は人体をサビつかせる張本人といわれています。中でも、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪を酸化させ、血管壁にこびりつかせ、「動脈硬化」を促進させます。老化は血管から始まるのです

活性酸素はフリーラジカルとも呼ばれています。

酸化は金属で言えば錆(さび)と言い換えることもできます。活性酸素が現在、老化と関係するとして注目を浴びているのは、老化はかつて完全な形だった金属がさびついていく過程に似ているからです。活性酸素は呼吸や、スポーツなどからも体内に生じます。

活性酸素などのフリーラジカルは体の構成成分を障害します。特に問題となるのは、遺伝子DNAにキズがつくやすくなり、がん細胞が発生しやすくなることです。さらに、免疫細胞や免疫組織自体が障害されて免疫力が低下するとがんに対する抑制監視効果が低下してがん細胞が増殖しやすくなります

考え違いしやすいのですが、癌組織にフリーラジカル(活性酸素)によるストレスが加わると、癌組織が老化し、死滅するのではなくて、困ったことに、がん細胞のNF-κBが活性化されて、COX-2の性悪酵素の産生が促進されて、新生血管を生み出すプロスタグランジンE2が増加して、癌組織への栄養血管が新生されやすくなるということです。

フリーラジカルは結局、癌組織周囲の新生血管の増殖も促進することになり、まさに癌にとっては「生みの親」と「育ての親」の両方の側面を持つわけです。

フリーラジカルの働きを抑える抗酸化物質が多くの漢方薬に含まれています。紫丹参を例にあげてお話しましょう。

丹参(たんじん)

苦微寒で酒で炮制すると活血効果が強くなります。心 心包 肝が帰経で、

活血淤、涼血消腫 養血安神に作用します。

丹参は漢方の世界では涼血淤(きょお)薬に分類されている薬です。涼血淤とは、「血熱が原因の淤血を涼血によって除く」という意味ですが、現代風にわかりやすく言えば、「熱を下げ、血液をサラサラにする」ともいえるでしょう。

中国漢方の世界では、活血祛瘀作用(血液をサラサラにする作用)は、特に生理不順や産後での要薬(大事な薬)とされています。

狭心症は、漢方の世界では胸(きょうひ)といいますが、丹参は氷片などと配合されて使用されています。中国で市販されている「複合丹参丸」には、丹参、薤白、楼が含まれています。狭心症に対しては、点滴に入れて使用する丹参注射液もあります。

涼血消腫作用(臓器の熱を除き腫れを除く)は、慢性肝炎の肝臓腫大や甲状腺腫などに効果があります。

米ぬかのイノシトール6燐酸にも抗酸化作用がある。

米ぬか中のイノシトール6燐酸は別名フィチン酸

フィチン酸は玄米に限らずメロン、スイカ、桃、枝豆などに多量に含まれています。

フィチン酸は金属イオンと結びつくキレート作用があり、それが発ガン防止につながるとする論文もあります。フィチン酸(イノシトール6燐酸)は今では、食品業界でなくてはならないものになっています。缶詰の劣化防止(マグロ缶など)、かに缶のブルーミート防止、アサリ水煮缶の黒変防止、発酵食品の風味増強、魚肉練り製品や麺類の保存料、油脂の酸化防止剤、金属用の塗料、金属表面の防錆剤などに広く使用されています。

活性酸素の発生を抑える抗酸化物質としての役割と、ナチュラルキラー活性を増加させることがイノシトールの発がん防止作用といわれています。フィチン酸は蛋白質や、ミネラルと結合しているから、そのまま、玄米などを食べても、体内に吸収されにくい性質があります。玄米食の人間がミネラル不足になるのは、フィチン酸が腸内でミネラルを吸着してしまうことが原因です。玄米食にこだわり過ぎなくても、今では、フィチン酸(イノシトール6燐酸)も、イノシトールも製品化されてますので、おいしく白米食たべて、必要なら、あとで補給すればいいでしょう。

最近の研究ではイノシトール6燐酸の燐酸基が3つはずれた、イノシトール3燐酸に強い抗癌活性があることが報告されつつあります。

さて本題に戻って、丹参にはフリーラジカル除去作用があります。血液をサラサラにする作用のほかに注目されているのが抗酸化作用です。つまり、老化を防止する働きと、癌組織のフリーラジカルを抑えることにより、NF-κBが活性化を抑え、

COX-2の性悪酵素の産生を抑え、新生血管を生み出すプロスタグランジンE2を減少させて、癌組織への栄養血管が新生されることを防止する働きです。

活性酸素とガンの悪液質の関係

抗酸化作用は発ガンの防止にも、老化防止にもつながりますが、不幸にもガンにっている場合は、癌組織由来の活性酸素の大量発生が生体を傷害しがん悪液質を悪化させます。治療目的で、放射線療法および化学療法を行う場合は、さらに多量の活性酸素が発生することが悪液質の原因となります。

生薬のガン悪液質に対する効果

薬用人参に含まれるサポニンの一種ジンセノサイドがガン組織からのトキソホルモンの作用を強く阻害しがん悪液質を改善すると報告があります。

莪朮 三などの行気化淤薬は、直接的な抑がん作用と共に、淤血を取り除き、気をめぐらし、結果としてがんの悪液質を改善する。

がん患者の場合は、必ず気虚を合併します。したがって、気を補う人参、霊芝、冬虫夏草、黄耆などの補気剤が必要です。しかし、がん患者では、「気の不足」もさることながら、「気の流れ」が滞っているのです。これを「気滞(きたい)」といいます。気滞がおきると「血」の流れも悪くなり、「淤血(おけつ)」を生じます。これを「気滞血淤(きたいけつお)」といいます。気血の流れを河川にたとえれば、上流に気を補うと共に、中流、下流の流れを良くすること、つまり、行気(気を巡らす)させることが、より効果的な補気剤の使用法です。莪朮(がじゅつ)三 (さんりょう)はがん悪液質を改善し、患者の生活の質(QOL)を向上させる働きがあります。

同じように、淤血を除く作用のあるものには、丹参(たんじん)田七人参(でんしちにんじん)紅花(べにばな)などがあります。莪朮や三 などの破血行気薬の他に、理気薬である木香(もっこう)も気の流れを改善します。

また、フラボノイドを多く含む生薬や、食品では赤ワイン、ゴマ、山などはTNF-αの産生を抑制する効果が強いことが知られています。

活性酸素を消去する目的には生薬が有効です

大黄(だいおう)、芍薬(しゃくやく)、艾叶(がいよう)、紫蘇科の蘇葉(そよう)や夏枯草(かごそう)、半枝蓮(はんしれん)などの生薬、五味子(ごみし)、甘草(かんぞう)、紅花(べにばな)、など。人参(にんじん)類や柴胡(さいこ)、甘草のサポニン類にも抗酸化作用があります。

漢方薬の多くは生薬といい植物です。植物には日光の紫外線の刺激から発生する活性酸素から身を守る、強力な抗酸化物質やフリーラジカル消去物質を多く含んでいます。これらの生薬にはフラボノイドという抗酸化物質が含まれています。フラボノイドとは、植物に含まれている黄色やクリーム色の色素のことです。活性酸素を除去する抗酸化作用が強く、紫外線の害から生体を守る作用があります。

健康食品イチョウの葉は血流改善効果とともに、抗酸化物質であるフラボノイドを持つので有名になりつつあります。

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老化現象としての便秘の漢方治療

2008-05-30 15:45:18 | アンチエイジング

便秘の治療は便を出せば済むものではありません。腸管の機能を回復させるのが真の目的なのです。

老人に多い便秘は、老化現象の表れであると漢方医学は考えます。昔から老化は腎虚といいます。腎虚には大別して、腎陰虚、腎陽虚の2種類がありますが、老化は若いころに比較して、腎陰も腎陽も少なくなってくる陰陽両虚の状態です。腎陽は身体のすべての陽気の元であり、同じく腎陰は身体のすべての陰の元と漢方では考えます。腎陽がより少ない腎陽虚の場合には、体が冷えてきます。特に腰周り、下肢の冷えが強くなってきます。

漢方では「腎は水を主り、また二便(大小便)を司る」と考えます。

老化と共に、腎の陽気が衰えて来ると「腎陽虚衰」といい、便秘 冷え性 浮腫などの症状が出現します。このような便秘を漢方では「冷秘(れいひ)」と言います。

冷秘は老化だけに起こるわけではありません。日常生活で冷たいものを過食したり、気温の低い冬場などでも肌を過剰に露出し、薄着をする生活をし続けると陽気を損傷し冷秘を起こしやすくなります。

老人の冷秘は腎陽そのものが虚衰した真陽不足の状態です。大腸そのものが冷えて、陰寒が内結し、大便を降ろすことが出来なくなり便秘となります。

日本ではエキス剤として市販されていませんが、腎虚便秘にとても効果のある中国の処方がありますのでご紹介します。

済川煎(さいせんせん)

温腎益精 潤腸通便の作用をもつ名方です。お年を召された方の便秘に是非とも服用していただきたい煎じ薬です。組成は以下のようになります。温薬は赤、涼薬はブルー 平薬はグリーンで表記しました。

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肉従蓉(にくじゅよう)温腎、通便に作用します。帰経は腎、大腸です。

腎陽を補い、腎陽虚によるED、早漏、不妊などを改善する作用に優れます。腸を潤す潤腸の働きがあり、老人や虚弱者などの腎虚、腸燥便秘に効果があります。

2007_118_006

<shape id="_x0000_i1030" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 239.25pt; HEIGHT: 180pt"><imagedata o:title="2007 1月18日 当帰 茯神 竜眼肉 遠志 酸棗仁 006" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image003.jpg"></imagedata></shape>

当帰(とうき)養血 通便に作用し、肉従蓉と当帰の2薬は腸を暖め、潤すことによって通便させるという意味で温潤通便の作用があるといいます。済川煎の生薬の配合の中でもっとも量が多いものが肉従蓉と当帰です。

当帰は甘 辛 温で肝 心 脾の3経に入ります。補血 養血の要薬と呼ばれます。有名な養血剤である四物湯は熟地黄 川芎 白芍 当帰の4薬からなります。当帰には活血作用があり、淤血による痛みを除く作用があります。臨床的には打撲による痛み、淤血による生理痛などに多用されます。そもそも、婦人科領域でもっとも多く使用される薬剤のひとつで、補血活血調経といい、血虚、淤血による生理不順の要薬です。漢方薬の中の補薬は熟地黄、亀板などのように、長期服用すると胃腸がもたれるなどの症状が出ることが多く、これを中国語で滋?といいますが、「動かないで停滞している」性質が滋?を起こすとされ「補中不動」といい、補薬の一般的な性質としていますが、当帰は不滋?であるために、「補中有動」であるといい、「気薬」が有動であることから、「行中有動」と一般化されている言い方に習い、当帰は「補薬の気薬」とも称されます。

当帰の副作用ともいえるものは便通が良くなることです。腸を潤す潤腸作用があるからです。この通便作用はありがたい副作用とも言えます。

中国漢方病院では腎陽虚の便秘には補腎剤で潤腸作用のある肉従蓉を、血虚に便秘を合併した場合には当帰を配合することが当たり前のように行われています。一般に、当帰の根塊の尾のほうを当帰尾と呼び、活血作用に優れているといわれています。中央部分は当帰身といい、養血作用に優れます。養血活血目的で当帰を使用する場合は全当帰と処方箋に書きます。

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<shape id="_x0000_i1028" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 235.5pt; HEIGHT: 177pt"><imagedata o:title="肉従蓉 枳壳 澤瀉 升麻 005" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image005.jpg"></imagedata></shape>

(きこく)胃腸の気分を良くし、腸の気を下ろすという意味で寛腸下気の作用があるといわれます。中国語の寛とは、調子を整えるとか、気分を良くさせるという意味で、日本語の整腸剤の整に相当するものと考えてもいいようです。ダイダイ、イチャンレモンの成熟果実を乾燥させて使用します。枳実(成熟果実でなく幼果)に比べ作用が穏やかです。

中国の家庭では、すっぽんなどの料理を楽しんだ後に、ダイダイを食べる習慣があります。すっぽんは究極の滋陰薬で大寒の性質を持ちます。ダイダイを食べることは、温薬で大寒による冷えすぎを緩和させる目的と、胃腸のもたれを改善させる2つの目的があります。中国の家庭では、このような伝統医学の考え方が、極く自然に生活の中に取り入られています。

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<shape id="_x0000_i1027" type="#_x0000_t75" style="WIDTH: 239.25pt; HEIGHT: 180pt"><imagedata o:title="2007 2月2日 牛膝 川牛膝 004" src="file:///C:DOCUME~1鈴木康仁LOCALS~1Tempmsohtml11clip_image007.jpg"></imagedata></shape>

牛膝(ごしつ)補肝腎に働き、血を下へ下降させる引血下降の働きがあり、下に下ろされた血は腸を濡養する働きがあります。

帰経は 肝 腎で、 いくつかの効能がありますが補陰剤の一面もあるととらえておけばいいようです。中国の伝統的な補陰剤である左帰丸の中には、枸杞子、亀板、牛膝の3薬が補陰薬として配合されています。

河南省産の准牛膝 四川省産の川牛膝が有名です。写真は准牛膝です。

川牛膝は活血作用に優れ、准牛膝は風湿、補肝腎に優れているという産地の特徴があります。手触りは准牛膝の方がやわらかく、弾力性を感じます。色も准牛膝は川牛膝に比べ明るい印象があり、いかにも「補肝腎」の「補薬」という感じを与えます。

効能:①涼血祛瘀 ②補肝腎 強筋骨 ③利水通淋 ④引血(火)下行

涼血淤作用とは、淤血を除き炎症を鎮める作用です。子宮の収縮作用も報告されています。中国民間では乳香、没薬と共に打撲捻挫の症状改善に用いられています。

補肝腎 強筋骨作用

血と精を補い、体質を丈夫にすることです。中国の病院では

腎虚による腰痛に牛膝と杜仲の組み合わせが良く処方されています。

利水通淋

わかりやすく言えば、膀胱炎、尿道炎を改善する作用です。三妙丸や四妙丸が古来から有名な方剤です。

三妙丸は黄柏 蒼朮 牛膝の3薬からなる方剤です。(四妙丸は三妙丸に苡仁を加味したものです)

引火下行、あるいは引血下行という牛膝の作用は、体の上部に異常な反応として上昇した熱や血を体の下部に導き降ろす作用のことです。重症高血圧によく用いられる中国の鎮肝息風湯では牛膝が君薬の重要な働きをします。

また、諸薬を下へ導くという引経薬としての牛膝の働きも見逃せないところです。

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澤瀉(たくしゃ)腎虚にともなう体内の老廃物質を体外に排泄する泄腎濁の作用があります。帰経は腎 膀胱です。最近の中国の研究では事務室総合症という日本での生活習慣病に相当する高血圧症、高脂血症、糖尿病にも効果があるとされます。

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升麻(しょうま)升清陽、あるいは昇挙陽気といい、気を上に挙げる作用があります。枳壳(きこく)の下気作用と升麻(しょうま)の升陽作用は、中国漢方でいう、対薬の関係になります。

昇挙陽気の作用は柴胡(さいこ)と類似していますが、特に肝陽気が低下している場合は柴胡を使用し、肝陽気が関係してない場合は升麻を使うと中国漢方の教えがあります。内臓下垂、脱肛などの昇陽挙陥(中気下陥に対して)の要薬(かなめの薬)とされます。

なぜ、便秘に対して升麻を使用するのかというと、たとえて言えば、瓶につめた米を瓶をさかさまにして出そうとする場合、ただ押し詰めて出すより、上下に振って出す方が米が出やすいという考え方で、気機の下降と上昇の対薬を用いるのです。

面白いアイデアですね。

確かに臨床的には升麻を配合したほうが通便効果に優れているようです。

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漢方専門医院 岡本康仁堂クリニック